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第32話 「ソリアノ」中心部へ

 ニコルは、驚きも露わにした表情で、シャラナへの問いかを続けた。

「そんなにたくさん宙賊がいて、『ヤマヤ国』や『ユラギ国』は大丈夫なの?毎日宙賊におびえる暮らしになりそうだけど。」

「私のいた『ヤマヤ国』では、宙賊の領内侵犯は頻繁にございましたが、実害はほとんど、ございませんでした。軍も機能しておりましたので、国内に危険が及ぶことは、滅多にございませんでした。しかし私の出身である『ユラギ国』は、昔から多くの被害を出して来ております。軍が、あるにはありますが、十分に機能しておりませんでしたので。」

 シャラナの言葉に、今度はユーシンが質問を投げかけた。

「シャラナさんが『ユラギ国』から『ヤマヤ国』に嫁いだというのも、それが理由なのですか?『ヤマヤ国』との結束を強める事で、宙賊に対抗しようとする思惑が、『ユラギ国』にはあったので?」

「もちろんそれはあります。それに『ヤマヤ国』も、『ユラギ国』の領域を通らねば連合勢力と行き来できないという事情がありました。しかし、互いに必要とする関係にありながら、一方は地球連合と同盟し、一方は連合や機構軍に不信感を持っていましたので、両国の間は良好とは言えませんでした。それでも、宙賊の襲撃が散発的なものである間は、『ヤマヤ国』の支援で『ユラギ国』の宙賊による被害は激減したのです。」

 シャラナは遠い祖国を思い出すように、遠い目をして答えた。

「それで、宙賊は減らす事が出来たの?」

 ニコルが尋ねた。

「いいえ、減らすところまでは。と言うか、正直、増えてるのか減っているのかすらも、良くは分からないのです。『キークト星団』内の3つの国『ヤマヤ国』『ユラギ国』『コーリク国』の住民の中から、宙賊に身をやつす者も後を絶ちませんし、外からやって来て住み着き、宙賊になって行く部族も、ひっきりなしの状態ですから。一方で、宙賊同士でも、殺し合いや隷属化等が、頻繁に起こりますので、増減を把握するのは不可能なのです。襲撃による被害を減らす事が精一杯でした。」

 それを聞いたバルベリーゴが、考える顔で話を継いだ。

「銀河にゃぁ、機構軍が把握出来てねぇ部族が、無数に存在していやがるし、把握している国や勢力からも、圧政や災害や戦争などから逃れた連中が、新たな部族を作ったりなんてぇ事が、あっちこっちで起こっているからなぁ。そういう連中が宙賊化して行くのを、今の地球連合や宇宙保安機構の仕組みじゃぁ、抑え切れねぇどころか、実態を把握する事すら出来ねぇのが現実だぁ。」

「そうなんだよな」

 ユーシンもバルベリーゴに続いた。「地球連合っていうのも、個別の国や勢力との同盟を積み上げているだけだ。個々の同盟相手を守るための行動しか、基本的には取れ無い。まあ、同盟関係に無い国の民でも、直接に救援要請をされれば、国を差し置いて、その民と仮同盟を結んで助ける事はあるけど。同盟とは関係ないところで、救援要請もして来ない人達が、生活の手段を失い、宙賊という生き方を選んで行くのを、今の仕組みじゃ食い止められない。」

「それで、どんどん宙賊が増えて行くのね。その宙賊を、誰かが裏でまとめ上げれば、地球連合や機構軍にとっても、怖い存在になってしまうかも知れないのね。今のところは、宇宙保安機構軍は無敵の軍隊だけど、宙賊の増加を止める術の無い状態が続いたら、いつか、機構軍を上回る勢力が出て来てしまうかも。」

 ニコルはそう言いながら、自分の発言に身震いした。

「そういうところから出て来たのが、『銀河連邦構想』ってやつだなぁ。」

 バルベリーゴは少し声を大きくして話を続ける。「個別の同盟を積み上げるんじゃなく、今、地球連合の勢力下にある国や集団すべてが結束して、一つの大きな組織体を作り、銀河全体の平和や安定を目指すってやつだ。地球連合だけじゃ荷が重くなって来たから、皆で協力して、もっとでかい軍隊を作って、宙賊の増加に歯止めをかける様な活動を、もっと大規模に、積極的に展開して行こうって発想だぁ。」

