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アルデバル軍との初戦で勝利したアヴァイン達の元に、 思いがけない知らせが舞い込んで来た。
「アルデバル軍の指揮官を捕えた?」
「はい。就いては、アルデバルへの攻撃を中止して頂きたく……」
話によるとこうだ。敗走してきた指揮官を、元々交戦することに対して消極的であったファインデル評議員などが、兵を指揮し捕らえたというのだ。
「わかりました。そういう事であれば、攻撃は中止します」
「御理解、感謝致します」
結果として、アルデバルは僅か一日にして陥落したことになる。 当初、長期戦になるだろうと思われていただけに、この結果は意外な形で終わりを告げた。
アヴァインは州都アルデバルには入らず、ファインデル評議員を陣営に招いた。アルデバル内では、まだ意見が割れ対立があることを情報として入手した為だ。とても安心出来る状況ではなかった。
「この度の勝利、おめでとうございます」
「ありがとう。ファインデル評議員」
「予定よりも遅れはしましたが、約束は守った、そういう事で宜しいですね」
「そうですね……」
約束とは、この州都アルデバルを火の海にしない、万が一負ける時には無条件で解放する、というものだった。
「言ってはなんですが、ファインデル評議員。少々、動きが遅すぎたのではありませんか?」
ファーだ。
そこは自分も思っていた所なので、止めはしなかった。
「こちらにも事情というものがあります。中の者を説得するのに、大変な時間が掛かったのです」
「今も御苦労しているようですからね」
「ファインデル評議員、アルデバルは大丈夫なのですか?」
問われ、評議員は困り顔を見せた。
「……正直申しますと、半々と言ったところです。いや、勝ち続ける限りは大丈夫でしょう」
「それはつまり、裏切られたくなければ勝ち続けろ、ということか?」
「ファー」
そこは流石に、ファーを制した。
「それは仕方ないでしょう。相手は、あのキルバレスです。キルバレスを裏切ることに多少なりと恐怖を感じない者はいませんよ」
「……」
ファインデル評議員の言うことは尤もである。この時点で、アクト=ファリアナを含むコーデリア軍が、キルバレスに勝てると思う者は少ないだろう。今は流れに任せるにしても、何処かでキルバレスに寝返ることを考えているのは、何もアルデバルだけとは限らない話だ。
「わかりました、勝ち続けます。その為にも協力して頂きたい」
どの道、勝つ他にないのだ。 ならば、その為の努力をするのみである。