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二万の軍勢を率い、アヴァインはアクト=ファリアナに帰還した。街中の人々より拍手喝采を受け、英雄の姿を人目見ようと大勢の人だかりが出来ていた。
「アヴァイン殿、御苦労様でした」
城内に入ると、旧臣の一人が声を掛けてくれた。それまで無かったことだ。
「ありがとうございます」
謁見の間へ行くと、オルブライトが微笑んで待っていた。
「アヴァイン殿、よくぞやってくれた。旧臣一同共に感謝している」
「痛み入ります」
「早速だが、これからの事について話し合いたい」
カンタロスの東南に、キルバレス軍6万が集結して来ている。それを迎え撃とうということだった。ただ、懸念は鉱山都市カルタゴの動きである。この間にラグーナを攻めてくる可能性もあった。
「カルタゴの軍勢は?」
「凡そ8000」
「ラグーナの守りを固め、3000も配置すれば何とか守り切れるでしょう」
「では残り3万5000で、カンタロス東南に向かうこととしよう。アヴァイン殿にもこれに加わって貰う」
「わかりました」
話し合いは終わり、アヴァインはケイリングが待つ部屋へと向かった。身体の方は随分と良くなり、起き上がれるほど回復しているようだった。
「お疲れ様、アヴァイン」
「ああ、本当に疲れたよ」
「ふふ。アルデバルを短期間で攻めとったこと、お父様が褒めていたわよ」
「うん。全てが運良く良い方向に流れたお陰さ」
「そういう所、相変わらずね。もっと自分に自信をもって、誇らしげにしたら良いのに。最早あなたは英雄なんだから」
「誇らしく思っているさ。沢山の良い部下に恵まれたことを」
アヴァインはそう言って、ぶどうの搾り汁を美味しそうに飲む。それを見つめ、ケイリングは嬉しそうに笑った。
「何が可笑しいの?」
「何がって、あなたのその無頓着なところをよ。心配ないわ。良い意味でだから♪」
「何だかバカにされてる気がするな……」
「バカにする訳ないじゃない。誇りにすら思ってるんだから」
そう言われ、お互いに照れ臭くなってしまった。