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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二章【アクト=ファリアナの心友】
29/170

―28―


 これは驚いたなぁ~。それならば今の内に、リリア様のことについて色々と聞けるかもしれないぞ。


 アヴァインはそう思い、ケイリングを窓際へと誘った。その方が、周りを気にせずに落ち着いて話も出来ると思ったからだ。

 するとケイリングは何を勘違いしたのか、周りをキョロキョロと伺い見て、ニコニコと嬉しそうにしてついてくる。

 よく分からない()だなぁ……つくづく。


「で、なに? なに!?」

 窓際に着くや(いな)や、ケイリングが目を輝かせてそう聞いてきたのだ。

 何を一体、期待してんだろうね?

「リリア様って、どんな()?」


 そう聞くと、ケイリングはたちまちなんだか急につまらなそうな顔をして窓の外を見つめ、

「いい()よ。美人だし」

と急に素っ気なく、どうでもいいように言う。

「良い娘……それだけ?」

「優しいし、健気だし、大人しい娘」

「へぇー♪」

 少なくとも、ケイリングとは全然違うタイプの()みたいだ。よかった。それにしても……。


「そういえばさ。そのリリア様が、なかなかお()でにならないんだけど。どうしてか、知ってる?」

「……」

 そんなことを問うアヴァインを、ケイリングは呆れ顔に見つめてきた。


「……あなた、見た所。ここの指揮官クラスのクセに、そういうことには物凄く(うと)いのね?」

「ていうと?」

「もし、仮によ。リリアが初めっからこの会場に居て、他の男の人から声を掛けられたら、あなたはどうする気? その相手に、決闘でも申し込むの?」

「あ……」

 そういうことか。


「初めからこうして、私みたいに会場に居る若い子たちは、みんな。相手がまだ決まってないからなのよ。この意味、あなたにわかる?

リリアみたいに初めから相手が決まっている娘は、このあとこの会場が盛り上がってからようやく登場するものなのよ」

 それでか……長官が何度も『とにかく、リリア様を見掛けたら、直ぐに声を掛け、誘うんだぞ!』と言っていたのは……。そういう舞台裏の事情なんてよく知らなかったから、単純に〝気付いたら声をかければいい〟くらいに思っていたけど。これは意外にも、責任重大だなぁ~。

 取りあえず、会場を見回したが、まだリリア様らしき人は見当たらなかった。


「……まだ全然、大丈夫よ。心配しなくても。リリアが出てくるのは、まだ1時間くらい先なんだから。

そもそもがまだ始まって1時間も経っていないのよ。他の若い娘たちの都合だってあるんだし。あなたももう暫くは、のんびりとこの場の雰囲気を楽しんでいたら良いわよ」

 そういうとケイリングは会場の方を向いて、(うつ)ろな瞳でその中の様子を遠目に見つめている。

 どうもそう言ってる割には、全くケイリング本人はこの場に興味がなさそうな雰囲気なんだが。

 アヴァインは少しだけ気になったので聞いた。


「今の話からするとさ。お前も、相手がまだ居ないんだろう?

相手を探しに行かなくてもいいのかぁ?」

 そう言うとケイリングは、急にキッ!とこっちを見上げてきた。


 一体なんだよ??


「〝お前〟ってなによ?

私には、ケイリングって名前がちゃんとあるのよ!

大体さ! 初めは〝ケイリング様〟って、〝様〟付けにしてたクセに。どうして今は、〝お前〟扱いな訳ッ?! ねぇー!」

「あ……ごめん。

じゃなかった、申し訳ありませんでした! ケイリング様」

「………」


 ケイリングはそこで、深~く長~い吐息をついた。

「ケイで、もういいわよ。『様』も要らない。今更、なんだってのよ……ばっかみたい…」

 ば、ばかみたいってなぁー! 言い換えろ、って先に言ったのはそっちじゃないかぁー!

「リリアからいつも、『ケイ』って呼ばれてるの。だからあなたも、そう呼んでよ。これからは」

「別にいいけど、さ……いいのかぁ? それで」

「けどもヘチマも、あなた。リリアと一緒になるつもりなんでしょう? 

だったら今後、私との交流だって普通になってくるのよ。今の内から慣れといても、損はない筈でしょう? 違う?」

 目を(つぶ)って、淡々とケイリングはそう言うと。アヴァインを横目で真剣に見上げてきた。

 言われてみると、確かにそうだし。今度の奴は真面目で本当らしい。


「わかったよ、ケイ」

 それを受けて、ケイリングは軽く微笑んでくる。

 意外にもその表情からは可愛さを感じたのだから、不思議なものだよ。


「それはそうと、アヴァイン。

あなたはこの結婚を、どんな気持ちで受けたの?」

「どんな、って……」

 それは、ルナ様を守る為にだ、なんて言える訳がない。

「肖像画を見て、綺麗な人だなぁー……って思って。それでかなぁ?」

「……たったの、それだけぇ?」

「うん」

 少なくともこの部分については、本当だからなぁ~。

 ケイリングはそれを聞いて、吐息をつくと。

「なら……まだ可能性はあるのかな……」と小さく呟いている。


 可能性って、なんのことやら??


そうこう思っていると、急にケイリングはアヴァインの左腕に頭をそっと乗せて来た。

 『ちょっ!?』と思い、アヴァインは左腕を退けた。するとなんだかこちらをムッとした表情で見つめ、そらから次は体の方へとケイリングは頭を軽くコツンと乗せてくる。本人はまるで悪気はないみたいだけど、知らない者が見たら勘違いされちゃいそうだ。

 アヴァインは黙って『グイッ!』と、ケイリングの頭を元の位置くらいにまで押し戻した。


 そのアヴァインの対応に、ケイリングはたちまち不愉快そうな表情を見せる。

「なにもそんな、毛嫌ったことすることないでしょうーッ!!」

「毛嫌うとか、そういうコトじゃなくって。知らない人が見たら、勘違いしちゃうだろう!」

 それを聞いて、ケイリングはハッとし納得顔を見せた。


「あ……それもそうか。つい……思わずのことよ。気にしないで」

「気にするよ、流石に」

 本当にわからない()だなぁー……。いきなり何をやらかしてくるのか、予想が出来ないぞ。ほんとに。




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