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第10話 クルーの日々

 ディスプレーには、目まぐるしく変化する幾つもの数字、記号、図。指先の微妙なタッチで操縦桿は前後左右に振れる。

「バッカモーン!何度言うたら分かるんじゃ!このデータの遷移がマイナス傾向の時には3番スラスターを選択するのじゃと、言うっておるじゃろうが!」

 老人の爪がディスプレーにぶつかって、コツコツと音をたてる。「ここじゃここ、このデーターじゃ」と苛立たし気に、見るべきデーターを指差しているのだ。

「え?3番だっけ、1番じゃなかったっけ。」

「そこが分かっとらんかったんか!何を聞いておったんじゃ、おぬしは。」

「わりーわりー、ドーリー、もう一遍やるよ。」

 目の前のコンソールに並んだスイッチを、パチパチと指ではじくユーシン。

「シミュレーターじゃから良いようなもんじゃが、これが実践だったら白鳥の翼がもげておるわい。」

「え?あれだけでもげるのか、ちょっと傷がイクだけだろ?」

「もげるわい。『キグナス』の出力を、甘く見るでないわい。」

 ユーシンもドーリーも、頭から湯気が出そうな赤い顔だ。

「やっぱ、今まで扱って来た船とは、えらい違いだな。」

「当たり前じゃい、タキオントンネル航宙船なんぞと同じなわけあるかい。」

 「キグナス」の操船技術の取得も、まだまだこれからといったユーシンだった。


「じじいが横でわめくから、何が何だか分からなくなるんだよ。」

 「キグナス」の左の翼の上あたりを漂いながら、ニコルに愚痴をこぼすユーシン。

「あはは、操船の事となると熱くなるのね、ドーリーって。あ、もう少し上。」

 ニコルがオペレートする検査機のセンサー部分を握っているユーシンは、言われた通りの場所の「キグナス」外壁面に、センサーを触れさせた。

「分子密度が少し荒くなってるわね、ここは。・・よしっと。データー入力完了。次行くわよ、ユーシン。」

「はいよ、メンテの手伝いやってる方が、気楽でいいよ。」

 這うように、「キグナス」の外壁面を移動して行く2人の背後から、バルベリーゴの怒鳴り声が轟き渡った。

「このクソガキィィィ!何でこんな置き方しやがるんだぁ、キプチャァァク!てめぇ、この荷がどんだけ高価か、知ってんのか!重力がねぇんだから、ちゃんと固定しやがれ!」

「スマーン、オヤジー!」

「あはは」

 聞き耳を立てながら、ユーシンは苦笑いを浮かべた。「どこも、あんな感じなんだな。仕事覚え始めだもんな。」

「ちょっとぉ、ニコル!」

 今度はキムルが、何やら顔を真っ赤にして、すごい剣幕で空中を突進して来た。リーディンググリップを握る拳を突き出しながら。「このデバイスは、どうなってるわけ!」

「あー、何かやっちゃったぁー?」

 クセの強い赤毛のボブ頭が、キムル目指して飛んで行った。

(みんなこんな感じで、怒られまくってんだ。)

と思い、安心したユーシンは、キムルがドーリー以上に怒鳴り散らすのを期待して、成り行きを見守った。

 が、キムルがニコルに何やらまくしたてたと思ったら、ニコルが二言三言発すだけで、見る見るうちにキムルの表情は和らぎ、いつの間にか2人してクスクス笑ったりしている。

「なんだ、あの、ニコルの特殊技能は。」

 怒り狂う上司を、たちどころに笑わせる技能というものがあるのなら、ぜひ教えて欲しいと思うユーシンだった。

 その後も、ニコルと共に地道なメンテ作業だった。言われた場所にセンサーをかざすだけの単純作業で、ユーシンはうわの空であちこちに視線をさまよわせたりしていた。

 と、突如世界が縦回転した。

 二度目である事と、前回よりはかなり距離があった事で、彼の眼球の回避運動は比較的軽微で済んだようだ。隣にいるニコルにも、その一瞬の混乱状態に気付かれた様子は無い。

 リーディンググリップに導かれて、係留ブースの入り口から「キグナス」の船首へと一直線に飛翔しているクレア・ノル・サントワネットは、その船首付近でメンテナンス作業を見守っていたバルベリーゴに声を掛けられた。

