ー3ー
皇帝カルロスが倒れる。それを聞きつけたかのように、再び南部から旧キルバレス軍が攻めてきた。それに対し、アヴァイン将軍が全権を持ち、対抗することに決まる。
「敵は6万。そして、こちらも6万。数は互角だが、聖霊兵器の数、そして各諸将の指揮が違う。作戦通り戦えば、勝てる。まずは自信を持て! 行くぞ!!」
「おおおー!!」
全軍の自信は漲っていた。それはアヴァインという1人の英雄の存在によるものだった。
「聖霊兵器部隊前へ! 撃て!!」
今回、この聖霊兵器部隊の隊長をコージーに任せていた。聖霊兵器3000丁の兵器部隊が一斉射撃。それで相手騎兵が混乱する。それに負けじと相手も聖霊兵器部隊を展開、それに対しこちらは聖霊兵器部隊を左右に逃し、後方にまわし装填させる。
その隙に重装甲騎兵が敵聖霊兵器部隊へ突撃開始、その隊長はファー·リングス。敵聖霊兵器部隊が応戦するがその装甲で無理やり押しやられ、倒されてゆく。
その後から槍隊を突撃させ、相手もそれに槍隊で応戦して来た。相手騎兵隊が左右から突撃して来て、槍隊は混乱する。銅鑼を鳴らし、一時撤退。
追撃してくる騎馬隊を、聖霊兵器部隊が射撃。敵も撤退した。
再び聖霊兵器部隊を前衛に、騎馬隊を左右に並べ、中央に槍隊、歩兵を並べた。
「全軍前進!!」
旧キルバレス軍も聖霊兵器部隊を並べて来た。撃ち合いになりそうだ。
「重装甲騎兵隊、左右から聖霊兵器部隊を攻撃!! 突撃後、そのまま抜け後方へ回れ!」
「おお!!」
旧キルバレス軍の聖霊兵器部隊は、突撃してくる重装甲騎兵隊を射撃した。だが、硬い重装甲騎兵は倒れても死ぬまでに至らず、残りの重装甲騎兵隊が聖霊兵器部隊を倒し、突き抜け後方へと周る。それを見て、アヴァインは「突撃し撃て!」と命じた。
聖霊兵器部隊は突撃し、敵聖霊兵器部隊を射撃。それでほぼ壊滅した。それに遅れて、旧キルバレスの騎兵隊が突撃してくる。それを見て左右に散開し、槍隊と歩兵部隊がその旧キルバレスの騎兵隊に対抗、大乱戦状態となった。それを見て、再び銅鑼を鳴らし撤退させる。
またしても追撃してくる旧キルバレス騎兵を、聖霊兵器部隊が迎撃。それで旧キルバレス騎兵も撤退していった。
「圧倒しています。総攻撃をいたしましょう!」
「そうだね……。総攻撃を!!」
再び聖霊兵器部隊を先頭に、まだ隊列の整わない旧キルバレス軍に対して突撃をかけ、一斉射撃する。それで混乱した所へ重装甲騎兵が突撃し、続いて槍隊と歩兵が続いた。
旧キルバレス軍はもう逃げるしかなかった。激しい銅鑼が鳴り、全軍撤退してゆく。掃討戦が続く中、アヴァインはその戦場を見回した。
もの凄い数の死傷者だった。これを自分がやったのかと思うと、寒気がするほどであった。
アヴァイン大将軍による大勝利に、首都キルバレスは大歓声でその英雄を出迎えた。
「アヴァイン、おめでとう! お疲れ様!!」
ケイリングだ。心配してこの首都キルバレスまで来てくれていた。
「ファーもコージーもよく頑張ってくれたお陰さ」
「まあな」
「アヴァイン様の指示に従ったまでですよ」
コージーは兎も角、ファーには謙遜がまるでない。
「聖霊兵器の腕前はもうピカイチだから、任せられるよ」
「へぇ、シャリルの旦那さんとしてももう申し分なさそうねー」
「え? それは……」
コージーは照れている。あとは本人達次第というところだろうな。
そこへ給仕が料理を持ってきた。とても美味しそうだ。アヴァインはブドウの絞り汁を頂きながら、美味しく頂いた。ファーもコージーも、余程お腹が空いていたのか、もしゃもしゃ食べている。
「これで旧キルバレス軍も、しばらくは攻めて来ないだろう。当面は、北部の問題だな……」
「北部も話し合いに応じる気があるのかないのか……独立の一辺倒だからな。それで周辺国と揉めている有り様だ。カルロス様も心労が絶えない筈だよ」
「キルバレスに代わる、第二の勢力にでもなるつもりなんだろうね……」
「第二勢力ですか……」
「いっそ、攻めては駄目なのか?」
「ハハ。それはカルロス様が許さないよ」
「だよなぁ……」
「旧キルバレス軍の戦力が落ちている今が、チャンスだとも言えるんだけどね」
ファーがなるほどね、という顔をみせる。
「アヴァインがカルロス様にそう進言したらどうだ?」
「カルロス様の病状が悪い今は、とても言えないね……」
「病状がそれで悪化しても困るからなぁ……」
「症状が軽くなってから、折を見て話してみるよ」
だが、カルロスの症状が良くなることはなかった。1日1日と症状は悪くなり、医者も手の施しようもないと投げている有り様だった。それでも看護は続き、3ヶ月後……カルロスは死去した。
皇帝カルロスの葬儀は盛大に行われた。この国の建国者に相応しい葬儀であった。