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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第四部 第21章 【アヴァイン】
160/170

ー1ー


 無惨な姿で帰還した皇帝ルシアスの遺体が、最高評議会議事堂パレスハレスに運び込まれた。葬儀は盛大に行われ、その生前の勇姿が称えられた。


 一週間後、次の皇帝を誰にするかで議論がされた。

 そこにアヴァインの名前があがる。実績も武勇も言うことはない。問題は本人のやる気だけである……。その本人のやる気については、オルブライト公が説得することで話がついた。


「君は今や英雄として誰もが認めている。君が皇帝となることで、全てがまとまるのだ。引き受けてはくれないだろうか?」

「しかし私などよりも、オルブライト様やスティアト様の方が治世に優れています」

「私やスティアトは所詮、外戚だ。きっと国内を乱す。キルバレス市民の理解を得ることは難しい。その点、君は違う。どうか理解してくれ」

「……わかりました」


 こうしてアヴァインが3代目の皇帝となることに決まった。ケイリングはその隣で后として、国民の喝采に手を振り応えている。アヴァインも同じく、手を振っ手応えた。


「アヴァイン皇帝万歳! アヴァイン皇帝万歳!」

 人々の歓声が上がる。街中に響き渡っていた。

 アヴァインは皇帝の椅子に座り、隣のケイリングを見て言った。


「案外、座り心地は良いもんだね」

 ケイリングはそれを聞いてクスクス笑っている。



 最高評議会議事堂パレスハレス内にて、議会が行われていた。前回に引き続き、北部の問題と南部の問題である。

「北部については、話し合いの場を改めて設けてはどうか?」

 これには皆ざわめいた。

「話し合いは前回やっている。それに今回の敗走で、我々キルバレスが弱気になったと勘ぐられるかもしれん」

「弱気になぞ……考えられないことだ」

「堂々と攻めてやれば良い。前回の2倍の兵力を持ってすれば、負けることはまずあるまい」

「皇帝は、どうお考えですか?」

「え? そうだね……先ず、話し合いの場は設けることとしようと思う。その上で、それで駄目な場合は、一戦も辞さないとの通告を含める。

取り敢えずこれで話し合いには応じてくれると思うけど、どうかな?」

「なるほど……脅しもかける訳ですな」

「よし、その手で行きましょう」

「電信官、急ぎ準備せよ!」

「はっ」

「南部については、これまで通り北部が片付いてからということにしますか?」

 アヴァインがそこで申し訳なさそうに手を上げていた。

「これは……皇帝陛下、どうぞ」

「南部については、フォスター将軍との外交を通じて作戦を行おうと思っています。具体的には、フォスター国からアナハイトへと侵攻を仄めかし、戦力を分断させる。それに乗じて、南部の要塞を攻め取るという作戦です。これの攻略には新兵器を使う予定です」

「おお……両方から挟み込む作戦ですか」

「勝機は十分にあるな」


 パレスハレスでの会議は終わり、その夜は同じくパレスハレスの見える評議員宿舎に皇帝用として特別に設えて貰った部屋で、ファー、ケイリング、コージーと共に寛いでいた。


「南部の作戦にフォスター将軍とはびっくりしたな」

「いつからやり取りしていたの?」

「この半年くらいかな?」

「北部が片付いたら提案する予定だったんですか?」

 コージーが聞くと、アヴァインは頷いた。

「うん。南部の要塞は厄介だからね」

「この調子なら、北部も安泰そうだな」

「いや……北部の攻略はまだ考えてないよ」

 ファーはコケていた。

「なんでだ?」

「ルシアス皇帝が何とかしてくれると思っていたからね………」

「あー……確かにな」

 苦戦することはあっても、負けるとは誰も思っていなかったのは確かだった。

「そう言えばメルドアでの最後の決戦の時、女神がどうとか言ってたらしい」

 鶏肉を食べながらファーがそう言った。

「女神?」

「夢でも見ていたのかね?」

「……ふむ」

 夢か何かは分からないが、アヴァインも以前、女神としか思えないような、空に浮かぶ美しい女性を目撃していた。自分には何も語りかけることは無かったが、それでディステランテを撃ち漏らしていた。


 あれは何だったのだろうか……?

 もしかするとルシアスも、同じ女神を見たのかも知れない……。




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