「おやおや、嬢ちゃんじゃねえか。お目付け役ご苦労だな。」

「お疲れ様、バリー船長。作業は順調かしら。」

 弾んだような明るい声が聞こえたが、ユーシンは彼女の笑顔を見る事は出来なかった。ある程度キグナスに近づいたところで、ユーシンの位置からはキグナスの船体に阻まれて見えなくなってしまっていた。ユーシンはニコルを手伝いながら、話し声に聞き耳を立てた。

「おい、ガキども!今だけは、サボるんじゃねえぞ。サボってるの見られて、どんな目に会っても知らねぇからな。」

「まあ。いやですわ、船長。わたくし、告げ口なんてしませんわ。皆さんが元気な事を確かめられたから、すぐに引き上げます。」

という、なんとも和やかな会話に、ユーシンも思わず頬が緩んだ。

「なにをニヤニヤしてんの?」

と、顔を覗き込んで来たニコルに言われると、慌てて表情筋を引き締め直し、作業に専念している風を装う。

「何よ、急に真顔を取り繕ったりして。ごまかしたって無駄よ。お嬢様の登場がそんなに嬉しいなら、行って話しかけて来たら?少しくらい待っててあげるわよ。」

との発言にユーシンは、目を丸々と見開いて驚愕を露わにした。

「そんなにビビらなくても良いでしょ。憧れて来たお嬢様なんだから、話しかけるくらいすれば・・」

 超高速で首を横に振るユーシンのリアクションで、そのニコルの提案は却下された。

「それではバリー船長、ごきげんよう。」

 そうこうしている内に、クレアは帰って行ってしまったようだ。なぜかユーシンは息が乱れていた。

 翌日もユーシンは、操船シミュレータを前に、散々にドーリーに怒鳴られた後、他の部署の応援に回された。船が動かない限り「操船」の実務は発生しないのだ。

 検品作業の手伝いもさせられた。幾つかの検品作業は重力のある外周壁面付近で行われる。手頃な重力下でないと、上手く出来ない検品項目もあるのだった。「キグナス」の係留ブースから、エレベーター一本で直通の作業スペースで、ユーシンはキプチャクと、商品の梱包状態を確認していた。軽く梱包を解いて確認して行くのだが、無重力下でやると、必要以上に梱包がほどけ、荷が散らばって、収拾がつかなくなってしまうのだ。

 幼馴染の2人だから、初めの内はワイワイと他愛も無い話をしながら、楽しく作業を進めた。

「やっぱり、あの住居コロニーの山とか川とか見たら、地球系の頭の中って、俺達宇宙系とはまるで違うんだなって、実感させられたよな。地球の環境を再現しようとする執念みたいなのを感じたよ。」

 ユーシンは2日前の記憶をたどりながら話した。

「地球系といえばよ、」

 キプチャクは、なんだか急に熱がこもったように言った。「住居用のコロニーに、イイ店があるの、情報を検索していて見つけたんだよ。今度行ってみないか?」

 2人とも拡大鏡に顔を押し付けながらの会話なので、互いの顔を見る事は出来ない。

「お前の言うイイ店っていうのは、世に言う“いかがわしい店”ってやつじゃないのか?」

「いかがわしいとは何だよ。ちゃんと合法な店だよ。」

「合法ってなぁ・・。」

 ユーシンは、梱包のベルトを緩め、ベルトに傷などが無いかを拡大鏡で丹念に確認しながら、話を続ける。「奴隷売買が法的に認められてるような国では、合法の店って言っても、やっぱり、いかがわしい店って事じゃないのか?」