「発想は凄いけど、そんなん実現すんのかなあ。机上の空論じゃねぇのか。」

 否定的な見解を述べたのはキプチャクだ。

「でも、その実現に真剣に取り組んでいる人も、沢山いる。例えば・・」

 そう言ったところで、ユーシンは言葉を切った。そこで思い出した人。それは、「ウィーノ星系」第3惑星の地上で、クレアがうっとりと見上げていた、若き機構軍大佐だ。

「例えば、宇宙保安機構軍、ヘラクレス方面第一艦隊、第一大隊の隊長、シュルベール・ド・ブルーハルト大佐だ。」

 ユーシンは言った、未来のクレアの花婿となるべき者の、筆頭候補の名を。

「ああそうだな。」

 バルベリーゴもユーシンに賛同して言った。「あいつは、『銀河連邦構想』のリーダー格になりつつあるなぁ。家柄も実績の面でも、エリート中のエリートで、軍幹部からも期待の厚い、機構軍の未来のホープって存在だからなぁ。」

「けっ、いけ好かない奴だぜ。あんな奴の思い通りに、事が運ぶもんか。」

 機構軍嫌いのキプチャクには、好きになれないのも無理はないだろう。

「でも、その構想が実現しないと、宙賊の増加に歯止めをかける術がない。」

 ノノがぽつりと、核心を付く発言をした。

「そういう事だなぁ。」

 バルベリーゴも、ノノを支持した。「壮大すぎるとも思える構想だが、宙賊が増加して、いつしか連合勢力や宇宙保安機構軍の脅威になっちまうのを抑えるのに、有効と思える唯一の策でもあらぁな。まぁ、俺達、一介の商人が心配してもしょうがねぇ事だがなぁ。」

 その発言からしばらく、一同はそれぞれに想いを巡らしたように、言葉を途切れさせた。

「とりあえず、シャラナさんが『ヤマヤ国』に嫁いだことで、『キークト星団』での宙賊被害が減った事は、間違いないんだよね。」

 ユーシンは話を戻した。「宙賊そのものを減らす事は出来なくても、『ヤマヤ国』の軍に協力してもらう事で、『ユラギ国』の、昔からあった宙賊による被害は、減らす事が出来た。『ヤマヤ国』も連合勢力との行き来がしやすくなったはずだし、両国に益をもたらす婚姻だったんですね。」

 そんなユーシンの発言に、バルベリーゴが続いた。

「だからこそ、シャラナのねぇさん達は、今すぐ『ヤマヤ国』に戻る事が出来ねぇって事だなぁ。今もどりゃあ、『ユラギ国』滞在中に宙賊に拉致された事が表面化し、両国の間にヒビが入りかねねぇ。そんな事態は、招くわけにいかねぇんだな。戻らねぇままなら、ねぇさん達は、ただの行方不明者で済むかもしれねぇが、帰ったら、宙賊に拉致された事が明るみに出ちまう。拉致された事実を隠そうとしたとしても、隠し切れるか怪しいもんだからなぁ。」

 シャラナは、バルベリーゴに向かって、頷いて見せた。

「両国の友好の証を宙賊に奪われた『ユラギ国』の失態を、『ヤマヤ国』は責めるし、『ヤマヤ国』に嫁がせたことを、『ユラギ国民』は後悔するし。それで両国関係は冷え込む。」

「両国関係が冷え込んだら、宙賊はやりたい放題になっちゃうよね。そしたら、背後で糸を引いている『コーリク国』の思惑通りに、『キークト星団』は征服されちゃうことになるのね。」

