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ラグーナの状況は半分に別れていた。オルブライト率いるアクト=ファリアナとキルバレスとにである。故に、ラグーナ5万市民で考えると随分と少ない1200人だけが町の防衛に出ている状況であった。
アヴァイン達としては、幸いなことである。
「アーザイン様、ラグーナからの返信です。
我々は降伏する気などない。正々堂々と戦う所存である、とのことです」
「……わかった」
「相手はやる気満々だな」
「うん。先ずは、聖霊兵器部隊を前列に! そこへ向かって来た敵騎兵を撃つ。そこで勢いを無くした敵騎兵へ弓騎兵による攻撃、それに遅れ騎兵により突撃し、優位なうちにこれを撃退。そして、乱戦となる前にそのまま左右へ展開後退。暫くこれを続ける」
「任せとけ!」
直ぐ様、指示通りに軍勢は動き、聖霊兵器部隊を先頭に前進した。そこへ敵騎兵が飛び出し、突撃を仕掛けてくる。
その二百メートル手前まで来た時、
「放て!!」聖霊兵器部隊が一斉に構え斉射。相手の勢いは削がれ、その轟音に怯え引く者まで現れた。そこへ弓騎兵が走り向かい、同じく一斉斉射! ラグーナ軍は完全に混乱状態となる。が、その中でも果敢に弓騎兵へ向かって来る騎兵も居た。しかし、そこへこちらの騎兵部隊が突撃を開始し、相手騎兵を倒す。慌てて相手は槍隊を前に出し、状況を打開しようとするが、そこでこちらの騎兵部隊は左右に別れ全軍下がり、それを見て聖霊兵器部隊が再び轟音を響かせる。
ラグーナ軍は槍隊も含め混乱し、そこへ弓騎兵の一斉斉射と聖霊兵器の斉射で壊滅状況となる。更に騎兵部隊の突撃である。
「おおおお!!」
ラグーナ軍が撤退して行くのを見て、アーザイン軍は歓声を上げた。
「大勝利だな!」
「ああ、また密書を送ることにしよう」
その返信に期待を寄せていたが、しかしそうはならなかった。今日は仕方なく5キロ程撤退し、夜営をすることにした。
異変は、その日の夜の内に起きた。
「……じゃあ、キルバレスを裏切るんだな」
「ああ、そうだ。差別と格差の世の中には、もううんざりだ。そこをアーザイン将軍に条件として飲んで貰う」
「言いたいことは分かるが、飲んで貰えると思うか? デイル」
「飲んで貰えないなら、この町は落ちない。それだけさ」
「しかし、あの兵器……あれを持ってすれば分からんぞ」
「いや、例え特殊な兵器があったとしても、兵力差がある。簡単なことではない」
「……ふん。アンタはこの町の有力者だからな。別にどっちに転んでも良いんだろ」
「そんな言い方は無いだろう、デイル」
老人は庇う男を制し、言った。
「確かに……だが、あの若者と約束した手前もある。その力も見た。あれなら、この町の命運を任せても良いかも知れぬ……。
ここはワシが骨を折り、何とかするとしよう」
直ぐに他の有力者と会い、話をつけ、更に信頼の置ける軍関係者とも会い、同意を得た。そうとも知らぬまま、ラグーナ軍は次の日の朝を迎えた。
一方、アーザインの元にはその知らせが入り、直ぐにそれを策戦起用に置き換えた。
「信用出来るのか?」
「試してみる価値はあるさ」
昨日の布陣のまま、先ずは前進する。すると相手は、弓隊を前に置き、その後ろに槍隊を並べてきた。
なるほど、考えてきたな。 そこでアーザインは、旗を二本立てる。すると伝令が「旗!」と伝え合い、それを受け各指揮官が確認、それを見て号令を掛け、隊列を変えた。
前列に騎兵が並び、その後ろに聖霊兵器部隊と弓騎兵が並んだ。が、前列の騎兵の装備は前日と違い、重厚な鎧を馬にも人にも装備させ、一際長い槍を携えていた。重装甲騎兵の装備である。
機動力を生かした昨日とは違い遅いが、相手の弓矢をものともせず突き進み、その一際長い槍を突き刺し振り払い、隊列を崩していった。これに対抗するには、長槍を地面に突き刺して立て構え貫く他にないが、ラグーナ軍の槍はその機能を有していなかった。槍隊もその一際長い槍の餌食となり、振り払われる。
そこへ敵の騎兵が出て来た。それを見て、重装甲騎兵は左右に展開後退し、後続の聖霊兵器部隊と弓隊に譲り、譲られた聖霊兵器部隊は轟音を発して、敵騎兵を撃ち落とす。弓隊もそれに遅れ、一斉斉射した。
「敵後方の動きが変わった。そろそろだな」
「ああ、伝令!」
旗を四つ並べ、それを伝令が伝える。各指揮官はそれを見て、直ぐに撤退を開始した。
その動きを見て、ラグーナ軍は追撃を開始。が、その後方で事態が急変。主力が前進してる間に、ラグーナ軍の指揮官が同胞に包囲され捕えられたのだ。
こうして、ラグーナでの戦いは終わった。
◇ ◇ ◇