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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二章【アクト=ファリアナの心友】
31/170

―30―


 そんな思いでアヴァインを送り出したものの。何とも、ギクシャクとして頼りないものである。


 なによ。あんなにもギクシャクとしちゃってさぁ~……あんなので本当に、大丈夫なの?? 急に心配になって来たわ!


 ケイリングは結局、遅れてアヴァインのあとを気づかれない様についてゆくことに決めた。


 リリアのところまで、あとほんの5メートルといったところで。なぜかアヴァインは急に立ち止まり、吐息なんかついている。

 『なんでだろう?』と思い、体を斜めに(かたむ)けその表情を後ろから(うかが)ってみると。なんとも浮かない様子と来たものだ。


 こンのバカ! ここまで来て、なにを迷ってんのよッ!!

 リリアがさっきから、アンタが来るのを直ぐそこでずーっと待ってるのよっ!! 早く、さっさと行っちゃいなさいよっ。イライラするわねぇ──ッ!


 そう思うが、アヴァインはまだ一向に行こうとも動こうもしない。

 アヴァインとしては、単に心を落ち着かせていたのだが。その様子を見ていたケイリング的には、苛立(いらだ)ち感が増すばかりであった。


 ああ、もうー! こうなったらこの私が、コイツの背中を押して。(いきお)い付かせ、向かわせてやるしかないわねぇーっ!


 ケイリングはそんな頼りない様子のアヴァインを見て、そう決めた。

 そして直ぐに、行動に出る───!


 しかしそれは……不運・不幸としか言い様がない出来事の始まりでもあった。これはもう、神様のイタズラによる連鎖なのだと、ケイリングは後に思うほどだったのである。

 ケイリングがよかれと思い手をやりアヴァインの背中を『トン☆』と押すのと。アヴァイン自身が心を決め、『よしっ!』とばかりに歩き始めたタイミングがドンピシャリと合う。そればかりならまだ良かったのだが。アヴァインの直ぐ後ろに居る友人ケイリングに気づいたリリア本人が、手を振る為に腕を軽く上げ、ゆっくりと数歩ほど歩き近づいて来たことが同時に。信じられないことだけど、信じたくもないんだけど恐ろしいほどに重なったのだ。


 アヴァインはケイリングから、思わぬタイミングで後ろから押され、前のめりに倒れ掛かりながらもなんとか〝あるもの〟を両手に掴み押さえることで、倒れるのだけは踏み止まった。しかし、その〝あるもの〟とは……リリアの両胸であったのだッ!?


 リリアとしては、そんな思いもしない、予想さえもしない、いきなりな事態に。間もなく……腰を抜かしたかの様に、その場で(ひざ)を落とし、後ろに倒れそうになる。

 アヴァインはそんなリリアの腰へ慌てて腕を回し、支えてくれた……のまでは、ナイスフォローだから全くもっていいのだが。何故かその右手だけは、依然としてリリアの胸の上に乗っかったままだった。


「だ、だいじょうぶですか?! リリア様!!」



  ──ぶわきゃあッツ☆!!



「ぜんぜん、大丈夫なんかじゃないわよおーっ! こンの、バカぁあ──!!」

 近くにあったナンカで『軽く』そんなアヴァインを〝ぶんなぐり〟「おほほほほほほほほほほほほ♪」と、取り敢えずこのうすらバカタレを4階の人気(ひとけ)のないテラス(つまり窓の外)へと連れ出し。ケイリングはその場で思いの(たけ)、ズカズカドカドカ☆と蹴り踏み倒しまくってやった!


 そこで清々(せいせい)してテラスから出てくると。同じくらいのタイミングで、リリアはその身を起こしていて。まるで何事もなかったかの様に、静かにこの会場からそそくさと出て行ったのである……。


「あ!」

 声を掛けようとしたけれど、なんだか出来なかった。今は少し、一人にさせてあげよう……気持ちが落ち着いたあとで慰めたらいい。そうしよう。



 リリア……ホントに、ごめんね……。まさか、こんなコトになるなんて思ってもみなかったのよ……。



 ケイリングは、リリアに対する罪悪感から深いため息をその場でついていた。

 そして同時に、心のどこかでこの結果にホッとしているもう一人の自分が居ることに気がつき。それを感じてまた、そんな自分に対しため息をついてしまう。


 いやな()だな、わたし……。

 なんでよりにもよって、こんな(やつ)を……なんだろうか、と思いながらである。




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