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「ここに3日滞在する。その間に出来るだけパーラースワートロームの情報を掴んでおいてくれ」
「ハハッ」
「いよいよ神秘の国パーラースワートロームだな」
ファーとコージーだ。
「ハハッ、妖精が本当にいるのか、もうから楽しみだよ」
「妖精は分からないが、女神は本当にいるそうだぞ。何人も見ているらしい」
「やけに詳しいですね……」
「伊達に重装甲騎兵の将軍をやってる訳じゃない。色々な情報が、オレのところに入ってくるんでな」
「フォスター国の状況は聞いてる?」
「厳しいと聞いている。出来るだけ急いだがいいだろう」
「と言っても、あとひと月は掛かるからね……」
「ああ、それと向こうの戦闘は基本的に聖霊兵器らしい。幸い旧キルバレス軍はそこまで持ち合わせてないそうだが……向こうの戦闘でディステランテ側が手こずってるのは、恐らくそれでだろう」
「聖霊兵器か……増産が必要だな」
「報告が後回しになって悪いが、それについてはもう手配した。と言っても届くのは何ヶ月も先だがね」
「いや、助かるよ」
聖霊兵器5000丁……実際戦力になるのは、この数ということか……。
それから3日後、アナハイトから進軍した。
アナハイトを出て数日間は平地が続きよかったが、そこから先は勾配がきつく、ゆるやかな斜面が続くとそれだけで感謝するほどだった。遠くを見ると見るからに高い山々が連なり、山頂には雪が積もっているようだった。
「この暖かさで雪か……相当高そうな山だな……」
事実、7000メートルから8000メートルを超える山々であった。
「パーラースワートロームは、3000メートルの高台にあるらしい。多少ペースを落とさないと歩兵達はついてこれないだろう……」
「……そうだね。ペースを落とそう」
「全軍、ペースを下げよ!!」
兵達の疲労が見て取れる。こんな時に旧キルバレス軍と戦闘になればひとたまりもないな……。
「今日は早目に休もう。そうだな……あの開けた平地で陣営をとろう」
「ハハッ」
テントを張り、皆休憩し始めた。
アヴァインたちは陣営テント内でテーブルを囲んで座っている。
「ここからパーラースワートロームまでは、あとどのくらいなんだ?」
「3日程らしい」
「3日か……」
「妖精は居るんですかね?」
「……お前の頭の中にな」
「あ、その言い方!!」
「ハハッ。まあまあ、それにしてもここは草花はあるが高い木々がなく、影が余りないね……。影といえばあの雲の影くらいか?」
アヴァインが言う直ぐ近くを、小さな雲が通り過ぎていた。
「それだけ標高が高いという証拠かねぇ……」
「雲があんな近くを……」
背を伸ばせば届きそうなくらいの高さを飛んでいた。
「まさに神秘の国ってか……」
「早くパーラースワートロームを見てみたいものだね」