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「ほぅ。お前さん、ポルトス達を知っておるのか?」
小屋の中にはシャリルの他に、メルという女の子とグランチェ・グーズリーという元科学者会の元老だった人が居た。今は招かれ、それぞれ椅子に座りお茶を頂いている。
「はい。鉱山都市カルタゴで知り合って、それから色々とお世話になっています」
「ハハハ! アイツらが他人の世話をするとは大したもんだ。何か代わりに、要求されたのではないかな?」
図星だ。
「まあ、そんなとこだろう」
どうやら顔色で読まれたらしい。凄く勘のいい人のようだ。
「それは何を作っているのですか?」
何か液体のようなモノを混ぜ合わせていた。しかも驚く事に、それをメルという十三歳の女の子が行っていたのだ。
「この奥の部屋に、不思議の国からやって来た女の子が居ってな。その子を救えないかと色々試しているんじゃが……なかなか上手くいかなくての」
「不思議の国?」
それこそ不思議な顔をしていると、グランチェが奥の部屋へと案内してくれた。そこには、青白く美しい髪の女の子が苦しげに汗を吹き出し眠っていた。
「この子は、パーラースワートローム人じゃよ……」
「パーラースワートローム!?」
それは、随分と前にフォスター将軍が攻め入った国の名前だった。
「その土地の者は、その地に流れる川の水を飲まなければ生きてはいけない。故に、この子は今その水を求めるが飲むことが叶わず、苦しんでおる」
「そんなことが……」
「あるんじゃよ。代わりにその地の者たちは、不思議な力を使える。魔法じゃよ」
「……」
そう言えば以前、聞いたことがある。その地の者は魔法を使え、不老不死にさえなれるのだという言い伝えだ。その力欲しさに、キルバレスはその地を攻めた。しかし無敗を誇るキルバレス軍でさえ、未だその地を得ることが叶わずにいるのだ。
「何故、こんな所に……」
その地の者が、何故こんな所に居るのかが不可解だった。
「キルバレス兵に囚われ、首都に連れて行かれるところを救ったのよ」
メルという女の子だった。部屋の入口からこちらへと来て、両膝をつき、ベットで眠る女の子の手を握りしめた。
「フィオーネは悪くないのに、キルバレスの人達は一方的だったの。許せないわ!」
真剣な目でそう言って、手をぎゅっと握りしめている。
「あと少し……あと少しだからね。フィオーネ」
あと少し? あと少しで、それが完成するということなの
だろうか? 精霊水……そんな言葉を聞いたことがある。それが出来たら、凄いことだ。
フィオーネが眠る部屋を出て、再びテーブルの上に瓶が沢山並ぶ部屋へと戻る。メルは戻るなり、直ぐに研究を始めた。
瓶の中の液体同士を少しづつ混ぜ合わせ、その反応をみて、これまた不思議な赤い石が入った容器へと入れて試していた。
「魔晶石じゃよ。この石は、不思議と精霊水に反応するのでな。利用しておる」
「魔晶石……」
中央付近が仄かに赤く光る不思議な石だった。その石がメルが注ぐ水に反応して、ハッキリと光った。それを見て、メルは直ぐに立ち上がり、混ぜ合わせたその水をフィオーネに飲ませてあげる。が……直ぐに咳き込み口から戻し、それが不完全なものだったことを理解する。それでメルは、静かに元気なく戻ってくる。そして、口を開いた。
「……色々と、あるだけのモノは試して来た。でも、ダメだった……。まだ諦めるつもりはないけど。でも……。
お願い、旅の方! 普通と変わった水のことを何か知っているなら、教えてください! お願いします!!」
「そう言われても……」
「いや、あるぞ」
ファーが何か思い当たる顔をした。
「アクト=ファリアナの近くの泉で、最近不思議なことが起きているらしい。まるで鉱山都市カルタゴのような話だから、気にはなっていたんだが……」
「カルタゴ……あ、そうか」
ポルトス技師達が扱っている水も、不思議なモノだったのを思い出す。
「あるんですか!? あるんですね!」
メルが目を輝かせ、そう聞いてくる。
「ああ、ある」
「だったら、ここへ届けてくれませんか? お願いします!」
「分かった。そうするよ」
メルと約束をし、警備員の1人にアクト=ファリアナ近くにある泉から水を汲んでくるように伝え、直ぐさま急ぎ向かわせる。そして同じく、鉱山都市カルタゴにも1人向かわせた。
「この技術を奪われないよう、此処の警備も厳重にして置いたが良さそうだね」
「そうだな」
という訳で、五名を此処の警備として残すことにする。なので、残りの警備隊六名となる。
この日はパレスフォレストに泊まり、翌日の朝から鉱山都市アユタカを目指すことにした──。
第二部 第14章 【メルとの約束】 終
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