闇と光
6年前、10年以上続いた戦争が和解という形で終結した。
その戦争で行われていた人体実験も戦争の終わりと共に終わった...はずだった...
「た、頼む...見逃してくれ...」
色鮮やかなネオンの光が届かない町はずれの裏路地で1人の男が小さな少年に土下座していた。
少年は頭まですっぽりと入るフード付きのマントをはおり、顔には不気味な狐の面をつけている。
「し、仕方なかったんだ...上の命令には逆らえなかった」
少年は何もせず男を見下ろしていた
「子供のためだっただ...」
きっと無意識だろう...男の口からそんな言葉がポツリとこぼれた。
その言葉を聞いた少年はスッとしゃがみ男に耳打ちした。
六月に入り雨もだいぶ強くなった頃...
「あぁ、もぉー 結局夜になったし...」
人通りもまばらになってきた深夜の道を傘もささずに走り抜けるのは、今年で19になる夏輝《なつき》だ。
閉館時間が来たら言ってっていつも言ってるのに...
夏輝は叔父と共に町にある私立図書館を管理していた今日は倉庫にしまってあった本を新しく入れる作業をしていた。
できるだけ早く着こうと細い裏道に入っ時
ガッ.....
何かに躓いて
ズザザザァ...
思いっきり転んだ。
泥と雨水を盛大にかぶりながら夏輝は後ろを振り返った
「え......」
振り返った先にいたのは建物によりかっかてお腹を抑えた小さな男の子だった。
よく目を凝らすと男の子の周りの水たまりは濁った茶色ではなく真っ赤な血の色をしていた
「だ、大丈夫?」
慌てて駆け寄ると男の子はゆっくりと顔を上げて夏輝に鋭い視線を向けた。
そのとき
グルルルルゥゥ
真後ろでそんな唸り声が聞こえた気がした。
勇気を振り絞って振り返るがそこには何もいなかった。
「この子どうしよう」
ここらには病院などはなく1番近い隣町の病院でも数時間かかってしまう...
悩んだ末に夏輝は自分の上着を脱ぎ男の子にかけそっと抱きかかえた。
そして夏輝が向かった先は
ガチャッ
自分の家だった。
父がやたらと狙われやすい仕事をしていたせいか家には緊急手当て用の道具がいろいろとそっろっていた。
夏輝はベットに寝かせた男の子の血の気のない顔を撫で手当てを始めた。