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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第四部 第21章 【アヴァイン】
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ー11ー


 ガイデスヘルムの上院宿舎の2階で、アヴァインはベッドに横たわり休んでいた。

「ああ、運がない……」

「命があったんだ。運は良いさ」

「そうですよ。あの激戦の中です。命があっただけでも運が良かったと思わないと」

「それもそうだね……」

 医者から、暫くは出撃禁止と言われてしまった。足の筋肉組織が聖霊兵器の一撃で一部吹き飛んでいたのだ。当分歩くことも叶わない。

「まあ、当分は休養だな。ゆっくり休め」

「わかったよ」


 だが、それを許して貰えない情報がアヴァインの元に入ってきた。キルバレス北部の動きがまた怪しいというのだ。アヴァインには、直ぐに帰還して欲しい旨の内容が書かれてあった。


「どうする? まだここも解決していないが……」

「どうにかするしかないだろうね……」

 戦力的にはアヴァイン側が多かったが、今直ぐにワイゼル公国を倒すのは困難だった。ここは一時停戦し、時間を稼いで、北部の問題を解決する他ないだろう。

 アヴァインは早速、ワイゼル公に書簡を送り、5年間の停戦を締結した。そしてフォスター国王には、ガイデスヘルムの街の防御力を上げて貰うよう依頼する。

 二週間後、アヴァインは10000の軍を残し、首都キルバレスへと向かって出立した。ディステランテの居るワイゼルをそこまで信用していなかったからだ。いつ、5年間の停戦なんて破棄されるかわかったものではない。それほど信用していなかった。


 アヴァインは馬車での移動を余儀なくされていた。足がまだ使えなかったからだ。その為、行軍も緩やかである。


 4ヶ月後、アヴァインは首都キルバレスに到着した。首都はアヴァインの名前を歓声し、大喝采した。


 アヴァインは到着して直ぐに皇帝執務室に入り、情勢を確認した。

「それで、北部の情勢はどうなっているの?」

 聞かれたマルカオイヌ·ロマーニ評議員は肩を竦めた。

「どうもこうも、アヴァイン皇帝が帰還すると聞いた途端、大人しくなりましたよ。解決済みです」

 それを聞き、ファーは呆れ顔を見せている。


 その翌日、アヴァインはアクト=ファリアナへと馬車で向かった。そして到着しケイリングに抱きつき、そして聞いた。

「それで、うちの新しい可愛い子はどこだい?」

 それを聞いて乳母がアヴァインに抱き渡す。

「名前は、ミラーネ。お父様がそう名付けたの」

「そうか! ミラーネ、よろしく! 元気に育てよ」

 そんなアヴァインの傍に3歳くらいの男の子もやって来た。

「アルヴィンよ。アルヴィン、お父様は覚えてる?」

 アルヴィンは恥ずかしそうにケイリングの後ろに隠れた。

「……あれだけ元気活発だったのに、大人しくなってるね?」

「まだ馴れないだけよ。直ぐに打ち解けて、元気に振る舞うわ」

 それはケイリングの言う通りだった。その日の内に懐いて近くを離れなくなった。

「それにしても……足、大丈夫?」

 アヴァインは杖を使って歩いていた。

「ああ、大丈夫。全然、平気だよ」

「そう、それならよかった」

 だが、今後馬に乗って走り回るということは困難かもしれない……。アヴァインはそのことはケイリングに言わないでおいた。

「また2日後には、キルバレスに戻らないといけない。ケイリング達も来ないかい?」

「そうね。お父様次第かな?」

 ケイリングはそう言って笑って見せた。

「大丈夫、オルブライト様も連れて行けばいい」

「そう来ましたか」


 そんな訳で2日後、家族揃って首都キルバレスへと向かった。


 4日後、最高評議会議事堂パレスハレスの見える3階の部屋でファーとコージーも誘って集まり、ぶどうの絞り汁を頂いていた。

「北部のオルトー評議員によると、私が死んだといあ噂が広まって、北部でまた独立の話が持ち上がったらしい」

「勝手に殺すな、って話だよな」

「でも、それで北部がそういった動きを見せるということは、北部はまだ安定していないということですよね?」

「もしかすると、キルバレスという国名が駄目なんじゃないのかね? 我々もそうだが、国名がキルバレスだとどうしても外戚という認識になってしまう。事実、そうかもしれんがね?」

 スティアト·ホーリング貴族員だ。

「ならばいっそ、かえてしまってはどうだ?」

 オルブライト様がそう言った。

「確かに国名がキルバレスだと、キルバレス国民以外は外戚という認識になってしまうのかもしれませんね……」

「なら、アヴァイン帝国ってのはどうだ?」

 ファーだ。

「それはいいね」

 スティアト·ホーリング貴族員だ。

「当然、世襲制にするのだろう? なら、悪くない」

 オルブライト様だ。

「いえ、近いうちに共和制に戻そうかと思っています」

「……共和制かね。それは辞めたがいい」

「何故ですか?」

「まだ統一国家として、我々もだが、馴染みがない。仮にキルバレスが独立したとする。そうなれば、我々も独立し、再び戦乱となるだろう。それでは困るのではないかね?」

「当分は帝国として同じ国民として馴染んだあと、皇帝任命制度も復活させるというのがいい。何せ、今ならカナンサリファ、コーデリア、キルバレスと仲が良い。今の状態なら帝国として安定的に維持出来ると思う」

 スティアト·ホーリング貴族員とオルブライト様の言い分は最もで説得力があった。確かに、キルバレスが今の王室を保てるのなら、残り2カ国とも仲良くやっていけると思う。それが200年、300年と続けば、統一王国としてかなり安定もするだろう。


 問題は、それを最高評議会が納得してくれるかだ。


「凄いね。アヴァインの名が歴史に残るんだね」

 ケイリングが嬉しそうにそう言ってる。

「まだ早いよ。最高評議会次第だからね」


 その最高評議会での話し合いは、満場一致で可決された。斯くしてキルバレス帝国は、アヴァイン帝国として歴史に登場することとなったのである。



 それから数カ月後、シャリルとコージーが結婚をした。その新婚旅行として、フォスター国へと行き、フォスター国王と抱き合い長い再会を果たす。


 その数年後、ガイデスヘルムの街が陥落されたの報告を受け、アヴァインを先陣にパーラースワートロームへと駆け付け、ワイゼル公国と戦い。ガイデスヘルムを取り返し、アヴァインが不在中に再び北部に不穏な動きがあることを聞きつけ、アヴァインは痛む身体を我慢して首都キルバレスへと戻り、北部への遠征を遂行した。アヴァイン健在を見て再び北部は安定する。


 その後、長く平穏な時代が続いた。誰もが平和を享受する、より良き時代の到来であった。そしてアヴァインの寿命も、いよいよ尽きようとしている。

 

「この平和な世の中を絶やすでないぞ、アルヴィン」

「分かっております。陛下」

「ミラーネ……アルヴィンの助けとなっておくれ」

「はい。お父様」

「私もようやく、ようやく……そちらへと行ける……。ファー、ケイリング……待たせたの……」



  享年73歳 アヴァイン·ルクシード逝去。



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