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第21話【傀儡師】

15話において、流石に一気にAランクはやりすぎかなと思ったのでBランクにダウン。

12話のギルドランクのパワーレベリング辺りを削除、調整。元々試験で飛び級なんて考えてなかったので矛盾が発生してしまった。ということで修正しました。

「──それで、どうする?」


現場判断は、僕よりも彼らの方が優秀だろうと後ろの2人に尋ねる。


「当初の予定通り、捕獲しよう。幸い、奴は私達に気付いていない。不意打ちで良い、一瞬で捕獲を――」


キリエルがそう言って魔力を励起、魔力糸を作り出した、直後


ぐりん、と首が回ってこちらを見る紅い目と、目が合った。


「──《防御(eihwaz)》」


反射的に握った魔術石に込められたルーン魔術が発動、防御や死と再生を意味するエイワズが、目の前に幾何学模様の障壁を作り出す。


ガィン!と快音。発現したルーン魔術の障壁が、大きく(たわ)む。人影がこちらに向けて太い尻尾を振り下ろしたのだ。


魔術石故にそこまで性能が高いわけではないが、ルーン魔術の障壁にここまでの衝撃を──


「馬鹿な、何故気付かれた!」


そう叫びながら、キリエルと筋肉オバケは距離を取る。が、僕は距離を取らずにそのまま残った。


「ネラ君!」


その叫びに答えることはせず、僕は障壁を消して一歩、踏み込む。


「ドッセイ」


掛け声と共に繰り出した剛力の拳が竜の頭に減り込んだ。衝撃音と言うよりは破裂音を生み、人影が大きく吹っ飛ぶ。ふむ。


「硬い…」


思っていたよりも表皮が硬い。もしもの時を考え、身体強化のギアを一つ上げる。


どうやら人影にも今の拳はそこまで効いていないらしく、すぐに起き上がる。


「ォォォォォォォォ!!!」


人とは思えない声で人影が吠える。空気がビリビリと震え、草木がざわざわと騒めいた。


「騒々しい」


一足。人影との距離を詰めた僕は、咆哮を止めさせる為に竜の形をした顎を蹴り上げる。「ゴォッ」呻き声を上げる人影が、蹴り上げた衝撃で宙に浮く。そこに掌底を食らわせた。


吹き飛ばされた人影は太い樹木に激突し、大いに樹木を震わせた。


「だ、大丈夫なのかい?」


そこで飛び退いていた2人が近づいて来る。


「表皮は人よりずっと硬い。初撃も早かったけど、私と筋肉オバケなら対応できる」


頷いて、敵の情報を伝える。ただ、まだ少々情報が少ない。出来るだけ、この戦闘で情報を引き出したい。


「もう少し様子見する」


「問題無いんじゃな?」


筋肉オバケの質問にこくりと頷く。この程度なら多少予想外が起きても対応出来るはずだ。防御の魔術石もいくつか残っているし、万に一つも無いだろう。


「わかった、ワシは周囲の警戒に移る。キリエル、ネラを頼むぞ」


「了解、ネラ、気をつけて。もしもの時は私が出るよ」


「ん」


後ろに下がるキリエル達を尻目、起き上がる人影。グルルと喉を鳴らし、こちらを睨んでいる。


さて、先ほど僕らに気づいた理由は知りたい所だ。といっても、見当は付いているが。


魔力感知──


竜の頭を持つ奴が、竜の能力を持っていないと思うのは早計だろう。恐らく、キリエルの魔力の励起に奴は気づいたのだ。


ただ、現状僕の魔力は秘密(パース)のルーンによって感知されないようになっている。竜と同じ本能を持つなら、下手したら竜と同じように僕から逃げるかもしれない。


そうなると、試そうにも試せない、困った。


怒っているからか、初撃より更に速く僕との距離を詰め、凶悪な爪が襲いかかる。狙いは胸。恐らく心臓だ。それを大きめに横にステップを踏んで躱し、人影の腹に回し蹴りを叩き込む。避けようという素振りは見せたが、対応は出来ない。


