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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二部 第15章 【火蓋は切られた】
135/170

─4─


 アヴァイン達は、鉱山都市カルタゴに向かって馬を走らせていた。その道中、ファーが近づいて来て聞いてくる。

「お咎めなしで、本当に良いのか?」

「ああ、良いよ」

 朝食の時、ニキータのことを皆に話し、理解して貰った。それでもやはり、簡単には納得して貰えそうにない。


 その後方では、ニキータがコージに近づいて聞いていた。

「ねぇ。あのアーザインって人、どういう人なの?」

「どうって?」

「普通だったら、私今頃ぐるぐる巻きにされて、川に投げ込まれてる筈なのにお咎めなしってさ。どうなのかな~と思って」

「ぐるぐる巻きにされたいの?」

「されたくはないわよっ!」

「だったら良いんじゃない?」


 ひょうひょうと言うコージを見つめ、ニキータは口を開いた。

「………あんたも相当、変わっているわね」

「どうして?」

「いや……何となく」

 そんなことを言うニキータに、コージは自分が此処に居る経緯を話して上げた。するとニキータは、少し納得した顔を向けてくる。


「あんたも相当、苦労して来たのね」

「普通くらいにはね」

「ここでそう言うと、嫌味にしか聞こえないわよ」

「ごめん」

「……謝ることないわよ」

 ニキータはコージを困り顔で遠目に見つめ、それから小さく笑んだ。


「とりあえず、あんたもアーザインさんも良い奴だ、ってのは解ったよ!」

「はは。僕はともかく、アーザイン様のお人好しぶりは惚れ惚れする程だよ」

「お人好しかぁ……それは注意しといた方がいいな」

「どうして?」

「だって。騙され易い、ってことだろ?」

「そんな事は無いよ! その辺はしっかりとしてる……と思う」

「だと良いけどな」

 ニキータの言い様にコージは不満だったが、確かに気掛かりな所ではあったので言い返せないでいた。



 鉱山都市カルタゴには、夕方に到着し、前回も泊まった事のある宿屋に馬を預けた。夕食には定番の料理をたらふく食べ、今はぶどうの搾り汁を頂き、窓の外を眺めている。そこへファーが部屋へと入ってきた。


「どうもカルタゴ内が騒がしいようだから、様子を探るよう部下に指示してきた」

「うん、ありがとう。盗賊でも出たのかな?」

「それなら、まだ良いが……」

「良くはないだろ?」

 そう言うアヴァインを、ファーは呆れ顔に見る。

「今がどういう時か、解っているか?」

「解っているよ。冗談さ」


 キルバレスとアクト=ファリアナの緊張状態が続く中、この鉱山都市カルタゴでもいつ何が起こるか解らない時である。用心に越したことはない。


「ポルトスさん達の所も警備を増やしたいけど、今はそうもいかないからなぁ……」

「此処にアクト=ファリアナの兵なんか寄こしたら、それこそ即座に戦争だろうさ。

そう言えば、ここの有力者とはどうするんだ?」

「会わないよ。これまではコーデリアの旧領地内の町だったけど、此処はキルバレスの領地だからね。そんな話しをした途端に捕まりかねないよ」

「確かにな」


 アヴァインは、窓辺の向こうの高台に見える評議会議員の屋敷を遠目に見つめた。

「今は確か、オルビスク・エバーソン評議員だったか……」


 前のこの地の貴族員であるグラート・ヒルズグレンは、汚職などの噂が絶えない人物であった。そうした経緯もあり、余りこの地では馴染みが無く見た目にもパッとしない彼が、結果として大勝したのを覚えている。年齢的に40歳前後くらいだった。


「世の中、何が起こるか解らないものだね……」

「ああ、だから気をつけないとな」

 アヴァインは思わず笑ってしまった。話が噛み合ってないのだ。ファーはそこで不満そうな表情を見せていた。



  ◇ ◇ ◇

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