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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二部 第16章 【攻略! 州都アルデバル】
137/170

─1─




 キルバレスが動いたことで、鉱山都市カルタゴの兵も連動することが予想出来た。下手をすると拘束されかねない。


「不味いな。直ぐに、此処を出よう」

「そうだな」

 ロゼリア婆さんやポルトス技師達に別れを告げ、馬を走らせる。街道へと出て暫く行くと、キルバレス兵が検問を張っていた。


「……どうする? 久しぶりに山越えでもするか?」

「……そうだね」

 アヴァイン達は兎も角、警備員の旅装がアクト=ファリアナ警備隊の格好のままなので、簡単には通して貰えそうにない。そこで街道を逸れ、山道へと向かった。


 街道と違い、山道となると日数も余計に掛かる。まさか山道を行くことになるとは思わなかったので、携帯していた食糧も直ぐに尽き、途中からは木の実などを採り、空腹を少しばかり満たしながらの行軍となった。それでも前に山越えした時に比べれば、馬が居るので、かなり楽な山越えと言える。


 1週間も掛け、ようやくアクト=ファリアナへと辿り着いた。情勢が気になるので、《ハインハイル交易ギルド》と執事のハマスの所へ警備員を走らせ、自身は城へと向かった。



「アヴァイン! よかった。無事だったのね」

 城へ着くなり、ケイリングが抱きつき迎えてくれた。隣のファーが、羨ましそうな表情で見つめている。


「ケイこそ、大事なくて良かった。情勢はどうなってるの?」

「一時は危なかったけど、今は押し返して膠着状態らしい。父様が呼んでるわ」


 奥の謁見の間に行くと、オルブライト様が鎧に身を包んでいた。


「アヴァイン殿か、早速で悪いがこれからアルデバルまで行って貰いたい」

「北西の守りは大丈夫なのですか?」

「ああ、今は耐えてくれている。この内に、コーデリア旧領地を取り返す必要があるのだ。兵は余り与えることは出来ないが、頼まれてくれるか?」

「はい。何とかしてみます」

「すまない」

「……」


 助かる、では無く。その言葉が出た辺りが状況の悪さを物語っていた 。兎に角、急がなければならない。


「兵の数は、500らしい。どうする?」

「何とかするさ」

 アルデバル程の都市を落とすのに、500は正直少な過ぎる。小で大を相手にするなど、策としては愚の骨頂だ。が、今はやるしかない。


 《ハインハイル交易ギルド》から得た情報によると、コーデリア中の各町に兵招集の府令が出ていて、各町毎にその対応が大きく別れているらしい。特にデリー村が、これに反発しているそうだ。賛同し動いている都市としては、アルデバルを中心として幾つもあるのだという。


 ファインデル評議員に働きかけてはいたが……上手くいかなかったか。これならもう少し時間を掛けるべきだったな、つくづく迂闊だ。


「アヴァイン、兵を集めた。聖霊兵器は、今コージ達が運んでくれている」

「ああ、今から行く。それから今後自分のことはアーザインと呼んでくれ。その方が今は良いから」

 商人アーザインの名は、このコーデリアではアヴァインよりもよく知られている。これで少しでも状況が良くなるのなら、幸いだ。


「兵士諸君、お初にお目にかかる。自分の名は、アーザイン。最近まで商人をやっていた。こんな男に従うのは、恐らく不服だろうと思う。だが、今は耐え、従って貰いたい。

此処に、新たな兵器がある」


 アヴァインはそう言って、聖霊兵器を構え、空へ向かい轟音と共に放った。兵士達はそれに驚く。


「これは僅か10丁しかない。が、これを大いに生かし、我々は勝ちに行く! 決して死にに行くのではない、勝ちに行くのだと心得よ!!」

「「おおお!!!」」

 兵士達の間から拍手喝采が沸き起こった。


「まずまずだな」

「うん、士気の高い兵員で助かったよ」


 状況が状況なだけに、兵員の士気が低い可能性があった。が、この様子からいってそれは無さそうだ。オルブライト様は、兵員の中でも選りすぐりの者を用意してくれたらしい。


「先ずは何処を攻める? いきなりアルデバルを攻めても勝ち目は無いだろう?」

「アルデバルは、少なくとも5000は出してくるだろうからね」

 平原の地アルデバルで10倍を相手に勝てる戦術など思いつきようも無い。だが、戦略としてはまだやりようがある。


「街道を時計回りに攻め行き、兵力を整え、最終的にアルデバルを攻めとる。先ずは、ラグーナからだ」

「わかった。兵種はどうする?」

「騎兵300、弓騎兵200で編成を頼む。今は機動力が大事だからね。弓騎兵の中に、聖霊兵器使いも入れ込む」

「心得た」


 アヴァイン達は軍備が整い次第、ラグーナへと向かった。従軍に《ハインハイル交易ギルド》の者が加わり、随時必要な物資を届けて貰う。医療関係者もこれに加わり、600人分の食糧を必要とした。

 ブリティッシュの喜ぶ声が、今にも聞こえて来そうである。

 


  ◇ ◇ ◇


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