「そんな事ないって。地球系の若い女が、すげぇサービスしてくれるらしいんだ。地球系の女だぜ。すげえんだぜ、絶対。」

 少しの間、作業に専念するように言葉を途切れさせたユーシンだったが、ふと思い出したように尋ねた。

「お前、地球系の女が好みだったか?」

 質問の答えを考えているのか、作業に専念しているのか分からない沈黙の末に、キプチャクが応じた。

「好みとか関係あるかよ。サービスしてもらうだけなんだからさぁ。」

「だから、そのサービスってのが、いかがわしいって言ってんだよ。」

 だが、永遠と続く単純作業に、いつしか2人には会話も無くなって、黙々と手を動かしていた。

身体には疲労を感じつつも、作業が段々身に付いて、テンポが良くなっていく事に、ユーシンは満足感も覚えていた。それなりに作業を楽しみ出していた。が、その時にまた、世界の縦回転が起こった。今回は距離が比較的近かったためか、キプチャクが横目でじろりと見て来るくらいには、動揺が表に出てしまったようだ。

 作業スペースと壁一枚で隔てられた通路から、その壁に設けられた覗き窓を通して、彼女は検品作業を見つめているようだ。首を、キプチャクと反対方向に90度曲げれば、目が合ってしまうと思われる。その状況で作業に専念しているふりをするのは、ユーシンには拷問に近いものがあった。

 キプチャクは一瞬じろりとユーシンの方を見た後は、何事も無かったかのように作業に打ち込んでいる。窓からこちらを見る女人(ひと)の存在に気付いていないのか、気付いているけど興味が無いのかは、よく分からなかった。

 窓の方を見ないという孤独な戦いを、ユーシンは強いられ続けていた。見てしまったら、また世界が縦回転を起こすかもしれないし、はたまた、何かが体から飛び出して彼女の方に飛び掛かって行ってしまうかもしれない。

見たいという恐るべきエネルギーの衝動に打ち勝って、首の角度を維持し続けるという試練に、ユーシンの眉間には油汗が滲んで来ていた。

 何万時間にも感じる試練の時を経て、彼女の視線が逸れる気配をユーシンは感じた。それでもまだ、窓の方を見てはいけないという想いはあったのだが、長い苦闘の疲れからか、首の角度を維持し続ける気力は、もはやユーシンには無かった。

 恐る恐る、ちらりと横目で見た。クレア・ノル・サントワネットは、ユーシンから見て体を横向きにして、誰かと話しているようだった。前と同じ、丈の短いジャケットとタイトスカートを身に纏っている。

 表情は浮かない。話し相手は窓枠の中には収まっていないので、どんな人だかも分からない。話し声も聞こえない。ただ、彼女の表情から、楽しい話をしているわけでは無い事は知れた。彼女の気持ちを沈ませる厳しい現実を、突きつけられてでもいるのだろうか。

(あんな表情を、させてはいけないんだ。笑顔で、いさせてあげなければ、いけないんだ。)

 まだ一度も笑顔を見た事が無いにも関わらず、そんな想いを強くしたユーシンだった。

 横顔ならば、落ち着いて見つめていられるようだった。しばらく見つめ続けた。見つめ続ける内に、その視線が顔から肩へ、そして背中へと移って行く。更にその下にまで視線が及んで行った瞬間、ユーシンの脳が電撃を覚えた。

(なんて滑らかな曲線だ。)


 その翌日も、シミュレーターで操船技術を叩き込まれた後、メンテの手伝いをさせられたユーシンだった。

 メンテの後には、船外作業のトレーニングだとか言って、コロニーの外に連れ出される事になった。宇宙服を着込み、アデレードの駆る宇宙艇に詰め込まれ、宇宙に飛び出す。まずは、円筒形コロニーの中心軸内部の宇宙空間に飛び出し、それからコロニーの軸方向に、円筒の外にも飛び出す。

 一旦コロニーから離れた宇宙艇は、コロニーの円周外壁の一点に接続する事を目標としているようだ。それは、アデレードの操縦訓練も兼ねているようで、それが成功した後に、ユーシンの船外作業トレーニングが待っているのだ。

 遠心力で中の人間に「足場」を提供する為に、コロニーは高速で回転している。外周壁面の速度はマッハに達する程だ。それ程の高速で移動している円周外壁の一点に、正確に接続するというのは、かなり高い技術を要求される。

