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第23話【護送任務とそのメンバー】

「やっほー、ネラちゃん、2週間くらいぶり?元気だった?」


翌朝、ギルドの前に着くと、ティルダがこちらに向けて手を振っていた。


「ティルダ、おはよう。私はいつも通り。今日はよろしく」


「こちらこそよ、ネラちゃん」


「おう、元気そうで良かった。いや、元気…?お前いつも無表情で分からんな。まあいいか!前に約束してた通り、今回は俺らと一緒の仕事だ。よろしく頼むぜ!」


ティルダの隣に居る強面の男が笑う。相変わらずの大柄だ。筋肉お化けの変態まではいかないが、それに近しい体躯の持ち主だ。背負う大剣の一撃は、強烈なものだろう。


「相変わらず怖い顔、オッツォ」


「そりゃあ一朝一夕で変わるもんでもねぇからな!?」


例えば顔の皮膚を剥ぐとか、鼻が潰れるとか、そういうのであれば形は一瞬で変わるだろう。いやまあ、もっと酷い顔になるだろうけど。


「あと三人居るらしいけど、もう来てる?」


「いいえ、まだね。でもまだ鐘は鳴ってないし、きっとそのうち来るわ」


基本的にこの世界は、時間にルーズだ。朝の鐘、昼の鐘、夕方の鐘。その程度しか細かい時間が無く、地味に不便だ。


「おお、そうだ。前にお前から貰ったこれ、俺は剣の柄にリボン結んで居るんだが、やべぇな、これ」


思い出したように、オッツォは声を張り上げて、背中の剣を抜いてひと撫でする。


「そう?役に立ったなら良かった」


折角渡した魔術なのだ、使われなければ意味が無い。


「ああ、今までとは比べ物にならない破壊力が出る。初めて使った時はびっくりしたぜ」


力を増幅するのがウルズのルーンだ。ただ力任せに振るうだけでも凄まじい威力を叩き出す。と、思う。


「あれはびっくりしたわね……。おかげで私の方は使われることが無いわ」


ティルダが首元からペンダントにしている黒い魔術石を取り出す。まあ、防御の魔術は出来るだけ使われない方が良い。それだけ、危ない目には遭ってないということだ。


「ただ、それで一つ問題があってな……」


「?」


言いづらそうに後頭部を掻くオッツォ。威力が高いのに何か不満があるのだろうか?


「剣の消耗が激しいのよね。あれだけの力を出しているだけに、剣の方が悲鳴を上げてるのよ」


「結局、必要な時だけ使うようにしてはいるが、俺の剣は特注だからなあ」


ああ、成る程。剣を使う事はそう無いので、すっかり忘れていた。武器は非常に高価だ。オッツォのような特注の大剣は特にそうだろう。


僕が剣ではなく拳で戦うようになったのも、あの頃の金銭事情の問題もあったからだ。


しかし、そうか、剣の消耗か……。


イサのルーンがあればそれも何の問題もなくなるが、イサ自体が今まで渡した魔術よりも圧倒的な効果を持つ。これを他人が使用限界があるとはいえ自由に使わせるには、少々その効果は強過ぎる。


「────私が見てない所では申し訳ないけど、力をセーブして使ってもらうしかない。でも、私と一緒にこの依頼をこなす間だけは…」


ここが、妥協点だろう。僕はオッツォの持つ剣の腹に指を滑らせる。


「《停滞(isa)》」


停滞を表すイサのルーンが、剣の状態変化を許さない。決して砕けず、折れず、刃毀れをしない、剣としての最高峰と成る。


「────この依頼中は、私の魔術が貴方の剣を守る。これで、その力を使っても、この剣は絶対に消耗しない」


魔術が起動する。黒い魔力が白い魔力へと変換され剣を包む。剣を完全に包み込んだ魔力は、染み込むように溶けて、見えなくなった。しかし、その剣に魔力が宿ったのは感じることが出来る。


「おお、なんか凄いな。でも、これで本当に消耗しないのか?」


オッツォが呑気な声を上げて、剣を眺める。魔力を感じられないとは思わないけど、その効果は疑っているようだ。それはそうだ、そんな簡単に出来るようなモノであれば、魔術はもっと発展していただろう。


「きっと大丈夫。もしその魔術が効いている間に折れたら私が責任をもって直すよ」


「お前、そんな事まで出来るのか…」


呆れるオッツォ。その隣で、魔術を使ってから固まったまま呆然としていたティルダが、ようやく意識を取り戻した。


「……何よこれ、剣に付与された魔力だけで私の魔力の量を超えているんだけど……?」


「え、まじで?」


ふむ。Bランクの魔力量としてはそんなもんなのか。やっぱり意味わからない保有魔力量だ。


「体調が悪くなってる様子は……全く無いわね。一体どれだけの魔力を持ってるの?」


僕と剣を交互に見て、戦慄した様子で尋ねるティルダに、僕は首を傾けてこんこん、と頭に拳を当てた。


「保有魔力の……3割前後くらい?」


サバを読んだ。1割前後だ。


イサの魔術は、文字が簡単な代わりに、消費する魔力量は多い方だ。特性自体も応用性が高く性能が高いから当然だが。


しかしそれでも、普通に魔術を使った程度で僕の魔力は1割も使わない。今回、消費した魔力量が多いのは、大剣が大きいのもあるが、その大剣に付与した停滞の魔術を常時起動させ、それを3日維持できるようにしているせいだ。


