ー5ー
3日後、進軍が開始された。メルドアもほぼ同時に動き始める。
「メルドアは、北部の中でも好戦的だと聞きます。油断なきように……」
「……わかった」
聖霊兵器部隊を先頭にゆっくりと前進し、その後ろに騎馬隊、槍隊、歩兵と続く。対してメルドアは、重装甲騎兵を先頭に槍隊、歩兵を並べていた。
「突っ込んでくる気か……聖霊兵器部隊、気を引き締めよ!」
「ハハッ」
「行くぞ!!」
「おおおおおおーーー!!!!!」
聖霊兵器部隊は射撃範囲に入り次第、一斉射撃した。そして左右に旋回し、その隙に装填をする。が、射撃されながらも重装甲騎兵が突進し、聖霊兵器部隊を攻撃する。
「構わず、ひけ!!」
「騎兵隊突撃!!」
「おおおおー!!!!」
互いにぶつかり合い、薙ぎ払う。ここまで戦い慣れて来たキルバレス勢が、ここでは優勢だった。
メルドアは騎兵隊を下げ、槍隊を突撃させた。キルバレスもそれに合わせ、騎兵隊を下げ、槍隊を突撃させる。お互い再びぶつかり合い、歩兵も左右から突入し、次第に乱戦となっていった。
「聖霊兵器部隊を上手く使い、遠方から狙撃させよ!」
「ハハッ」
「どうやら消耗戦となっています。如何しますか?」
「……一旦、引かせるか。銅鑼を鳴らせ!!」
銅鑼が鳴り響き、キルバレス軍は撤退した。それに合わせ、メルドアも撤退する。
再び陣形を整え、鼓舞する。
「我が軍勢が優勢だ! このままの勢いで戦えば、必ず勝利する!! よいな!」
「おおおおおおーーー!!!!!!!」
「聖霊兵器部隊が300程やられております」
「……聖霊兵器の補充も急がせろ」
「ハハッ」
「全軍前進!!」
「おおう!!!」
聖霊兵器部隊を先頭に突撃する。そして射程内に入り次第、一斉射撃!! そのまま旋回し、後方へ退避。だが、また再びメルドアの装甲騎馬隊がそれを追撃し、1人また1人と倒していく。それを阻止する為にキルバレスの騎馬隊が入り、メルドアの装甲騎馬隊を攻撃。乱戦となる。それに遅れ、槍隊、歩兵と加わり、大激戦となっていった。
「聖霊兵器部隊、遠方から敵側面を撃て!!」
「ハハッ」
側面から射撃を加えると、重装甲騎兵が側面からこちらへ突撃して聖霊兵器部隊を追いかけ薙ぎ倒してきた。
「今回は相手も手強いですな」
「戦力差はこちらが上だ。何とか押し切る!!」
ルシアスはそう言って先陣を駆けてゆく。
「……何とか押し切るねぇ……状況の悪さを、肌で感じてるってことかねぇ?」
ルシアスの言う通り、戦力差は確かに上だったが、兵士の疲労が徐々に戦況を悪くしていた。それでもその戦力差が、何とか状況を抑えてくれてもいた。
この日の戦闘は終わり、全軍撤退した。
陣営テント内で、ルシアス皇帝や諸侯がテーブルを囲み座って、食事を頂いていた。
「いやぁ~、それにしましてもメルドアは手強い」
「メルドアの手強さもあるが、こちらの兵の疲弊もありそうです。増援が来るまで、このまま守りに徹するのもありかも知れません」
「それはありえない。疲弊しているのは、向こうも同じの筈だ。明日も攻める」
ルシアスの言に、誰も異を唱える者は居なかった。
「………わかりました」
「その増援はどのくらいで届きそうなんだ?」
「あと10日は掛かるとのことです」
「急がせよ」
「ハハッ」
「聖霊兵器の方も手配はしているのか?」
「1000程用意出来るとのことです。ただ、こちらも到着に10日かかるとのことです」
「10日後、1000か……」
「聖霊兵器の増産も急務だな」
「弾薬はどうだ?」
「弾薬の方は十分です」
「今、新兵器も開発中だが、今回の戦いには間に合いそうにないらしい」
「それは残念だ」
「……明日も激戦になりそうだな」
その激戦は3日間続いた。