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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二章【アクト=ファリアナの心友】
34/170

―33―


 それから、ここまでの経緯(いきさつ)を簡単に話し、今に至る。


「そうですか……コーデリア州へ。この〝方〟と」

「はい。まあ……急遽(きゅうきょ)そういう事になりまして……」


 今はリビングの大広間にて、窓からの眺めが良いテーブルを囲み、3人でお茶をしていた。

「あ、あのぅ~……」

 ケイリングが、隣でルナ様のことを気にしている。そういえば、ケイリングにはまだ、ルナ様のことを詳しくは話してなかったな。

「ケイ。この方はね、フォスター将軍の婦人で。私が普段から大変、お世話になっているお方なんだ」

「あ、え? あのフォスター将軍の!?」

「改めまして、よろしくね。ケイリングさん」

「あ、はいッ!! 改めまして、よろしくお願い致します!」

 流石のケイリングも、フォスター将軍の名には、頭が上がらないらしい。


「それにしても、私がお世話だなんて。それはちょっと、口が上手(うま)過ぎよ、アヴァイン。

いつもお世話になっているのは、私たち親子の方なんですもの」

「いやいや、そんなことはありませんよ」

 アヴァインのその言葉を聞いて、ルナ様はケイリングの方を微笑み見て言った。

「ケイリングさん。アヴァインはとても、頼りになるお人ですよ。大事にしてあげてね」

「あ、はいっ!!」


 はい、ってなぁ~……それ、本気で言ってないだろう? どんだけ緊張してるんだか。

「それにしても……あなたが遠くへ行ってしまうのは、ちょっと寂しくなりますね……」

「はぁ……どうも、すみません…」

「ちょっ、ちょっとぉー!」

 ケイリングが隣から、不機嫌顔にアヴァインの腕を掴み言ってきた。


「どうしてさ! そこで、あなたが謝ったりするのよっ!? 

そこは普通さ、『仕事ですから』とか『この方をお守りするためですから!』とかさぁー。言い様ってモンがあるでしょうにぃ!!」

 ……本人は小声でそう言っているつもりの様だが。今のは完全に、ルナ様にも聞こえていたみたいだ。ルナ様が口を押さえて、『失言してしまったかな?』と自身を思い、苦笑しておられる。


 それからそのあと、何かを納得された様な顔をルナ様は急に見せ始めた。

「そう、ね。アヴァインみたいな人と話していたら。誰でもそんな気持ちに自然となるのは、仕方ないのかなぁ……」


 ……それは一体、どういう意味なんだろうか??


「ケイリングさん。アヴァインってこういうタイプの人だから、ちょっと大変かもしれないけれど。アヴァインとは、これからもずっと仲良くしてあげてね♪」

「あ……はいっ!!」

 大変って……なにが大変なんだろうか……。ちょっと気になりはしたが、怖くて聞けなかった。あまり良いような意味には聞こえなかったから。



 それから暫くして、フォスター邸をあとにしようと馬車へと乗り込んでいたところへ。シャリルが飛び込んで来て、そのままの勢いでアヴァインに抱きつき言った。

「絶対。いつかわたしを迎えに来てよ、アヴァイン!! 絶対によっ!」

 少し驚いたが。アヴァインは間もなく、微笑み。


「……。はい♪ いつか必ず迎えに来ますよ、シャリル様」

 グスングスンと泣いてしがみ付くシャリルの頭を優しく()で、なだめながらアヴァインはそう言ったのだ。

 そうして、フォスター邸をケイリングと共にアヴァインは後にした。




 そこから貴族用の邸宅へと向かう馬車の中で、ケイリングは似つかわしくないほどに静かだった。

 なんか、あったのかな……? とアヴァインが思う間もなく、ケイリングはふいに窓の向こうを眺めたまま、こちらを見る訳でもなくこう聞いてくる。


「アヴァインがさ、好きだった、って人……もしかして、ルナさんじゃないの?」

「……え?!」

「やはり……ね。途中から、そんな気はしていたのよ。凄く綺麗だったし。くやしいくらいに……優しい人だったもの」


 くやしい、って……なんだよ、ソレ?


「ぅん……。でも、この事は他の誰にも言わないでくれよ。ルナ様にもシャリル様にも迷惑は掛けたくはないんだ」

「……わかってるわよ、そんなの。絶対に言わないから、安心をして。

わたしもルナさんは、人として好きになったもの。だからそれは、ちゃんと守るわ」


 それからケイリングは、吐息なんからしくもなくついて。パレスハレスの向こう側に沈む夕日を、(うつ)ろな瞳で眺めていたのである。




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