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危険なお茶会の始まり

「まぁ、ヴェルンハルト子爵様、ここで会うなんて偶然ですねっ」

彼に近づいて、微笑みながら話を展開させていく。


「そんな堅苦しい名前で呼ばないでください、麗様」

微笑みを絶やさないでそんなことを言う彼の後ろには執事と思われる人がいた。


「あら、そちらは使いの者ですか?」

見慣れない顔というよりも、この子爵と会うのはこれで二回目なのだけれども。


「そうです。彼は僕の使いで、イェリネックと呼んでいます」


「いぇりねっく……」

言いにくい呼び名だなと思ってしまっていても、人の名前なので失礼なことは言えなかった。


「ところで、麗様もキッフェルンを買いに来たのでしょうか?」


「そう、ここのは、タクに毎回買ってきてもらうのだけれども、おいしくって。麗様もということは子爵もということですか?」

ふふっと笑いながらタクが並んでいる列を見て言う。


「はい。僕もこの伝統菓子好きなんですよ。僕の国ではこのお菓子売ってないのでわざわざ買いに来ています」


僕の国と言ったところに私は疑問を持った。彼はリーテ国つまりこの国の者ではないということなのだろうか。


「子爵はこの国の者ではないんですか?」

疑問をもったらすぐにわかりたいという私の癖になり始めたこの行為をやってしまう。


「はい。僕はリーテの隣国、プラッセの出身です。ほら聞いたことがあると思いますが、獣人中心の国なんですよ」


「獣人……」


獣人と言えば、頭に獣の耳とか、ふさふさのしっぽを付けている人間の形をした人みたいな獣のことだろうか。

やはりこの世界はすこし変わっている。


「僕自身は普通の人間なのですが、イェリネックは獣人ですよ」


目で合図したかのようにイェリネックさんは、見る見ると肌に黒い毛を生やして、黄色い目と髭を顔に現していく。


「こ、この人は」


「簡単に言うと、黒豹ですね」


フフッと笑いながら彼を見つめてもういいよというように合図した。

すると、元の人の姿に戻って、真面目そうな執事へと変身を遂げた。


「黒豹ですか……」


はぁと興味津々に彼を見つめていると、キッフェルンを買いに行っていたタクが戻ってくる。


「お待たせしました、麗様。……子爵様もご一緒でしたか」


にこやかに笑いながら袋を抱えて走ってきたかと思うと、急に彼を認めると、その表情は消えて少しだけ殺気に満ちているように感じられた。


「ええ。子爵もキッフェルンを買いに来たのですって。……あ、そうだわ!ねぇ、子爵、これからお時間よろしいでしょうか?」


フフッと笑いながら彼にそういうと、彼はええ、もちろん大丈夫ですよと答えて、私たちは、奇妙なお茶の時間へと移行していったのである。



――


「麗様を狙う者って……」


俺は一時間近く大会の中止の件を聞いていた。


「そう、麗さんには言っていないが、脅迫状が届いてね」


ブリリアント様の机の引き出しから出てきたなんとも上品な紙で作られた脅迫状を俺は手にしていた。


『いますぐに大会をやめなければ、大会当日に客人、麗を暗殺する』とそう確かに書かれている。


「一体、誰が……?」


「僕もそれが知りたい、だけれども麗さんを危ない目には合わせたくない。だからしたかがなくそれに従ったんだ」


すとんとブリリアント様は腰を落とすと、足をくんで麗の写真を手に取った。


「ハーベルにもこの件は手伝ってもらってはいるが、なかなか犯人をあばきだせなくてね……」


「そう……ですか……」


息が詰まるような話だ。こんな行為をして何が望なのか、見当もつかない。


「……とにかく今は麗さんの安全を第一に考えることだ。フデリックもそれをしかと心に収め、麗さんを守ってほしい」


そう彼の言葉で俺は頷くと、彼との対談の幕を下ろしたのだった――

「いやぁ、麗様のお茶会に呼ばれるなんて幸運です」


嬉しそうに紅茶を片手にそういって私を見つめる子爵は、どこか色気があった。なんとなくいやらしさを感じた私は、彼に先ほどから距離を取っている。


「いえいえ。どうもあのパーティーの時、貴方が気になって、ぜひ話したかったからです」


フフッと笑いながら彼に相づちを打っていると、誰かが訪ねてくる。

どうやら新しいお客様のようだ。タクにドアを開けてもらうと、そこにはショウ様がいた。

彼は、私と子爵の姿を認めると、笑顔だったその表情は見る見ると、変化させて、私の手首を持って私を立ち上がらせる。


「しょ、ショウ様……?」


「どうして貴女が彼と一緒に?もう行きましょう、彼は危険です」


困ったような怒ったようなそんな表情をしながらショウ様は焦ったように言う。


「そんなの失礼だわ。私がお呼びしたのですから、おもてなししないと……」


彼は不思議そうに私を見つめるが、先ほどから彼はショウ様を見ようとはしない。私を見つめている瞳もなんだか薄気味悪く感じる。


「麗様、このキッフェン、お食べにならないのですか?折角買われたのに……」


「え……っ、しょ、ショウ様、お手をお放しください。私は、お菓子を食べたいのです」


ショウ様の急変に戸惑いながらゆっくりと、彼の手を離していく。


「麗さん、彼は、彼は……」


くっと何かを言いかけたが、唾をのむようにしてその先は言葉を出せない。

一体、どうしたのだろうか。この二人の関係、何かおかしいと私は思った。私に内緒で何かを隠しているのだろうか。確かタクの様子もおかしかった。きっと何かあるに違いないと踏んだ私は、早速探りを入れてみることする。



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