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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第九章【仮面の商人とカナンサリファの狐】
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「え? 領主様から招待状が……ですかぁ?」

 翌日の朝、食事中にハインハイルがそんな話を突然にしてきたのだ。

「ああ、今朝早くに領主様付の電報係(メッセンジャー)がこの手紙を届けて来てな。中身を読んで私も驚いたんだが、『今晩の晩餐会に是非』との仰せなんだよ。

3人分の招待状がこの通り入っていてなぁ~ワッハッハ! うちのギルドも随分と有名になったモノだよ♪」

 ハインハイルはその手紙を見せ、中に入っている3枚のカードの様なモノを出し得意気に見せていた。

「だけど、どうしてまた……急に?」

「さあ~てなぁ? それは私にも分からないが。招待されたからには、どの道、行かない訳にもいかんだろう?

折角の領主様からのお誘いなんだ。精々顔を売って、商売の幅を広げようや♪ なっ?」

「ええ、折角の機会ですからね。その様に致しましょう」

「あ、はぁ……」

 ここの領主様といえば、ホーリング家だ。というコトは、場合によってはあのリリア様と顔を合わせることになるのかもしれない。

 そう思うと、どうにも乗り気のしないアヴァインであった。思わずため息が出てしまう……。


  ◇◇◇


 この日の夜、カナンサリファ領主の館はコークスがもたらす明かりで輝かしく照らし出され。ここを訪れる客をもてなし(はな)やいでいた。

 招待され訪れた人々が次々と屋敷の門を通り、ここの主であるスティアト・ホーリング貴族員に挨拶を行っている。旧貴族の者や地元で有力な商人など、多彩な面々がこの領主館の見事な庭園に集まり。そこに並べられた豪華な料理とワインを談笑しながら楽しげに頂いている。


 ハインハイル、ミカエルと共にこの会場へと到着したアヴァイン・ルクシードは、いつもと同じ白銀の仮面とこの様な場に相応しい金銀の刺繍が少しだけ入った飾り気のある服装と帽子姿で現れ、馬車を降りる。そして、白銀の仮面をまるで隠すかのように深く被り直し顔を俯かせ、その会場内へと向かい他の2人と共に招待状を見せ入ろうとする。


「すみませんがそちらの方、少々お待ちください」

 屋敷の中へ入ろうとするアヴァインを、招待客をチェックしていた男の一人が止めて来たのだ。

「申し訳ありませんが、その仮面は一体……? 外して頂く訳には参りませんか」

「……」

 アヴァインを初めて見る人は大抵この仮面を見て不審がる。こういう晩餐などに呼ばれた時は、特にそうだ。警戒してなかなか中へは入れて貰えない場合が多い。最近になってようやく、属州国コーデリアでは名に併せ顔も知れ渡るようになり、それほど困らないようになってはいたが。このカナンサリファでは流石にそうは行かなかったようだ。

 またか……と思う気持ちが先に表情にも出てしまう。


「ああ、ハッハッハ!

コイツは顔に怪我を負っていましてねぇえー。返って周りの者に不快な思いをさせるといって、この様な仮面を付けているんですよ。

まあ、そんな訳なんで勘弁してやって頂けませんかねぇ~? 旦那」

 先に入ろうとしていたハインハイルさんがわざわざ戻って来て、気を使いそう言ってくれたのだ。

 その隣には、ミカエルさんも居る。

「怪我? そんなにもヒドイ怪我なのですか?」

「ええ、ワタシはそんな気にするほどのモンじゃない、と言うんですがねぇ~。なにせ当人が大変気にしておりまして……」

「気にして……と言われましてもねぇ…。こちらとしては、このまま通す訳にもいかないですし……」

 それを聞いて仕方な気に、ハインハイルさんは『少しだけ、その傷を見せてやれ』と目配せをしてきた。それで仕方なく、アヴァインは仮面の下の方を少しだけ持ち上げ、相手にその傷を見せる。

 その傷の一部を見た守衛の男は、その更に上の方まで続くだろう傷を創造して「ああ、もういい!」と顔を歪ませ中へ入って構わないと了承してくれた。

「こりゃどうも、ありがとうございます」

 それでどうにか無事に中へ入ることが出来た。

 ハインハイルさんには、つくづく頭が上がりそうにもないよ。アヴァインはそんな思いを感じながら、一緒に領主の館の門をくぐり入る。


  ◇◇◇


 晩餐の会場は、この屋敷の広い庭園全体を使って行われていた。

 早速、この地の主であるホーリング貴族員に挨拶を……と思うが、どうにもその順番は直ぐに回って来る気配がなかった。沢山の人々に囲まれ、談笑をし。それが途切れもなく続いている様子だった。

 ホーリング貴族員は特に女性に人気があるのか? 多くの婦人から声を掛けられ、その度に次の者は待たされていた。


「やれやれだなぁ……。女性は一度話を始めると長いから、こりゃ挨拶するのにも相当苦労するぞぉ~」

「その間に他の方への挨拶をしたいところですが、それはそれで失礼にあたりますからねぇ……」

「あ、はぁ……」

 挨拶をといっても、何も縦一列に並び挨拶をしている訳ではない。皆、近くへとそれとなく行き。会釈をしながら身分と名前を伝え、ホーリング貴族員はそれへブランデーの入ったグラスを軽く持ち上げ応えている程度が殆どである。ホーリング貴族員が声を掛けるのは、特に限られた相手ばかりであったのだが。その限られた相手というのが大変に多く、とても人脈と人望のある方だということが伺え知れる。

 皆笑顔で、そのホーリング貴族員の話を聞いたり話したりしていたからだ。


「まあ、いきなり新顔の我々に声を掛けてくれるとも思えんが……なんとも気さくそうな御仁のようですなぁ~」

「ええ、どこの貴族もそうですが。声を掛けて貰えるのは、ようやく顔を覚えて貰えるようになってから、というのが通例ですからね。

例えお人柄がどうであれ、余り期待はしないで置きましょう」

「顔……かぁ…」

 そういう意味では、自分はどうしようもないなぁ~、とアヴァインは吐息をつく。

 傷がどうこう、という前に自分はお尋ね人である。この仮面を外す訳にはいかないからだ。

 しかし、この仮面の姿というのはやはりどこへ行っても目立ってしまうらしく。そんなアヴァインの不思議な仮面の姿に、周りの者たちが次第に興味を示し始めていた。

 と、その時。

「大変に失礼ですが……ひとつ、お尋ねしてもよろしいですかな?」

 会場に居た一人の30歳半ばほどの紳士が突如アヴァインへ横から声を掛けて来たのだ。

 アヴァインはその男の方を向き、「あ……はい」と思わず確かめもせずに答えていた。





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