「落ち着いていけ、アデレード。お前ならやれるはずなんだから。」

「分かってる。任せてくれ。」

「おぅ!3回以内に成功したら、シャンパン一本おごってやるぜ。」

「言ったな。忘れるなよ、それ。」

 ファランクスのエールに応えたアデレードは、真剣な眼差しでディスプレーを睨み、操縦桿を操った。宇宙艇に窓はあるが、それを見る事はほとんど無い。周囲の様子はディスプレーに映し出される図表や数値で判断するものなのだ。

まずは外周壁面に同調した運動を、宇宙艇にもたらす為の操作だ。1Gの重力を生み出す為の円運動に同調するという事は、宇宙艇の中にもほぼ1Gの重力が生じて来る。重力の方向が下になるように宇宙艇の向きを合わせれば、コロニーは頭上に位置することになる。アデレードはディスプレーとにらめっこだが、ユーシンは窓からコロニーの壁面を見た。

 どす黒い表面のところどころから、時々オレンジ色の光の柱が噴出する。姿勢制御用のイオンスラスターが作動しているのだろう。そのスラスターの周辺と、それ以外のあちこちに、サーチライトのような光が幾つか見えている。スラスターの監視や、壁面のメンテナンスの為に設けられた照明だ。

 そんな光の柱や光の点が、窓の中をするすると流れて行っていたが、その流れはみるみる緩慢になって行き、いつしか止まった。外周壁面と宇宙艇の動きが、完全に同調したという事だ。

「今だ!」

 小さく叫んだアデレードが、コンソール上のスイッチをパチンと指ではじくと、先端の膨らんだワイヤーが射出され、外周壁面のどす黒い中に溶け込んで行った。更にアデレードが何かの操作をすると、そのワイヤーがぴんと張られ、宇宙艇は壁面に引き寄せられて行く。

 真っ黒に見える壁の表面だったが、数メートルほどにまで近づいたところで、そこにアームが出ている事が見て取れた。宇宙艇はアームに掴まれて固定された。

「やるな!アデレード。一発で成功するとは思わなかったぜ。」

「なに、これくらい。」

 余裕を見せようとしたつぶやきだったが、額には汗がにじんでいた。

「3回以内でシャンパン一本って事は、一回で成功したから3本もらえるのかな?」

「そんな事、言ったっけかな?忘れたな。」

「はは、これだよ。」

 そんなアデレードとファランクスのやり取りは、アデレードの着実な成長と、この2人の信頼関係の構築をユーシンに印象付けた。喜ばしく思う反面、焦りも生まれる。

(俺ももっと、しっかりしなくちゃ。)

 そう思って、気合を入れて臨んだ船外作業のトレーニングだったが、散々の出来だった。この巨大なコロニーを、何故だか分からないが何度も見失った。気が付くとあさっての方角に向かって漂流を始めているのだ。宇宙艇に繋がっているワイヤーに、グイッと引き戻される度に「ギャッ」と悲鳴をあげる事になるのだった。

 どうにかこうにかカリキュラムをこなし、外周壁面にあるハッチとエアロックを通って中に入って行った時には、ユーシンはもう、げっそりしていた。入ったところがちょうど、前日作業をしていた検品スペースだったが、そこに入るや否やキプチャクに、

「はい、ユーシン。これ、おまえの分だから。」

と、台車いっぱいに積まれた検品用の荷物を押し付けられた。

「酷くないか、キプチャク。」

「華やかな船外作業を満喫して来たんだろ。俺は1日中、ずっとこれをやってるんだぜ。」

 そう言われて反論も出来ず、ユーシンは検品作業を始めた。船外作業の後遺症か、無性に込み上げる吐き気を(こら)えながら、作業を進めて行く。しばらくして、ようやく吐き気も収まり、作業もはかどり始めたと思った矢先、またまた世界が縦回転した。ユーシンの眼球に備わった、全自動急速お嬢様回避機能も、筋金入りになって来たようだ。

