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最高評議会議事堂パレスハレスの見える評議員宿舎3階にて、アヴァインとファーそれにコージーは窓ぎわで寛いでいた。
「北部の攻略は順調なようですね」
「メルキアを攻略したのは大きいな」
「しかし、被害も大きい……兵員の補充は必要かもしれないね」
「それはオレも気になるが……」
「そういえば、戦死者を英雄と讃えているそうですね?」
「死んでしまえば、英雄も何もないがな……」
「随分とルシアス皇帝に否定的なんですね?」
「別に否定はしないが、アヴァインが言うとおり、確かに戦死者数が引っかかってな……」
「強引な戦略をしているという噂は今のところないから、大丈夫だとは思うけどね」
「だといいがな、余り兵数に物を言わせた強引な戦術をしていると、あとで悪評となるからな」
「亡くなった家族からなどの評判ですか?」
「そういうこと」
「なるほど、自分も気をつけることにしよう」
「お前には、百年早えけどな」
「百年!? もう死んでますよ!」
「ハハハ! 冗談だよ」
「ははは」
まあ、勝ってさえいてくれれば何とかなるさ……。アヴァインはそう考えていた。
ルシアスは、次々と小国を攻め入った。6000の国、8000の国と兵数規模の少ない国が続き、連戦連勝であった。
「勇敢な兵士共よ! 死を恐れるな、英雄となるのだ!! 我らの向かう先に負けは無し!!」
「うおおおおおおーー!!!!!」
聖霊兵器部隊を先頭に一斉射撃し、その次に騎馬隊が突撃し、混乱した相手を無き払い倒し、槍隊が突進してきたら引き、こちらも槍隊で応戦する。実に戦い慣れた連戦錬磨の戦い振りである。
「逃がすな! 追え!!」
殲滅する勢いで戦い、この小国でも勝利した。
「えいえいおおおーー!!!!」
その夜、陣営テントにて。
「そろそろ援軍を要請しては如何でしょうか?」
「援軍? 我らは勝っているのに、何故だ?」
「兵も疲れてきております。せめて増援し、休ませることも肝要かと思われます」
「他の者はどう思う?」
「必要かと」
「必要に思われます」
それを聞き、ルシアスは頷く。
「わかった。増援、1万とする」
「1万!? 恐れながら、せめて2万は増援すべきかと……」
「そんなに必要あるか? 残り北部の大国でも1万5千程度。こちらは2万3千。増援で33000だ。更に聖霊兵器もある。負ける要素はない」
「されど……いや、わかりましてございます」
「よし。3日後には、ここを発つ。各兵士にもその様に伝えよ」
「お、お待ち下さい。それでは増援が間に合いません!」
「間に合わない間は、こちらで何とかするから安心しろ」
「……わかりましてございます」
「以上だ」
それから3日後、ルシアスは次の戦場を目指して発ち、多くの兵士は疲れた様子でそれに続いた。
次の戦地メルドアに着いたのは、一週間後だった。
既に、メルドア軍1万2千が大挙している。更に市民兵3000が居るという。
「増援はまだか?」
「まだ二週間はかかるとのことです」
「遅過ぎる。急がさせろ!!」
「ハハッ」
「如何しますか?」
「このまま2日様子をみる。情報収集を徹底せよ」
「ハハッ」
流石に到着して直ぐの進軍がないことに各諸将は安心した。若さ故に疲れを知らない。それが今は仇となっていた。1人、それについて進言した者が居る。たが、其の者のやる気を問われ、結果失脚した。それ以来、誰も何も言えなくなっている……。
過剰な自信と過信が本人も気づかなぬ内に、周りを寄せ付けなくなっていた。