再三吹き飛ばされる人影は、今度は大きく地面を削りながらも地に足をつけて耐えきる。


再び襲いかかる人影は、身体を回転させて太い尻尾で薙ぎ払う。それを大きく跳ねて躱すと、宙に居る僕に尻尾を振り下ろす。魔術障壁でそれを防ぎ、地に降り立つと間髪入れずに爪の薙ぎ払いが繰り出される。それを体勢を低くしてやり過ごす。


嵐のような猛攻だが、見えている僕には届かない。襲い来る攻撃を全て危なげなく避け、防いでいく。


膂力も凄まじいもので、太い樹木を容易く折る破壊力がある。なるほど、今まで出会ってきた魔物の中でも中の上程度の強さはありそうだ。


尤も、それだけだ。技術も魔法も無い。僕のように、ただその身体能力に任せた力任せの戦い方。それならば、僕らどころか僕1人の脅威にすらなり得ない。


「キリエル、いける?」


「強度は不安だが……問題無く捕獲はできるだろう。」


「それは私の魔術で補助する、大丈夫」


「それなら安心だ、僕と変わってくれ」


「ん」


人影を再び蹴り飛ばし距離を置くと、僕が後ろに引き、キリエルが前に出る。


「次の相手は私だ、竜人(ドラゴニュート)。どうか抵抗せずに私の糸に捕らわれてくれ」


キリエルが魔力を励起、両手の指の一本一本から魔力で出来た半透明な糸が伸びた。


竜人(ドラゴニュート)?」


「仮称だけどね。人影と呼ぶよりはマシだろう」


グルルと唸る人影──竜人(ドラゴニュート)が、後方に引いた僕では無く、キリエルを見る。完全に魔力を外に出さない僕よりも、キリエルの魔力が気になったのだろう。


「多分、竜人は魔力を強く感知する術がある。気を付けて」


「ああ」


竜人が襲いかかろうと一歩、足を踏み出す──と、奴はそのまま何かに足を取られたように地面に倒れこんだ。


いや。ように、じゃない。確かに足を取られて竜人は転ばされたのだ。


竜人の足元をよく見ると、その真っ黒く太い足首に、半透明の糸が巻き付いている。その糸の先は最終的にキリエルの指先と繋がっていた。


竜人は足首に絡まる糸を引きちぎり、態勢を崩しながらもキリエルとの距離を詰めようと四つ足で駆けた。


「む、思ったより簡単に千切られたな。けれど」


キリエルは呟きながら、腕を捻る。その顔に驚きはあれど、焦りは無い。


「私の糸は、一本じゃないよ」


再び、竜人の進行が止まる。


魔力感知を持つ竜人は、魔力糸を感知することは出来るだろう。事実、竜人はそれを避けるように身体を捻らせた。しかし、キリエルの糸は逃さない。


まるでそれ自体が意思を持っているかのようにうにょろうにょろと少々不気味に蠢めく魔力糸は、竜人の四肢を捕まえる。


引きちぎる度に再び糸が絡みつき、竜人の行動を制限する。竜人はその度に吠えるが、それは一切の意味は無かった。


それは、まるで出来の悪い人形を操っているようだ。糸は竜人の意図とは別に動き、竜人を人形の様に操る。竜人は完全に遊ばれていた。


傀儡師──


筋肉オバケ曰く、キリエルの二つ名らしい。


敵の四肢を絡め取り、相手はまるで人形のように操られる。傀儡を、傀儡師が手足の様に動かすように。故に与えられた二つ名が、傀儡師。


「遊びは終わりだ」


どうやら本当に遊んでいたらしい。キリエルは今まで片手だけを使って糸を操っていたが、その言葉と共にもう片方の手を上げた。


それからは一瞬だ。


竜人は地面に叩きつけられ、流れるように四肢を背中に回して縛る。先とは違い糸が何十にも絡み合い、竜人を完全に拘束した。糸で作られた簀巻きである。


「────!!」


吼えて暴れる竜人。何重にも包んだ糸は先とは違い千切れることも解ける様子も見せないが、竜人の膂力にぎしぎしと嫌な音を立てる。


「《停滞(isa)》」


そこに、僕が糸に魔術を掛けた。停滞と氷のルーンは糸の形状変化を許さない。千切れるという形状変化をさせず、停滞させる魔術のイサ。


これでよし。


「ああ、ありがとうネラ。僕の糸だけじゃ不安だったんだけど、これなら大丈夫そうだ」