 今回は、作業に専念しているふりをする、拷問のような時間は長く続かなかった。すぐにクレアは横を向いて、誰かと話し始めたから。ユーシンは横目にそれを見た。話し相手を見て驚く。「変態商人」のラクサス・デカポロムではないか。そして彼の言っていた、クレアをいつか(めかけ)コレクションに加える、と言ったセリフも思い出し、背筋に悪寒が走った。

(まさか、それを実行に移しに来たんじゃないだろうな。)

 だが、「UF」の得意客である彼がここに来ることや、クレアと話をする事は、決して不自然でも無いと思い直し、気持ちを落ち着けた。

 クレアは笑顔ではないが、さほど沈んだ様子も無く、ラクサスの話を聞いているようだ。何かをしきりに話しているラクサスに向かい、コクリコクリと頷くクレアの服装は、またしてもジャケットとタイトスカート。そしてユーシンの視線は、またしても下へ下へと泳いで行き、行き着くべき場所に行き着いた時に、脳に電撃を生じさせる。

(なんて滑らかな曲線だ。)

 ぼんやり眺めながらそう思っている内に、いつの間にかラクサスはクレアの背後に回り込んでいたようだ。クレアはラクサスの方に向きを変えず、同じ方向を見続けている。窓枠の外の事なので良く分からないが、ラクサスとは別の誰かがそちらにいて、その人の話を聞いているのかもしれない。

 そのことに構わずにユーシンは、(なんて滑らかな曲線だ)との思いと共に、視線を固定させ続けていた。

 と、その滑らかな曲線に、何者かの手がピタッと張り付いた。瞬間的に、ユーシンの頭に血が上る。

(何をっ!何てことをしやがるんだ!)

 手の主は、ラクサスだ。

「きゃぁっ!やめて下さい。困ります。」

 話し声は通さなかった壁を突き抜ける程の悲鳴を、クレアはあげた。その顔には、羞恥、嫌悪、憤慨、困惑、屈辱、そんなものが入り乱れたような、見ている方が痛々しくなる表情が浮かんでいる。

「あの変態、お嬢様に何をしてくれてるんだ!」

と言って憤りを爆発させたのは、しかし、キプチャクが先だった。

「ああ!あの野郎、許せねぇ!」

と、ユーシンも続いて、椅子から腰を浮かし掛けたが、当のラクサスは笑いながら、さっさと退散して行ったようだ。

「お嬢様に気安く、あんな事をするなんて、あいつ完全に『UF』をバカにしてやがるんだ。お嬢様を、変態的な欲求のはけ口にしやがって。」

「ああ、全くだ。」

とユーシンは、口では同意を現したが、内心では違う事を思っていた。

(そんな事より、お嬢様にあんな顔をさせた事が許せない。お嬢様は、笑顔でいさせてあげなければいけないんだ。笑顔の方がきっと愛らしいし、その方が、宇宙も明るくなるんだ。)

 クレアの笑顔を阻むものを退ける力、それも今のユーシンには無い。己が非力を彼は嘆いた。

(早く一人前にならないと。船外作業でげっそりしている場合じゃない。)

 茫然とした顔でその場に残されたクレアを、ユーシンは見つめ続けていた。一刻も早く成長を遂げるぞという、強い決意を胸に。だが、いつしか視線はさまよい、背中を下り、通り過ぎ、その先を見て、そして、やっぱり思った。

(なんて滑らかな曲線だ。)


今回の投稿では、ここまでです。今週の投稿も、ここまでです。次回の投稿は'17/3/17です。

さて、ユーシンのクレアへの視線が、やや不純になって来たでしょうか?(15歳の健康な男子なので、これが自然?)男性読者は、思い出して下さい(15歳未満の男性と女性読者は、想像して下さい。)、15歳の少年が、17歳の少女を見る時の気持ちを・・。たぶん、人生の中で、一番色っぽく感じる存在?? それはともかく、

次回 第11話 虜囚の受難 です。

サブタイトルが「ヤマヤの虜囚」ですから、こっちのプロットも動きます。商船クルーとしての活動、お嬢様との関係、そして虜囚、複数のプロットが、同時に回ります。どれも、心に留めて頂きたいです。

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