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翌朝、パレスフォレストから鉱山都市アユタカへ馬で向かっていると、コージが大きなため息をついていた。
「コージ、どうした? 浮かない顔をして」
「あ、いえ。大丈夫です」
その隣でファーが笑っている。そんなファーを、コージは困り顔で見つめた。
「何ですか、ファーさん?」
「いや、シャリル嬢もなかなかやるなぁ~と思ってな」
言われ、コージは顔が真っ赤に染まっている。何かあったらしい。
「コージ、シャリルと何かあったの?」
「何もないですよ!」
「何もない、じゃなくて。何も出来なかったんだよな?」
そう言ったファーを、コージは困り顔で不愉快そうに見つめている。
「何があったの?」
明らかに何かあるので、ファーに聞いてみた。
「シャリル嬢に優しくされて、コージ君はもうメロメロなのさ♪」
「ファーさん!」
コージは、全身真っ赤に染まっていた。実に分かりやすい。
シャリルにしろコージにしろ、もう年頃だからそういうこともあるのだろう。微笑ましい限りだ。
鉱山都市アユタカに着いて直ぐに、その地の有力者と話しをした。初めは難しい顔をしていたが、何とか納得を得る。それから話に聞いていた不思議な泉を観光した。
「確かにコレも不思議な泉だね……」
「カルタゴのと同じだな」
時折光る不思議な光、そして不思議な赤みを帯びた水の色……。水の色こそ違うが、何処かカルタゴのそれに似ていた。
もしかすると、コレからも聖霊兵器の弾薬が作れるかも知れないな……。
アヴァインはその可能性を感じつつ、それをすくい取り一口だけ飲んでみる。特に見た目ほど、変わった味は無かった。全身力みなぎって来る、という訳でも無い。見た目以外は、単なる水だ。なのに、これをどうかすると神秘的な力を得られるのだから不思議としか言い様がない。
色々と気になることはあるが、その日はそのまま泊まり、翌日の朝から次の目的地サリシュへと向かうことにする。
◇ ◇ ◇