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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第五章【新たなる道への旅立ち】
62/170

―61―


 ───ダン☆


「それはどういうコトだよ、ファー!!」

 翌日、朝食に温かなコーンスープに白パン。それからチーズに、果物とぶどうの搾り汁を頂いたあと。今後の事について、ファーと話し合いを始めていた。が、ファーが最初に言い出した言葉が「アクト=ファリアナへ行こう」というモノだったのだ。そんなの納得出来る訳がない。

「ファー! 君は確か、言ったよね?『機会はまた、時期に来る』って。なのに、ここを離れたら、その機会も何も叶わなくなるだろう! 違うか?!」

 そうだ。ここを……キルバレスを……ディステランテが居る、この街から離れる訳にはいかない! 離れていては、その機会にも恵まれなくなる。それでは駄目だ。困る。

 そう思い言うアヴァインを見て、ファーは吐息をついた。

「言っちゃ悪いけどな、アヴァイン。今のキルバレスは、非常に厳しい厳戒態勢の中にある。ここが、ルーベン・アナズウェルさんの倉庫だから、それほどの心配もなく過ごせているけどな。一歩外へ出たら、街中、お前の似顔絵が描かれた手配書だらけだよ。

街を巡回している衛兵の数だって半端ない。しかもあれ以来、ディステランテの周りには常に10人もの衛兵が身辺に張り付いて警護している。近づくことさえ、今はとても無理だろう」

「……だからって、ここを離れたら。それこそ無理になる!」

 ファーはそこで、手にしていたワインのビンを一口飲み。ドン!と置き、こちらを睨み、口を開いた。

「そう、我がままばかりを言うなよ! いつまでも、ルーベンさんに甘えて、ここに居続ける事が出来ないことくらい、お前にだって分かってるんだろう?

もし、衛兵がここへ踏み込んで来て、見つかりでもしたら。お前はどう、責任を取るつもりなんだよ?」

「……」

 ファーの言う通りだ。そういつまでも、ルーベンさんに甘えてばかりも居られない。少なくとも、ここからは早めに出た方が良いだろう。

 そう思っていると、ファーの背後にある屋根裏部屋の入り口である床が上へ持ち上がり、その下から12・13歳くらいの男の子が顔を出した。

 先ほどから自分が1人興奮して物音を立てていたので、それに気づいてこの家の子が上がって来たのかもしれない。

 そう思っていると、次に30半ばくらいの髭を生やした体躯の良い男が顔を出し「お邪魔するよ」と言い、この屋根裏部屋へと上がって来たのだ。

「ああ、これはルーベンさん」

 ルーベンさん……? では、この方が……。

「あーえー……と……兎に角、紹介するよ。この方が、この家の主であるルーベン・アナズウェルさんだ。

そして、この子はルーベンさんのお子さんで、ついこの前13歳になったばかりのルシアンくん」

「ルシアン・アナズウェルです! よろしくね、お兄ちゃん♪」

「あ、どうも……初めまして、ルシアンくん」

 なんとも元気で明るい、快活そうな子だ。

 それとは対照的に、このルーベンという人は、カルロス技師長に雰囲気こそよく似てはいるが、実に油断のない鷹の様な鋭い目つきをしている。

「ルーベンさん、初めまして。この度は大変、お世話になりました。私の名は───」

 そこで名前を告げようとすると、ファーが急にそれを遮って来た。

「あー! コイツの名は、あ……アーザイン。そう、アーザインっていいます!」

 自分が『これは、どういうコトだよ?』って顔を向けると、ファーはウィンクをしていた。よくは分からないが、何やら事情があるらしい……ここは合せて置くのが賢明だろうな?

「えと……改めまして、この度は大変お世話になりまして、本当にありがとうございます」

 アヴァインがぎこちなくそう言い、軽く頭を下げると。ルーベンは小さく笑顔を見せる。

「いやいや。私はただ、ケガ人を介抱した、ただそれだけの当たり前のことをしたに過ぎないのでね。気にされることは何もない」

 あ……なるほど、そういう事か。表向きにはそうして置けば、それほどの問題もない訳だ。だから敢えて、名は伏せた訳か。それでルーベンさんは、嘘をつかないで済む。ファーもなかなか考えたモノだな。

 アヴァインはそう理解し、ファーを見て感心する。



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