 ノノとニコルが、相次いで呟いた。シャラナが『ヤマヤ国』に戻った場合に起こるであろう事態への、認識を示したものだった。

「祖国に帰れないなんて、可愛そう。」

と、ノノは言って、はす向かいに座るシャラナに手を伸ばし、彼女の手を握った。

「心配して頂いて、有難うございます。ノノさん。」

 シャラナもノノの手を握り返した。その瞳は、相変わらず凛々しく温かい。

「とにかく、早く、機構軍に通報して『コーリク国』の野望を(くじ)くように、手を打ってもらう事ね。」

と、ニコルは言った。

「機構軍が、何かしてくれるとは限らねぇがな。」

 キプチャクは否定的だ。

「とりあえずは、機構軍事務所に通報に行ってみる事だなぁ。さっさと飯食って、早速出かけようじゃねぇかぁ。」

「え?オヤジ、もう行くのか?」

 驚いた様子でユーシンは言った。「ちょっとは休んだ方がいいんじゃねぇのか?働き通しじゃないか。」

 シャラナも続いた。

「どうぞご無理をなさらずに。私共の事で、お体に障るような事があっては、申し訳ありません。」

「あっはっは、心配するな。ちゃんと休んださ。2時間程たっぷり眠ったからな。大丈夫だ。あっはっはぁ。」

「2時間のどこが“たっぷり”なんだよ、オヤジ。」

「丸2日働き通して、たった2時間の睡眠で大丈夫だっていうの?オヤジ。」

 キプチャクとニコルは否定的に言ったが、ノノがバルベリーゴの肩を持った。

「でも、健康状態には問題無かった。」

「そうだろ?ノノぉ。俺の体はなぁ、お前達とは出来が違うんだぜぇ。覚えて置け、ガキ共。あっはっは。」

 そして彼らは、宙空浮遊都市の中心部にある機構軍事務所に出かける為、「ソリアノ」名物のTボーンビーフステーキにかぶりつき、英気を養ったのだった。

「では、直ぐに準備をして、ドッキングベイに集合という事でございますね。」

 食事が済んだ後、そう言ってシャラナは、一旦去って行った。

「俺達も準備を急ぐか。」

と言ったキプチャクに、ユーシンは少し意外そうに問いかけた。

「お前も行くのか?機構軍事務所に。」

「行くかよ。」

 キプチャクはきっぱり否定。「俺はお店探しに、住居用コロニーに行くんだ。」

「なるほど。いかがわしい店探しね。」

 納得のユーシン。

「シャラナさんのエスコートは、おまえに譲るよ。トクワキさんって旦那がいるけど、いつどこでチャンスが巡るか分からないからな。俺もお前を応援してやるよ。」

「は?何の話だ?」

 ユーシンは、首をかしげてキプチャクを見た。

「この前トアに行ってたじゃないか。大切な人がいるとか何とか。それでトアとは、付き合えないって。それって、シャラナさんの事だろ?」

「はぁあ?なんでそうなるんだ?」

「いいよ。隠すなって。分かるぜ、お前の気持ち。シャラナさん、美人だもんなぁ!」

 ノノの鋭さと、キプチャクの鈍さの余りの差に、ユーシは唖然とするしか無かった。

「最高だよなぁ、シャラナさん。」

 キプチャクは、まだしゃべり続けていた。「顔も美人だし、それに、ナイスバディーだよなぁ。フードコートでしゃべってる時なんかもさぁ、俺、シャラナさんの胸の谷間をさあ、ずっとチラチラ見ちまったぜ。すんげぇ迫力だったから。それからよお、さっきの去って行く時の、シャラナさんのヒップライン見たか?ユーシン。滅茶苦茶色っぽいラインしてたよなぁ。こんもりと形良く盛り上がって、張りもあって、たまらねぇよなぁ。」

 そんなキプチャクにユーシンは、心の奥底から湧き上がって来たありのままの気持ちを、率直に口にして告げたのだった。

「なあ、キプチャク。お前ってさぁ、なんで、女の人の、そういうトコロばっかりを、気にするんだ?」

 ユーシンはまた、何かを棚に上げた。棚には、滑らかな曲線が幾つ並んでいる事か。


 キプチャクとは、港湾コロニーのシャトル用ドッキングベイで別れた。彼は、外から3番目の円環にある住居用コロニーを目指し、ユーシン達は「ソリアノ」の中心に位置するコロニー内の、機構軍事務所を目指したから。

 ユーシンとバルベリーゴとシャラナの乗った乗り合いのシャトルは、港湾コロニーから中心コロニーまで、一気に飛翔した。千km以上の距離だが、30分ほどでシャトルは駆け抜けた。加速による1G強の重力がかかり続けたので、無重力による不便さに耐える事も無い移動だった。ただ、途中で天井と床は逆転したが。

