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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第九章【仮面の商人とカナンサリファの狐】
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―93―


「《皇帝任命制度》……ですか?」

「ああ、数日前に首都キルバレスの最高評議会で可決されたホットなニュースだよ!」

 夕食時、ハインハイルが首都キルバレスでの出来事を話題として意気揚々と振ってきたのだ。

「噂には聞いていましたが……思っていたよりも早い可決でしたね」

 それは…確かに。

 ミカエルの言葉に、アヴァインは力強く頷く。

 このカナンサリファの支部としギルドの拠点とした屋敷の一階には、大きな食堂がある。この屋敷は元々上流貴族の邸宅だったそうだ。なるほど、それらしい仕様を所々に感じさせる。

 この食堂の天井から吊り下げられた見事なシャンデリアも大層な代物で。無位の商人の屋敷にしては、少々違和感が感じられるほどに豪華なものだ。

 アヴァインとミカエルはこの食堂で、十数名は座れるだろう長いテーブルに座り食事を頂いていた。

 次々に運ばれてくる料理なども、この屋敷の雰囲気に合わせてなのだろうか? ハインハイルが専属のキッチンメイドまで雇い入れ、作らせ。その豪華な料理を、多数のハウスメイド達がにこやかに運んで来る。

 しかも屋敷管理人(ハウス・スチュワード)までも雇っていた。ついでに言うと何故か皆、女性……。

 それも、見た目を重視したとしか思えないほど、綺麗&可愛い揃いばかりであった。

 どう考えてもこれは、ハインハイルさんの趣味が入っているとしか思えない様子で……。この支部の様子をギルドマスターのブリティッシュ・オルベニオが見たら、さぞや怒ることだろうなぁ?と今からでも十分に予想出来る程、徹底された趣味がかなり入り込んでいる有り様だった。

 流石に屋敷管理人(ハウス・スチュワード)には、40代の経験豊かな女性を雇い入れていたが。あとは大体、20代前半や10代の若い娘ばかりなのだ。

 まあ、別にいいけど……さ。

 自分としても、目の保養になるしね♪


 運ばれてくる料理はどれもこれも豪華で、しかも美味しい。食器もそれなりのモノが用意されていた。

 一体、これらのモノにいくら使ったんだか? 恐らくはワインも上等なモノが揃えられていたのだろうが、アヴァインはいつもの様にぶどうの絞り汁を可愛い笑顔を見せるハウスメイドの一人から優しく注いで貰い頂いていた。

「ハハ。これはどうも、ありがとう」

 そのハウスメイドは、アヴァインのコトが気に入ったのか? 数歩ほど下がったところで常にニコニコとした愛想の良い表情を見せ控え。他のメイドに、その場所を決して譲ろうとはしなかった。

 この三人の中でアヴァインだけが唯一の独身である、というのも理由としてはあったのかもしれない。

 ハインハイルさんが、「そうなんじゃねぇのかぁ?」と言ったからだ。

 つまりは、玉の輿を狙ってのことではないか……とのコトらしいけど。実際はどうなんだろうね??

 因みに、コージーたち使用人はこの後、別の小部屋へと移動し。そこで食事を頂く。つまりは、この私を含む3人以外はこの立派な食堂を使わないのだ。

 執事のハマスが言うには、だ。そういう上下の規律を教えるのも教育の一環である、とのコトだった。

 当のコージーの方はお腹をぐぅ~ぐぅ~と鳴らしながらであったが、食堂の脇で執事のハマスと共に習い大人しく控えていた。

 最近では、それなりに様になって来ている気がする。

 やはり人は生まれではない。つくづく教育次第なんだなぁ~、と考えさせられてしまう見事な結果であった。


「早ければ今月中にも、初代皇帝が決まる見込みなんだそうだ。

それに併せ、この国の名称も変わるらしくってなぁ~」

 ハインハイルが引き続き口を開いていたのだ。

「名称が……どのように変わるのですか?」

「ああ、《共和制キルバレス》を改め。《帝政キルバレス》なんだとよ」

 その名称を聞いて、アヴァインとミカエルは驚き互いに顔を見合わせる。

「実に威勢のいい、名前ですね……」

 ミカエルさんが吐息混じりでそう言ったのだ。

 食事をする手が、どうしても止まってしまう。

「帝政……というコトは、今の議会制はどうなるのです?」

「ああ、それは俺も気になって聞いてみたらよ。そこはこれまで通り、らしいわ」

「ほぉ……」

 ミカエルさんはそれを聞いて、少し安堵をした様子だ。

「しかし、先々では廃止されるんじゃないかぁ? って噂も、同時に耳にしたよ」

「はい……し…」

 それには流石のミカエルさんも、驚いた表情を見せる。アヴァインも同じくそうだ。

「まさか、皇帝を決め。更にその系統の者に『世襲化させる』、というコトですか??」

「さぁ~て? そこまでやるかどうだかは知らんがね。今は、ただの噂の段階だしなぁ~」

 ハインハイルさんはそこで肩を竦めてみせ。再び口を開いた。

「もしかすると、ディステランテ・スワートという人物像がそういう風評を引き起こしている、って可能性だってあんのかも知れねぇ~しなぁあ~?

あ、初代皇帝はそのディステランテ評議員だろう、って噂もついでにあったモンでなぁ~。今のはつまり、アレだ。

俺なりに、そう感じ取っただけのコトで、深い意味はなに一つない。まぁあ~気にしないでくれよ。

俺の勘は、普段からよく外れるしなぁああ~ワッハッハッハ♪」

「…………」

「…………」

 アヴァインもミカエルも互いに顔を見合わせ、そんなハインハイルを見て苦笑している。


 それにしても……確かに、あの男ならやりかねないコトだ。

 アヴァインはそう思い、それだけはなんとかして阻止したい、と再び思う。





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