触れるとガチガチに糸が固まったのが分かる。押し込もうとしても一切の動きは無い。


「これで捕縛完了。このまま連れ帰ろう。爺さん、担いで持っていってくれ。私とネラ君は周囲の警戒をしながら戻るよ」


「うむ」


「ん」


筋肉オバケが竜人を俵担ぎのように肩に担ぐ。うめき声を出す竜人だが、口までキリエルの糸で縛られており、殆ど聞こえない。


「思ったよりも楽な依頼?」


「私達に取っては、だね。君自身が強いし初めて組んだ仲間が私達だったからこんなにも容易く拘束することができたが、普通の冒険者じゃこいつにひとたまりもないよ。それだけの強さをこいつは持っていた」


これは普通の冒険者にとっては高難易度の依頼だ、とキリエルは言う。


「純粋な戦闘能力は、主はワシらAランクと同等、或いはそれ以上じゃ。だからと言ってあまり驕らないようにな」


「ん」


ギルドランクAが低いかと言われると、そうでも無い。というか普通の人間が辿り着ける最高峰だという話だ。


そもそもギルドランクにはSS、S、そしてAからFまで存在する。Aより上に2つもあるが、事実上Sだけだと言っていい。SSランクは名前だけあるだけで、そこに辿り着けた者は過去に1人だけだと言う。


そしてSランクだが、これは圧倒的に才能の差が出てくる。精霊魔法には限界があるからだ。詠唱をする必要がある以上、隙を晒す事になる精霊魔法。また、誰もが知り得るもの故に対策も取りやすい。


故に、Sランクに位置する者は誰もが異能者だ。どうやら、レイアもここに位置しているらしい。僕の手助けを必要とする事なんてあるのだろうか。別の方法で恩を返す事を考えておこう。



閑話休題。



森を出る為に元来た道を戻る。竜人の気配に恐れているのか、他の魔物は姿を表すことはなく、容易く歩みを進められた。


筋肉オバケの肩の上でうーうー唸る竜人を眺めながら歩く。やはり、どこからどう見ても真っ黒だ。竜の頭と竜の尻尾らしきものがありながら、その他は普通の人間のシルエットというアンバランス。


因みに男の体で服は着ていないので、よく見たら男性の象徴がぼろんぼろん揺れていた。僕だから良いものの、これは目に毒である。


「お主、よく見れるの…」


無駄にじっくり眺めていると、それを担いでいる筋肉オバケが半眼で言う。


「興味深い。子作りできるのかな?」


まさに人間のソレなので人間との相性を考えていたが、あるいはこの竜人の種族が子孫存続に使っているのだろうか。


妙な好奇心はともかく、あんまり年端もいかない少女が見るようなものではないのは確かだ。


「お主、あんまりそういう事は言うもんじゃぁないぞ」


「んー」


生返事しながら、竜人の足の裏を擽ってみる。うーうー唸ってるだけで擽りに反応はしなかった。つまらない。


それにしても、この真っ黒な感じ、まるで僕と同じ闇の異能みたいな──


「───────」


あり得る、のだろうか。別に、僕は自身より強い者が居ないと思うほど驕り昂ぶってないし、この力が僕自身だけの力だと思い上がるつもりもない。


異能について、分かっていることは少ない。どうしてこの異能がどうやってこの異能が手に入るのか、それは一切わかっていない。異能は十人十色千差万別。けれど、決して同じような異能が無いわけでは無い。


僕と同じ、闇の異能――

まさかとは思うが、その可能性は捨て切れなかった。

感想を再び頂きまして本当にありがとうございます!

個別に感想に返す、という事をするつもりはありませんが、きちんと感想は読ませて頂いています。質問やアドバイスがあればそれを取り入れていくこともしていきます。場合によってはこのような前書きや後書きにて返すつもりです。

感想というのは中身はなんであれ読んで頂けているという事実は凄く嬉しいものですね。その分プレッシャーに胃が痛い。


こんなゴミみたいな文章力とカスみたいな構成力にクズのような遅々として進まない執筆速度ですが、これからも頑張っていきたいと思います!

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