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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第四章【輝かしくも楽しい思い出と……別れ】
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―51―


 それは……ケイリングがオルブライトの元へ行く、5時間程前の事である。

「アヴァイン、お久しぶりですね♪」

「はい、ルナ様」

 フォスター邸へ着くなり、アヴァインに気づいたシャリル様は、前みたいに「アヴァイン! アヴァイン♪」と嬉しそうにしてはしゃぎ飛びついて来たが。直ぐにケイリングの姿に気づくと、アヴァインから数歩離れ怒ったようにして『ツン!』として、また屋敷内の2階の自室へと引き篭もってしまっていた。

 そんなシャリル様に思わず吐息をつき。それから屋敷の方へと二人で向かうと、その玄関口でルナ様が笑顔で出迎えてくれたのだ。

 今は、リビングにある窓際のテーブルを3人で囲む形でお茶を頂いている。

「ケイリングさんも、お久しぶりですね♪」

「はい、ルナ様。お久しぶりです!」

 それを受け、ルナ様はそこでニコリと微笑む。

「それにしても……ごめんなさいね? シャリルにも、本当に困ったものだわ……

「ハハ……(汗) まあ余り、お気になさらないでください」

 フォスター将軍の件で、てっきり気落ちしているのではないか? と心配をしていたのだが。案外、元気そうで安心した。

 そう思うアヴァインの隣で、ケイリングは吐息をつく。

「まあね。嫌われてるの、わたしの方みたいだしさぁー。やっぱりわたし、来るんじゃなかったかなぁ?」

 見るとケイリングは困り顔に、そっと顔だけをこちらへ近づけそう小声で囁くように問うていたのだ。正直、返答に困ってしまう。

「いいえ、ケイリングさんが気にされることはないのよ。悪いのは全て、シャリルの方!」

 ケイリングの小声は、見事に聞こえていたらしく。ルナ様が慌ててそう言って来たのだ。

「あの()。ケイリングさんには(かな)わない、って自分でも分かっているものだから。ああして隠れて()ねてるの。

だから余り、気になさらないでね。あとで私の方から、キチンと注意しておくわ!」

 そう言って見せたルナ様の表情は、真剣そのものだ。そこまで気にされてしまうと、返って気の毒に思えてしまう。

 シャリル様に対しても、ルナ様に対してもだ。

 思わずケイリングと二人して、顔を見合わせ言った。

「いや……まあ、お手柔らかに」

「いいえ。今日ばかりはキチンと、言っておきます!」

 結構、いつものルナ様らしくないピシャリとした言い方だったから、再びケイリングと2人、顔を見合わせてしまったけど。これも(しつけ)の一環なのだろう、と納得をする。

「それで、このキルバレスへはいつ、戻られていたのですか? アヴァイン」

 ルナ様は話を変え、笑顔でそう聞いてきたのだ。

一昨日(おととい)の夕方です。

本当は昨日の内にでも訪ねたかったのですが……」

 少し含めた言い方をすると、ルナ様は思案顔をし、直ぐにこう返して来た。

「もしかして、カルロス技師長……の件、ですか?」

「あ、はい」

 相変わらず、勘のいい方だ、ルナ様は。

「カルロス技師長も、随分と苦労をされている様でした……」

「ちょっ、ちょっと! わたし、そんな話聞いてなあ───い!」

 ケイリングだ。そう言って、隣でちょっと()ねた様にして怒って、自分の腕を肩で「ちょっと、ちょっと!」とばかりに横へ数度押して来る。

「え? いや、だって。聞かれなかったから……さ」

「聞かれなかったなら、(なん)にも伝えてくれないの? 言ってくれない、って言うのぉ??! アヴァインってさぁー、そういう冷たい人だっけぇー?? だってそれってさ、普通にちょっとヒドくなぁーい?」

「ま、まあー。落ち着いてよ、ケイ。今はルナ様の前なんだしさ!」

「あ……(汗)」

 ケイリングはそれで、アヴァインの胸倉を掴んでいた両手をパッと離し。今更ながらお(しと)やかに、お茶なんかをわざとらしく(すす)っている。

 間もなく、それまでの出来事をポカンと眺め見ていたルナ様が「ぷっ♪」と吹き出し笑い出した。

「なんだかもう、本当に仲が良いのねぇー? お二人共」

「──!?」

「──!!」

 アヴァインとケイリングは互いに、頬を真っ赤にし、顔を左右に強く振る。

「なにも、隠すことなんてないでしょう? とても、お似合いよ♪ お二人共」

「え、と……ありがとうございます!」

「はぁ……そうですかぁ?」

 お似合いと言われても、別に、ケイリングとは付き合ってもいないので困ってしまうのだけど。

 そう思っているこちらを、ケイリングが『はぁ……そうですかぁ?』って、今のなによッ?! って不満気な顔を向け、明ら様に不愉快そうである。

「あの……ケイ? なにを怒ってんの??」

 正直、理由がよく分からない。

「なにを、って……もういいわよ! バカっ!」

 ケイリングはそう言うと、ぷいっ! 窓の外の方を向いて、間もなくハぁあ~……と吐息をついていた。

 どうして自分はこうも色々な人から溜息をつかれてしまうのだろう、と思うと。アヴァインもそんなことで思わず自分も溜息が出てしまう有り様だ。

 そんなこちらの様子を見て、ルナ様はクスリと笑んでいた。 

「それにしても……やはり、カルロス技師長も御苦労をなさっておいででしたか……」

「あ、はい……」

 それからアヴァインは、南東にある大農園での出来事を一つ一つ、二人に話して聞かせることにした。



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