 そのコロニーの中心軸部分に、シャトルで入って来た3人は、エレベーターで外周壁内面の“大地”に降り立った。上を見上げると、“軸”の向こうに、天井世界の建築物群が見える。直径10㎞程のこのコロニーでは、天井世界のビル群も、一つ一つの識別が可能だった。直径30㎞の「ウィーノ」のコロニーでは、天井世界が抽象画のようにぼんやりとしか見えていなかったのと比べると、ずいぶん違う。

 古びたレンガ積みの、平屋が目立つ街を、彼等は歩いた。コロニー内では平屋が多い。高くすると、上の方では建物同士の距離が狭まるのだ。湾曲したコロニー内壁に住むが故の問題だった。

 地下にあるリフトでの移動が主流で、地上に交通機関が見られないのも、「ウィーノ」のコロニーと同様だ。中心軸に上がるエレベーターだけが、地上にある“交通機関”だった。目的地にすぐ近いエレベーターで降りて来たので、歩く時間は十分程度で済んだ。

 機構軍事務所とされている建物も、レンガ積みで四隅に尖塔を配した形の建物だった。

「なんだとぉ!? 」

 対応に出た事務所職員との、しばしのやり取りの後に、バルベリーゴは叫んだ。「『タクムス国』への帰化が完了しねぇと、『キークト星団』での宙賊による被害や、『コーリク』国の暗躍に関する、機構軍への通報が出来ねぇだとぉっ!」

 ドン、とテーブルを拳で殴りつけてのバルベリーゴの言葉に、職員はびくっとして少し身を引いた。機構軍という組織には属していても、前線の兵士でも無ければ、随分と臆病なものなんだと、ユーシンは妙なところに感慨を抱いていた。いや、かつては鬼と言われ、恐れられていたと、ガリアス・シュレーディンガーも語っていたところからすると、敵には命懸けで突っ込んで行くような勇敢な兵士達でも、バルベリーゴの剣幕の前ではタジタジになるのかもしれない。

「あの・・、ですから、『タクムス星団』に駐留する機構軍部隊は、同国との同盟契約に基づき、同国の平和と利益の為に活動する事になっておりまして、この事務所で受け付ける事の出来る案件というのも、『タクムス国民』の利害に関わる案件のみという事になります。」

「で、何か。まだ、『タクムス国民』になってねぇ、このねぇさん達の訴えは、ここでは受け付けられねぇってのか!? 事は『キークト星団』にある『ヤマヤ国』や『ユラギ国』の存亡にかかわる事態だって言うのにか?」

 食って掛かる勢いのバルベリーゴに押されながらも、必死で説明を続けようとするこの職員が、ユーシンにはなんだか哀れに思えて来ていた。

「ですから、当宙域に展開する部隊には、『ヤマヤ国』に関する事象は管轄外という事になり、更に『ユラギ国』に至りましては、連合との同盟契約すらない国ですので・・・」

「なんだ!そりゃ。機構軍の本部に通報を持って行って、行動を促してくれりゃいいだけじゃねえか。何も、ここの部隊の戦闘艦に『キークト星団』まで遠征に行けって言ってるわけじゃねぇんだぜぇ。」

 バルベリーゴはなおも食って掛かる。

「オヤジ、この人に言ってもしょうがないよ。この人に与えられた権限じゃ、どうしようも無いんだよ。」

 ユーシンは(なだ)めた。シャラナがその横から口を挟む。

「では、まずは私共が、『タクムス』への帰化の手続きを終了させれば宜しいのですね。そうすれば、私共の通報も受理して頂け、機構軍に『キークト星団』への介入を検討して頂けるのですね。」

 バルベリーゴの剣幕から一旦解放され、職員はほっと胸をなでおろしながら、シャラナの問いに答えた。

「帰化の手続きを完了して頂ければ、当然あなたの通報は受理されます。あなたを拉致した宙賊に関する調査や制裁等も検討されるはずです。」

 それを聞いたシャラナは、ユーシンやバルベリーゴに目配せをした上で、

「ならば、先に帰化申請の方を済ませましょうか。ここでこの方にごり押ししているよりも、その方が時間の無駄が少ない様です。」

と言った。

「へん!まぁ、そうだな。全く、いつから機構軍は、こんなにも頭の固い連中ばかりになったんだ。同盟国の国籍を持たねぇってだけで、通報すら受け付けねぇなんて、俺達の頃はそんなんじゃ無かったぞ。」

