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最高評議会議事堂パレスハレスが見える3階の評議員宿舎から、アヴァインとファーはブドウの絞り汁を頂いていた。
「思っていたよりも、今度の皇帝はしっかりとなさっているらしい」
「ああ、安心したよ」
「ただ、北部の指揮は自ら執るそうだ。大丈夫か?」
「……他に将軍は?」
「カナンサリファのギアン将軍だそうだ。何故、アヴァインの名が上がらなかったのかが不思議だよ」
「アヴァイン将軍が出ては、全ての功はアヴァイン様ということになるかも知れない。そう考えたのかもしれませんよ」
コージーだ。なるほどなと思った。
「まだ、実績がないから……ってことか」
「自分も、初めはそうでしたから」とコージー。
「そうは見えなかったけどな……」
「内心は焦ってましたよ、これでも」
「シャリルに求婚する為にも……ってとこか?」
「え? それも、ありますけど……」
「認めやがった。ハハハ!」
「余りそうやって虐めないでやってくれよ、ファー」
「気をつけますよ。アヴァイン将軍」
「で、いつ頃結婚予定なんだ?」とアヴァイン。
「えと……一応、年内で考えてますが……」
「「おおー」」
「まあ早い方がいいかもね。旧キルバレス軍も数年は攻めて来ないだろうから」
「攻めては来ないかも知れないですけど、攻めて行くかも知れないですよね?」
「北部次第ではそうなるね」
「ルシアス皇帝陛下の腕の見せどころってところかね?」
「出来るだけ時間を掛けて欲しいな……」
ところが、皇帝ルシアスの動きは早かった。2ヶ月後には侵攻を開始、北部8ヶ国の初戦、トラキア8000の軍勢に対し1万2千を進軍。聖霊兵器部隊を先頭に突撃した。ルシアス自身、先陣を切り、大いに駆け回った。そんなルシアスの勇姿に歓声を上げる者も多い。指揮は自然と高まり、乱戦の中、猛威を振るう者も目立ってきた。遂にトラキア軍は敗走した。大勝利である。
ルシアスは追撃を指示し、トラキア軍を背後より襲わせた。
「容赦はするな! 追撃せよ!!」
トラキア軍を逃げる首都まで追いかけ、そのまま突撃し首都内で暴れ回った。逃げる兵を撫で斬り、住人にも被害が及んでいった。王城の占拠し、遂には降伏し、勝利の雄叫びを上げた。
「おおおおおー!!!!」
負傷者数4000と被害も多かったが、ルシアスは彼らを英雄と称えた。