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「イモ……?」
「イモ、ですか?」
それを聞いて、ルナ様はキョトンとして居られる。ケイリングも同じ様子だ。そりゃ、そうだろうなぁ……自分も未だに、サッパリなんだし。
「何でも……それがいつしか、この国の体を作る新たな体の一部となるだろう……との事で」
アヴァインがそう言葉を付け足すと、ルナ様はそれで急になにか納得いった顔をされた。
「ああ、なるほど……それはあの方らしい、実に深いお言葉だと思いますよ、アヴァイン」
「はぁ……あの、それは一体??」
「この国の一部となれ……つまりは、アヴァイン。カルロス技師長は、新たなこの国の体の一部にあなたがなることを、お望みだったのではないのかしら?」
「私が……ですか?」
「ええ、アヴァイン。あなたならきっと、そうなれると思うわ。だから、頑張ってね♪」
「はぁ……はい。まあ、そうですね。分かりました。頑張ってみます」
自信は、無いし……何をどう頑張れば良いのか、っていう方向性すらもよく分からないんだけど(汗)
何にせよ、自分の話はここまでにしよう……。
「それよりも……あの、フォスター将軍の件は、どうなのです?」
「ええ……」
ルナ様は、そこで流石に表情を固くしたが、直ぐにいつもの笑顔を見せてくれた。
「きっと今回の件、何かの間違いだと、私は信じております。
あの人は、そんな野心家ではなかったですものね?」
「はい。それについては、私もその様に思い、信じております」
アヴァインは直ぐにそう言った。
実際、あのフォスター将軍が……と考えると、謀反だなんて信じられないのだ。
そんな思いで強くそう言うと、ルナ様は嬉しげな表情を涙目に見せた。
「……ありがとう、アヴァイン。あなたがそう言ってくれるだけでも、何だか気持ち、ホッとするわ」
「あの……」
ケイリングだ。急に緊張した面持ちで、珍しいくらいに、真剣で真面目な顔をルナ様に向けている。
「わたしなんかが言っても、力ないし。頼りないのでしょうけど……。
わたしも、フォスター将軍のこと。信じてます!」
びっくりする位、前のめりにそう言い切っていた。
「ありがとう……頼りないとか、そんな事は決してないわ。ケイリングさん、本当にありがとう……感謝します」
ルナ様はそれで感涙し、「お茶を、淹れ直しましょう♪」と言って立ち上がり、この場を離れていった。
「え、と……急に、どうしたの? ケイ」
『らしくない』っていうと、アレだけど……ケイリングがルナ様に対してそこまで強く言ってくれるなんて思ってもいなかたったから、アヴァインは少し驚いていたのだ。
すると、ケイリングは小さく吐息をつき、言った。
「別に、どうもしないわよ。ただ、さ……」
「ただ、なに?」
「わたしもいつか、同じ立場になる事が『もしも』あったらよ。誰かに、嘘でもいいからさ。そのくらい強い言葉で言って欲しいって、思うんだろうなぁー……って感じたのよ。
そう思ったら、言わずにはいられなくなったの。たったそれだけの話」
「……そっか」
気は強いし、負けず嫌いで、怒りっぽいところはあるけど。ケイリングは本当に気持ちの優しい、とても良い娘だ。アヴァインは、そんなケイリングを改めて見て、微笑みを向けた
「ケイ、ありがとう♪」
それを受けて、ケイリングは顔を真っ赤に染め「別に……」とアヴァインには気づかれない様に窓の外へ顔を向け照れ臭げにしていたのである。




