いつの間にか異世界へ
『ここはどこですかぁあ!?』
大声で誰かに聞く。
しかし、誰も答えてくれない。当たり前だ。もっともこんな森の中で人気もあまりなかった山だったから余計だろう。それに私は、知り合いなんて一人も連れて来てはない。いまさら弟を連れてくればよかったなどと後悔しても遅い。
「はぁ……」
趣味の登山をしていたらなぜかこんな場所に出るなんて。前から極度の方向音痴で迷うことは分かっていたけれどもこんなことは初めてだ。
「一体、どうして……?」
どうしてかってそれは、裏道があって興味をそそられ、それをずんどこずんどこって進んだらこんなところに出た――自業自得だ。
こんな森じゃあ、だれも通らないだろうし、外国のようだから英語とか日本語以外の言葉。頭の悪い私にとってしかも英語はものすごく苦手である私には過酷な試練だと思う。
「どうしよう」
急にわけわかんない言葉で話しかけられてしまったら、私はきっとパニック状態になってしまってそこで気を失って、悪い人に連れていかれる―-
というよりも、このまま誰も来ないから助けられず、飢え死にするんじゃないという可能性の方が高く感じる。
「はぁ」
ため息ばかりついているが、もうどうにもならない。もう実際にこんなきれいで日本にはなさそうなこんな場所にいること自体、私はもう終わっている。
ここはきっと異世界だ。
いや、真剣にもっとまじめに考えよう、自分と思っても、それしか答えが見つからない。
森を見渡せば、青紫の木々が心地よさげに風に吹かれている。空をまた見上げると、ピンク色が入り混じった水色。変な色……と思いながら舞い降りてきた葉っぱを見つめる。
綺麗な色だけど、なんだか気色悪く感じるのは、見慣れないものを見た日本人の感性と言うものなのだろうか。
また何回目かのため息をつくと、ここにいてもしょうがないと思い、出口を見つけるため、歩き回ろうと試みたが、木の根っこに足が挟まれていることにようやく気付き、もう一度切株に座って途方に暮れる。
――なんて、最悪な日なのだろう。
こんな平凡な何のとりえもない私が異世界に来てしまうなんてありえないと思っても現実に今起きていることを素直に受け入れていくしかなかった。