 怒りの収まらないバルベリーゴに、ユーシンは言った。

「駐留する宙域によっても、そこにいる部隊の考えや対応には差があるんだろう。それに、同盟国の信頼を損ねないって事に、年々慎重になって来てるっていうのも、あると思うよ。『テトリア国』にも『ユラギ国』にも、過去の失態が原因で不信感を持たれてしまった実績もあるし。とにかく、帰化すれば通報を受け付けてもらえるんだから、まずは、そっちを急ごう。」

 不満の残る表情ながら、ユーシンに同意したバルベリーゴが口をつぐむと、シャラナはまた、件の職員に尋ねた。

「この隣の建物に、『タクムス国』のお役所があるのでございますね?そちらで、帰化申請も受け付けて頂けるのしょう?どのくらい時間がかかるか、ご存知ですか?」

「そ・・そうですね、」

 職員は横目でちらりとバルベリーゴを見やりながら、恐る恐る答えた。「連合勢力や『タクムス国』の文化への順応の為の、帰化プログラムなどもお受けいただく事になりますので、およそ1か月と少し、といったところ・・・」

「1か月だとぉっ!」

 またバルベリーゴの大声と、テーブルをたたく音が響き渡った。「そんなに待ってたら、『ユラギ国』は『コーリク国』の手に陥ちてしまってるかもしれねぇじゃねえか。そうなっちまったら機構軍は、同盟国である『ヤマヤ国』を救援する術を失っちまうんだぞぉっ!」

 他のブースで話をしていた機構軍職員や来客達も、何事かとこちらに視線を向けている。

「帰化プログラムが全部終わらないと、通報を受け付けてもらえないのか?」

 ユーシンも少し愕然として行った。まさか、通報するだけでそこまでの時間がかかる事になるとは、予測もしていなかった。

「帰化が完了しませんと、やはり、『タクムス国民』を守る事が任務の当部隊は、行動は起こせません。大変申し訳ありませんが。」

 職員の申し訳ないという気落ちは、決して作り物ではなさそうだとユーシンは思った。何とかしたいと思ってはくれているのだろうが、何とも出来ないのだろう。それでも、ユーシンも、簡単にはあきらめがつかなかった。

「帰化プログラムの途中の段階のどこかで、通報だけでも受け付けてもらえるようにはならないのですか。」

「それは・・。帰化プログラムに関しては、『タクムス国』に裁量権がありまして、当機構軍事務所では、どうにも・・・」

「・・そうですか。」

 ユーシンは肩を落とした。どうあがいても、1か月以上先のプログラム終了を待つしかなさそうだ。

「1か月ですか・・。そんなにかかってしまうのですね。通報までに。本当にそれは、何もかもが、手遅れになってしまう可能性のある期間ですね。」

 いつも凛々しいシャラナの瞳から、眼光が失われて行った。ユーシンが、もう二度とシャラナから失われて欲しくないと思っていた、気品のある風格が、影を潜めようとしているようだった。

 それは、クレアの笑顔をも守れない事を意味するかもしれない。無力感が広がって行くのを、ユーシンは胸中に覚えていた。

今回の投稿はここまでです。今週の投稿もここまでです。次回の投稿は '17/5/26 です。

さて、ブルーハルト大佐が目指す「銀河連邦構想」なんて壮大な話から、キプチャクのシャラナを見る目やソリアノでの行動などという、矮小な話まで、色々出てきました。読者の皆さんは、どちらの話がお好みでしょうか?ユーシンとクレアの行く末が気になっている人には、しばし我慢の時が続くかも・・。でも、シャラナもクレアもブルーハルトも銀河連邦構想も宙賊も、すべて密接につながった話なので、是非ご注目頂きたいです。というわけで、

次回 第33話 翻弄される貴女の運命 です。

シャラナさん達は、一難去ってまた一難という感じになってきましたが、彼女を襲う運命のいたずらはこんなものではすみません。何が起こるでしょうか?それに伴って「キグナス」クルーの人間模様も、色々に影響を受けます。あの人とあの人は、どんな感じになるのか?是非、ご注目頂きたいです。

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