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第18話【同志】


面白くなくてもユーモア入れないとずっと同じテンションでなんかやれないね!

その過程でちょっと下品な会話も登場します。あんまりやる気はないですが、下ネタに頼らなければならない私のユーモアをお許し下さい!





「ぶふぅっ!」


吹いた。なんかもうキャラが崩れるほどに思いっきり吹いた。


「せ、閃剣の…くくっ…ぷ、ぷりんす…な、あ、くひははっげほっげほっ」


「ちょっ…な、だ、大丈夫かい?」


「けほっ…ふー……」


噂話程度ではあるが、魔王のこの時代での話を、僕はキリエルから聞かされていた。


約2年前から現れて、1年前に最年少最速という素早さでギルドランクAを手に入れた青年である事。


人間界にて最も珍しいエルフという種族である事。


無駄に美形であること。


誰かを捜す様に動いている、という事。


光り輝く銀の剣を握り、周囲から飛び出す剣の弾幕により圧倒する事。


そして、彼は『閃剣の貴公子(プリンス)』なる小っ恥ずかしい二つ名である事。


「……確かに、私が捜してる人っぽい」


というより、おそらく間違い無いだろう。その人こそが元魔王だ。


「その人の居場所やその他の情報の依頼は可能?」


「申し訳ないが、ギルドでは人の情報を売るのは禁止行為となっている。話せるのはあくまでも噂話までだ」


まあ、仕方ないか。前世でもストーカーが探偵にそういう依頼を出して酷いことになったって話もある。


既に魔王が存在して、人間社会で動いているというだけで何歩も前進しているし、追っていけばいずれ出会えるだろう。


「分かった、ありがと。助かった」


「悪いね、これしか答えられなくて」


「充分」


あとは、色んな人に聞き回りながら自分で周り、ついでに自分の名前を広める、それだけだ。

部屋に戻ろうと立ち上がった時。


「ただし―――」


キリエルが口を開いた。空に向けていた視線を彼に戻す。彼はうっすらと笑いながら言った。


「売るのはダメだが、渡すのは可能だ。また、相手が探している人と自身が探している人が合致した時のみ、ギルドは情報を渡すことができるんだ」


「……それで?」


落胆させておいて、上げてくるのか。非常にズルいやりかただ。


「残念ながら、彼が捜している者と君は合致しないが……さて、ならもう一つ」


「こちら側から情報を出す――どうやって?」


「情報を売ることが出来ないのは、対象者に問題が起こる可能性があるからだ。しかし、相手も同じように相手側に捜索依頼を出した場合に限り、それを認めている。つまり、こちら側からも同じように捜索依頼を出せば良い。


まず捜索依頼は捜索されている側にだけ、依頼があった事が伝わる。その場合、多少君の情報を流す事になるのだが……それとは別に、何かしら相手にメッセージでも良いかもね」


「メッセージ…」


「うん。長い内容は伝えられないけど、一言程度なら良い。相手と自分しか知らないような事をメッセージにすれば、相手も気付くんじゃないかな」


なるほど、それなら一言しか無い。


「なら、その人に捜索依頼を出す。メッセージは、『魔王』で」


「確かに承りました」


キリエルは何処からか取り出した紙にペンでしたためると、それを懐に閉まった。


「それじゃ、これはギルド側に伝えておくよ。尤も、通信がそれほど発達していないから、ギルド全域に届くまでは非常に時間がかかる。それはご了承願います」


「うん」


元々数十年をかけて探す予定だったのだ。1年2年程度はどうってことは無い。


「さて、ネラ君の目的もルーン魔術の事も聞けたし、そろそろ眠ることにしようかな」


「ん」


「明日から仕事だ、しっかり体力を温存してくれよ」


「大丈夫」


僕がそう頷くのを見たキリエルは立ち上がって尻を叩いて汚れを払うと、屋根の上から消えていった。


赤闇の景色を一瞥して、同じように僕も屋根の上から降りて部屋に戻る。


明日は、初のギルド依頼である。



☆☆☆



「ふわぁ……」


今日も今日とて洗濯日和の晴天だ。燦々と照らす光が木窓から入り込んでいた。


さっさと着替えて身支度を整えると、部屋から出る。確か朝ご飯は宿屋で出して貰えるはずだ。キリエルともそこで合流できるだろう。


食堂に入ると、既に様々な人が食事を摂っていた。ここの食堂は宿泊者でなくとも使えるらしい。


食事を見回してみるとキリエルを発見したので、近付いて挨拶する。2人掛けのテーブルに座っているようだ。


「おはよ」


「やあネラ君、おはよう。君を待って居たんだ。座るといい」


キリエルの言葉に頷いて、向かい合わせになったもう一方の椅子に腰掛ける。テーブルの上には、既に無数の食事が並べられていた。


「好きな物を取ると良い。足りなければ他の頼んでも構わないよ、ここも僕が出すからね」


「ううん、充分」


テーブルの上の飯を眺めていると、ふとライラにオススメを聞いたのを思い出した。


「ピッチャンテ、だっけ」


「ピッチャンテなら、これだよ。凄く辛そうな見た目はしてるが、見た目よりずっとマシな辛味がある。この国の名物だよ」


差し出されたピッチャンテと思われるスープは、それはそれは真っ赤に染まったスープだった。しかし辛さを感じさせるような香りでは無く、美味しそうな香りがスープからは漂っていた。


「これが。…いただきます」


小さく、僕は手を合わせてそう呟くと、ピッチャンテを手にとって、スープを啜った。




食事を終えて食堂を離れた僕らは、それから数分の休憩と予定の確認を経て、この街のギルドに来ていた。


ギルドの外装は首都と比べるとこじんまりとしていたが、この程度の街ならこれで充分なのだろう。


中はティルダが言っていた通り、首都のギルドの構造ととほぼ変わりない。


「ここのギルド長に話を聞きに行こうか。彼からこの依頼がこっちまで回ってきたわけだし、情報を持っているだろう」


「ん」


「そうそう、ネラ君。年寄りが変態行為しようとしてきたら制裁加えて良いから。ここではそれが許されてる」


「は?」


首を傾げた僕だったが、キリエルはそれ以上を話さずに最奥の部屋に向かって歩みを進める。


なんだか嫌な予感がしたので身体強化を全身に施しながら彼を追った。


最奥の部屋に辿り着くと、キリエルが扉を叩いた。…む?


「爺さん、いるかい?」


「ここじゃよ」


ジジイが居た。


より具体的に言えば、僕に頭を鷲掴みにされ床に叩きつけられているジジイが居た。そんな状態ながらハッキリとした口調でキリエルに答えている。身体強化をしているようで、叩きつけられてもダメージは殆ど無いようだ。なんなんだこの人。


ほぼ反射的な行動だったが、どうやら背後から僕の胸を触ろうとしたらしい。常時展開している探知の魔術がそれを教えてくれたので、即座に取り押さえたのだ。


今の僕の身体の胸は、年相応にそれほど大きくはない。とはいえ今の格好であれば相応には有るのはわかるだろう。しかし、前世の旅での話を見るに、この世界は巨乳至上主義だと思っていたが──


「小さくても大きくてもおっぱいはおっぱいじゃ!おっぱいに貴賎なし!」


「同志か」


まさかこんな異世界にもその感覚の持ち主が居るとは思わなかった。


「おお、おお、分かってくれるか!なら触らせてゲゴォッ」


「それとこれとは話が別」


ジジイに触れさせる胸は無い。僕の言葉に嬉々とするジジイを、再度床に叩きつける。ふさふさの白髪が目につくが、髪を毟るのは同志な為止めておいた。


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