当然ながら現象である魔法、魔術をこの世に留めておくには魔力の供給が欠かせない。魔術や魔法を生むのに魔力を消費するのと同じように、それを維持するには魔力を消費する。


「これで3割……凄い魔力を持ってるのね」


「宝の持ち腐れ」


こんな戦闘センスの無い人間よりも、別の魔法センスのある人間の方がずっとずっとこの魔力量を活かせるだろう。


きっと僕なんかよりも、もっと勇者として最適な人間が居たはずなのだ。


「お、最後の3人が来たようだぜ」


興味深く素振りしていたオッツォが、剣を肩に納めてギルドへのと続く道を見た。


「すみません。今回の護送任務に参加する方でよろしいでしょうか?」


「ん」


「おう」


走り寄って尋ねて来た彼らに僕とオッツォが頷いて返すと、正面にいて尋ねて来た彼はほっとしたように微笑んだ。


「よかった。私、Cランクパーティのリーダーを務めております、リューと申します。今日はよろしくお願いしますね」


礼儀正しい少年だった。綺麗な金髪を短く整え、優しげな顔立ちをした少年だ。端麗な顔とは裏腹に、要所を守るだけの革鎧と帯剣された剣だけが使い古されていた。


この世界、礼儀というモノを習う人はそう多くない。連綿と続いて来た商人、それを師として学んだ人、村や町の長、そして貴族と王族。


彼はそれに類する何かだとは予測できるが、まあ、冒険者はあらゆる立場の人が居る。後ろ暗い過去を持って居るものも居れば、僕みたいに元貴族も。あまり他人の事情には踏み込まない方が良いだろう。


「そして、後ろの2人が私の仲間で、バルツとシーナです」


リューと名乗った少年が一歩下がって、もう2人を紹介する。パッと見た感じ、彼と同年代だろう。


バルツは、どちらかと言えば可愛らしい、と言える童顔の少年だ。リュー以上に軽装で、鎧の類いは一つも見当たらず、武器らしい武器は腰の小剣だけだ。


シーナはローブを身に纏った魔法使い然とした可愛らしい桃色の髪の少女だが、その手に身の丈程の長い杖を持っていた。それも金属製だ。重くないのだろうか。


「おう、よろしく頼むぜ。リュー。俺はオッツォ。こっちはうちのリーダーのティルダだ」


「よろしくね」


「そんでこっちは、単独で……この任務を直接依頼された未来多き魔術師、ネラだ」


オッツォが全部紹介してくれた。面倒が避けられたと、宜しく、とだけ挨拶する。リューとバルツが、こっちを見て神妙な顔をした。


「……?」


僕に何かを言おうとしたのか、リューが口を開き───ふいに、その後ろからシーナが出て来て僕の前に立った。15.6才くらいか。僕よりも頭一つ分ほど大きい。


そっとシーナが手を伸ばして、僕の頭に手を乗せた。なでりなでり。


「……?」


撫でるのが上手い。気持ちいい。けど、何してるんだ彼女は。そういう意味を込めてシーナに目を向けると、先程まで緊張に強張っていたはずの彼女が満面の笑みを浮かべていた。




「好き」




「は?」


次の瞬間、彼女はぎゅーっと僕を抱き締める。


「この子、貰っていい?」


「いや待て待て、何してんだお前は!」


背後からスパァン!と良い音でシーナの頭を叩く。黒髪の童顔の少年───バルツだ。もぞもぞとなんとか動いて隙間からリューを見ると、苦笑いしながら溜息を吐いていた。


「だって、この子凄い可愛くない??さっきの上目遣いなんてもう、もう……!子作りしたい!!」


絶対に離さない、という風に僕の頭を胸元で抱える。ふわりと甘い香りがした。あと、押し付けられて分かったが、彼女の胸は大きくもなく小さくもない、丁度いいサイズ感だった。


なんとなく関係性が見えて来たけど何言ってるんだこの娘は。

最近はアズレンやってました。アズー◯レーン。軍艦に興味はなかったのですが、STGということで始めて割とはまってます。綾波とユニコーンがかわいい。


あとこんな更新が進まない小説をブックマークして頂いてる方々には感謝と謝罪の念が絶えません。ありがとうございます、そして申し訳ありません。

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