ー１ー
アクト=ファリアナ国境付近……。
キルバレス軍 8万。
コーデリア軍 55,000。
少し攻めては引くを繰り返し、情勢はほぼ変わらなかった。
「キルバレスも随分と慎重ですね……」
「こちらには聖霊兵器がある。恐らくそれでだろう。アヴァイン殿のお陰で、兵力差も縮まったしな」
オルブライトの言葉にアヴァインは納得した。
「アヴァイン様に報告します。カルタゴにて、例のものが出来た。至急取りに来られたし、とのことです」
「カルタゴ……わかった。ありがとう」
「カルタゴといえば、例の技師か？」
「どうやら聖霊兵器が用意できたようです」
依頼数は１０００丁、思っていたよりも早かったな。
「３０００程の兵をお借りします。カルタゴの動きも気になりますので……」
「いや、５０００連れて行きなさい。カルタゴは８０００だ。いざ、戦闘となればそのくらいの数はいるだろう。ここは大丈夫だ」
「わかりました。ありがとうございます」
アヴァインは準備次第、直ぐに出立した。
その２日後、鉱山都市カルタゴの代表オルビスク・エバーソン評議会議員は焦っていた。
「アヴァイン……アヴァインが来るのか……？」
「はい。こちらに５０００の兵を従えて向かって来ているとの報告です」
「そ、そうか。わかった。下がって良い」
アヴァイン……アヴァインといえば州都アルデバルを僅か短期間で陥落させた男ではないか。その男が向かって来ている！？ くそっ、くそっ！
オルビスク・エバーソンは１枚の手紙を手にしていた。それは、事前に援軍を要請した時にキルバレスから帰って来た返信であった。
「……耐えろ。耐えろだと……？ ディステンテめ……バカにしやがって！」
オルビスクは、皇帝ディステンテからの冷徹な書状に憤りを感じていた。
北部はカナンサリファに睨まれ、南部からは今、アヴァインが攻めてきいる情勢である。今に北部からも攻めて来るに違いない。いや、オルビスク・エバーソンはそう理解していた。２方向より挟まれて、勝てる訳がないと。
時間はなかった。
そこで、オルビスク・エバーソンは決めた。
「電信官」
「はっ」
「急ぎ、コーデリア国のアヴァイン殿に伝えよ！」
「はっ」
