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 アクト=ファリアナへ到着したアヴァインは、再び荷物を運ぶ為に人を雇い。その荷物を、今晩泊まる宿まで運んで貰った。

 お金は、その宿の女将に州都アルデバルで流行の服を見せ、低価格ながら買って貰いなんとか出来、ホッとする。コージーにお金を上げたのまでは良かったのだが、自分が今、無銭人であることをつい先ほどまですっかりと忘れていた。つくづく自分は迂闊(うかつ)者だなぁー、と思わず吐息をつく。宿屋の女将さんが買ってくれたから良かったものの……だ。

 コージー達が乗る駅馬車と別れる際、アヴァインは笑顔で手を振り、コージーも駅馬車の屋根の上で両手を大きく振り振り振って笑顔を元気よく見せてくれた。また機会があれば、会うこともあるだろう。あの少年コージーの笑顔でなんだか気持ちが嬉しくなれたから、アヴァインの思いとしては寧ろ感謝だった。今思い出しても、気持ちが穏やかになれる。


 このアクト=ファリアナには、一週間ほど滞在する予定である。その間に、この衣服の品物は完売し。それから再び仕入れ、また州都アルデバルへ移動して売る。当面は、これを繰り返すつもりだ。

 

 早速、明日から品物を並べるのに適した場所を探す為に出掛け、3ヶ所ばかり見つけた。 それから自分が買った品物の相場を見て回り、メモをする。

 この相場なら、まあまあ利益が得られそうだな。良かった。

 ふと見上げると、このアクト=ファリアナの丘の上に白く美しい城が見える。

 アヴァインはそれを見て、雑貨屋で買った帽子を深く被り、(うつむ)いて宿へと戻ることにした。それから軽く食事を済ませ。借りた部屋へと上がった。


 正直、未だに、今後どうしてゆくのかで心の迷いがあったのだ。

 当面の喰い繋ぐ為の(かて)は、今の方法で良いとして。ルナ様の仇であるディステランテ評議員の件。これをなんとかしたい、という思いが未だに根強く心の中にある。 

 そして、あのままケイリングに預けたままとなったシャリル様の件……シャリル様が不自由な思いをしてなければ良いが……と気になりもするが。無闇に自分が近づけば、メルキメデス家に迷惑を掛けることになる。恩を(あだ)で返す様な真似だけは出来ないし。やりたくもない。そう思うと、どうしても足が重たくなってしまうのだ。

 ルーベン・アナズウェルは、『力になれ』と言っていたが……今の自分がオルブライト・メルキメデスの傍に居た所で、幾ら考えても迷惑なことばかりだろうとしか思えなかったのだ。

「シャリル様の事は……ケイなら、きっと良くしてくれている筈だろうしな」

 アヴァインはそう思い、あのケイなら間違いないさ、とポツリと零す。

 問題は、ディステランテ・スワート評議員の方をどうするか、だった。

 ディステランテ評議員の周辺や首都キルバレス市内は、厳重な警戒態勢で近づく事さえも今は難しいだろう。未だに続くこのアクト=ファリアナ内の衛兵の巡回や、手配書を見ても想像が出来る。やはりもうしばらく、ここで喰い繋ぎ、今は時を待つしかないのだろうか……。

 ぶどうの搾り汁を一口飲み、宿屋の窓辺から月明かりに照らし出される城を遠目に眺めながらアヴァインはふとそう思い、吐息をついていた───



 アヴァインがアクト=ファリアナでそうしていた頃。ケイリングとファーは、州都アルデバルに居た。

「ちょっと、ファー! アヴァインがどこにも見当たらない、ってどういうコトよ?!」

「そう、言われましても……」

 ファーとしても困ってしまう。

「アヴァインは、このアルデバルに行く、って言ってたんでしょう? だったらどうして、居ない訳??!」

 それは、こっちが聞きたいくらいだ。

「アルデバルへ行く、と言ったのは確かですよ。しかし、四方八方探させましたが、見当たらないのも事実なんです」

 昨日の夕方から、今日の夜……つまり、1日半も掛けて『見つけた』という報告が未だにファーの元には届いていなかったのだ。捜索人数は15人で、5組に別けて探させ主立って所は一通り捜索済みである。

 アヴァインは、『ここでしばらく商売でもやって、生計を立てているよ』と笑いながら確かに言っていた。居るとしたら、目立つ所で商売をしている筈なのだが……まさか。

「明日も引き続き捜索はさせますので、もうしばらくお待ち下さい。

それから私は明日、役所の方へ一度行ってみようかと思います」

「役所へ?」

 このアルデバルの都市中、アヴァインの手配書が至る所に貼られてあった。まさか、とは思うが……念の為、明日、確認してみたが良さそうだ。

 ファーはそう考えたのだ。実際には、アヴァインは早々に仕入れた商品を完売し、アクト=ファリアナへ戻っていたに過ぎないのだが。

「……そうね。だったら私も、一緒について行くわ!」


 アヴァインが関知しない所で、話がなにやらどんどんと大袈裟に膨らんでいたのである。




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