共通視〝黒〟の存在
《弥彦》
あれを“視た”のはいつだったか。
俺がいつものようにギャルゲーの新作を買いに、週末自転車飛ばしてゲームショップに寄った帰り道。
なんだか背中がヒヤッとして、回りを見渡すと、何か変な感じがして……それで空を見上げたんだ。
そして、それを“視た”んだ。
──でっかい鳥の影を
《ヘレ》
わたしはアイスが好き。色んな味のアイスクリーム。
一番好きなのは、『14mix』のアイス。
7種類の味があって、どれも二種類の味がミックスされているアイスが売られている。だから『14mix』。
自販機だけに売られているから外に買いに行かなければならないけれど、それだけの価値がある。
わたしは『ヴァニラ&ショコラ』のミックスアイスのボタンを押して取り出し口から取り出す。
キャップを外して裏側に付いていたカスを舐める。
そこで何か嫌な感じがして空を見上げた。
そして“視た”のは
──大きな蛇のようなうねった影だった
《枝凪》
鳥でも蛇でもない、それを“視た”のは授業をサボって屋上に居た時だった。
空を覆う、生き物とは思い難い存在が姿を顕してそこに有った。
〝それは〟自由自在に空に滞空してここに有りとでも言うようにでかい影として存在している。
「……姿を現したわね。鵺モドキ」
あたしはそれを“視た”瞬間に自分の気配を消して、そこから立ち去った。
× × × × ×
《弥彦》
世界が一辺したのはあの、鳥みたいなでっかい影を見て間もない頃だ。
突然黒い霧が国中を巻き込み、至る所に化け物が現れた。
最初は狼や猿などの獣の化け物だったり、他にも日を追うごとに虫や節足動物の化け物、花や木の植物の化け物まで現れ始めた。
世界中は大騒ぎした。それもそうだ。
平穏で平和だったのがいきなり意味のわからないものに振り回されているのだから。
俺はその時何をしていたか。
そんなの決まっている。ギャルゲーだギャルゲー。
それ以外にねーっつの。有り得ないだろ。そんな狂気極まった出来事が現実になるなんてさ。
どこぞのRPGの世界じゃないんだからさ。
だからそのニュースをネットの掲示板で見た時は毒気吐いたもんさ。
「そんなのは有り得ない」
ってね。
だがしかし、ある時気付いたよ。何かがおかしいと。
何がおかしいのか振り返ってみるのね。
そしたらわかった。
家の中がヤケに〝静か〟なんだ。
物音一つしない、静寂に包まれた感じ?
別に一人暮らしならおかしくはないね。自分以外に誰とも住んでいないのだから。
だけど、俺は母と妹との三人暮らしで、今日は休日で家にみんな居るはずなのに……これはおかしい。そう思った。
俺はパソコンを点けっぱなしにして部屋を出て、まずは妹の部屋──いない。次は母が居るはずのリビングに行く為、辺りを見渡しながら一階に降りて行った。
異常のない玄関を過ぎ、リビングの扉のノブを掴んで回す。
ここまでは何もなかった。
そして見た。
──何者かに殺されている妹の姿を
俺の記憶はここでシャットダウンされた。