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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第四章【輝かしくも楽しい思い出と……別れ】
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 ケイリングと別れたアヴァインは、この共和制キルバレスの最高評議会議事堂であるパレスハレスの敷地内へと走り向かっていた。その門を潜り抜け様とするディステランテ評議員の乗る馬車に追いつく為にだ。

 ディステランテ評議員の乗る馬車は、今、丁度その門を通り抜け。その前後を、4騎の衛兵が騎乗し警護をしている。

 アヴァインはそのディステランテの馬車を目前にし、スラリと剣を抜いて、普通の者から見れば無謀としか思えない厳重な警護中へと切り掛かり向かいながら()えた。

「ディステランテ───!!」


 ───ガシッ!


 馬車の扉に剣を突き刺し、それは根元まで突き刺さっていた。その中で動揺顔を見せるディステランテの顔が奥に見える。どうやらその剣は、ディステランテの体には届かなかったらしい。だが、その隣に座っていたアナハイトのキルク・ウィック貴族員は痙攣した様に体を数度ほど跳ねらせ、間もなく血の泡を口から吹き出し絶命していた。

 背が低く、見え難かったが、ディステランテ評議員の隣に座っていたらしい。

 アヴァインはその剣を引き抜こうとしたが、簡単には抜けなかった。

 仕方なく直ぐに、馬車の扉を強引に開け様とするが。そのアヴァインに対し、衛兵の一人が長剣の切っ先を突き付けて来たのだ。

「アヴァイン、お前ッ! 気でも狂ったのか?!」

 自分の名を知っている? 誰かと思い馬上の男の顔を見上げると、ガストン・オルレオールだった。よりにもよって、こんな時にか。

「邪魔をするな、ガストン!

この男はな、ルナ様を……ルナ様を殺した奴なんだ!」

「───なにッ?!」

 ガストンがそれで動揺している間に、アヴァインは馬車の扉を開け中へと入った。が、それに慌てたディステランテは反対側の馬車の窓へ無理やり体を入れ、挟まってジタバタとしていた。それは実に滑稽な有り様だ。

 そんなディステランテの体を両手に掴み、馬車から引き摺り出し、睨む。

「ま、待て! な、何かの間違いだ!! ルナ殿を殺すなど、有り得ん!!

私は、その様な極端な指示など出してはおらん!! 信じてくれ!」

 そんな言い訳をするディステランテを軽蔑めいた目でアヴァインは見下ろし、キルク・ウィックの持ち物であるらしい飾り気の多い剣を、馬車の中で息絶えもう動かぬ彼の腰から何の迷いも無くスラリと抜き取った。

「ヒッ───!!」

 ディステランテは這い蹲り、逃げようとする。

「そこまでだ、アヴァイン!」

 そんなディステランテに止めを刺そうとアヴァインが剣を持ち直すと、ガストンがそんなアヴァインの首元に剣を突き付けて来たのだ。

「だから、邪魔をするなと言っただろう! ガストン」

「そうはいかない。

どんな理由があろうとも、ここでの事件を見逃す訳にはいかないんだ。悪いがな。これが俺の、仕事なんだよ。アヴァイン」

 その表情は、いつもの彼らしくもなく硬く、決意に満ちていた。

 アヴァインはそれを見て、吐息をつく。

「そうか……なら、仕方がないな!」

 アヴァインは上体を反らし、その剣先から離れると。体勢を整え構え、剣を横へ大きく払った。

 ガストンはそれを見て、踏み出しそうになる体を強引に止め、慌てて退がり、冷や汗をひとつ落とす。

 今のでうっかりと前へ一歩でも踏み込んでいたら、腹を切られていただろうからだ。

「お前……見掛けによらず、やるじゃねぇの。───てか、ちっとは遠慮しろよ!」

「生憎と、そんな余裕はないんでね!」

 アヴァインはその周りを、他の衛兵2人から挟み込まれていたのだ。

「頼むからガストン、今直ぐにそこを、どけてくれ!」

「だから、それは……無理な話なんだよ───ッ!」

 ガストンは剣を上から振り下ろし、アヴァインはそれを剣を横にして受けた。


 ───カキン☆


 それを受けたアヴァインはそのまま剣を横へ滑らせ、剣の柄をガストンの腹部に当てようと狙うが。それをガストンは読んでいたのか、見事に交わされた。しかも、ガストンは振り下ろしていた剣先を退がりながら今度は振り上げていたのだ。それに気づき、慌てて剣で受け止めようとするが間に合わず、その剣先がアヴァインの額を掠めていた。


 辺りに地が飛び散り、右目が……血で、もう前が見えない。

 その間にも、ディステランテは衛兵の一人から助けられその場を離れてゆく。

 アヴァインはそれを見て追い掛けようとするが、それを二人の衛兵が壁となり、その前にガストンも剣をこちらへ突き付け、進行を阻害していた。

「もう諦めて、観念をしろ、アヴァイン」

「……」

 右目が見えず、状況は悪い。だが、今のこの機会を逃せば、ルナ様の仇討ちが出来なくなる。ここで諦める訳にはいかなかったのだ。

 そう思い、アヴァインが無謀にも前へ踏み込もうとした、その時だ。


 ───バフン☆ ボフン!


 アヴァインの直ぐ足元で、何かが次々と爆発し、白い粉の様な物が周辺に散り、周りが何も見えなくなる。そんな中、それでも勇み前へ進み行こうとするアヴァインの腕を突如として仮面の男が現れ掴み、アヴァインを強引に後ろへと引っ張って来た。

「今直ぐに逃げるぞ、アヴァイン!」

「誰だか知らないが、邪魔をするな!」

「バカ! 機会はまた、時期に来る。

今は、命を繋ぐことこそが何よりも大事だろう。違うか?」

「……」

 言われてみると、確かにそうかもしれない。追う相手であるディステランテの姿は、すでに見失っている有り様だ。片目だけで視界も悪く、残された左目にも血が入り霞んでいて前方の様子すらハッキリとしない。

 アヴァインはそれで力んで抵抗していた体の緊張を緩め、それを見てその仮面の男は強い力で再び引っ張り引き摺るようにして連れ出していった。



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