表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二部 第14章 【メルとの約束】
129/170

─2─


 翌日、アヴァインはギルド本部へと向かった。ハインハイルとブリティッシュにアクト=ファリアナが今置かれている現状を知らせ、協力を得る為にだ。


「話は分かった。で、協力することでうちのギルドに何か利益はあるのかい?」

「少なくとも、キルバレス支配下では非公式だったギルドが、公認されることになります。これは十分な利益ですよね?」

「……確かに。だが、それだけで皆を納豆させることは難しいよ。さて、どうする?」

「自分が預かる軍の軍事物資の優先取引をブリティッシュさんの所へ独占的に委ねる……ということでは?」

 その提案に、ブリティッシュは笑みを浮かべた。


「ふん……分かった。うちとしても、これ以上キルバレスから言い様にされるのは御免だからね。協力することにするよ」

「ありがとうございます」


 その話し合いは1時間程で終わり、アヴァインは十三人の警備隊員とファーを伴って、急ぎ州都アルデバルを目指した。


 馬での移動だった為、州都アルデバルには夕方を過ぎ夜暗くなる前には着いた。そのまま自分が持つ邸宅に向かい、久しぶりにハマスやコージと再会した。


 警備隊員にはそれぞれ休んで貰い、ファーと共に居間に移動してブドウの搾り汁を頂き、ハマスに色んな話しをした。

「状況は分かりました。そうなると我々は如何したが宜しいでしょうか?」

「出来るだけ早目にアクト=ファリアナへ。既にアパートを借りてあるから、暫くは皆そこに住んで貰うことになる」

「畏まりました」

「その際に、聖霊兵器や弾薬を運んで貰いたい。実戦でどのくらい使えるのかは分からないけど、無いよりは良いからね」

「承知しました」


 弾薬も数は十分とは言えない。再びポルトス技師達の元へと向かい、頼む必要があるだろう。数でキルバレスに劣るアクト=ファリアナが勝利するには、聖霊兵器は必須だと感じていた。それにキルバレスも、この兵器を使って来ないとは限らないのだ。十分に用意する必要がある。



 次の日、アヴァインは属州国コーデリアの州都アルデバルの評議会議員ファインデル・ヒルデクライスの元を訪れた。ローズリーの父親である。


「なんと、キルバレスがアクト=ファリアナを……」

「まだ断定出来ませんが、その恐れがあります」

「不味いな、そうなると大変なことになる。この州都は、間違いなく火の海だ」

「恐らくは……。出来るだけそうならないように取り計らいたいと思いますが、それにはファインデル評議員の御協力が必要です」

「私の力? それは何ですか」

「この州都の無血讓渡」

「──!?」

 ファインデル評議員の顔色が真っ青になる。


「この私に、キルバレスを裏切れというのか!?」

「はい。そうしなければ、アルデバルは必ず火の海になります」

「くっ……。しかし、キルバレスにアクト=ファリアナは勝てるのか?」

「その場合は、同じくアルデバルを無血解放致し、お返しますよ」

「……その時は、君がアクト=ファリアナを裏切るという訳だな」

「ええ、必ず説得しそうします」

 その時のアヴァインの表情と目を見つめ、ファインデル評議員は静かに頷く。

「分かった。君を信じる。アルデバル市民の為にも、その作戦に乗ろう」

「ありがとうございます」

「だが、これは此処だけの話だ。他言無用に願いたい」

「分かっております」


 ファインデル評議員に礼をし、部屋を出るとローズリーが立っていた。


「お久しぶりね、アヴァイン」

「ああ、そうだね」

 アヴァインはローズリーに招かれるまま、ローズリーの部屋へと入った。そして入るなり、キスを迫られる。が、ケイリングの事があるので、罪悪感を感じ、ギリギリの所ではぐらかし逃れた。

 一方、ローズリーは頬を膨らませ不満そうな顔を見せている。


「長く会わないうちに、何かあった?」

「別に……」

「うそ。何かあったでしょ? まさか浮気?」

「浮気って……ファインデル評議員が聞いたら勘違いされてしまう」

「勘違いさせたら良いじゃない。実際私たちは、もうそういう関係なんだから」

「……」

 何度か誘われているうちに、そうなったのは確かだった。ローズリーに対し、気持ちが無いと言えばそれも嘘になる。何処かルナ様に似たローズリーに、魅力を感じていたのは確かだ。


「ローズリー。君にも言って置きたいことがある。出来るだけ早い内に、安全なキルバレスの内地へ逃れて欲しい」

「……この都市は、火の海にならないんじゃなかったの?」

「可能な限り、そうならないようにはするけど。絶対の約束は出来ないからね」

「キルバレスへ逃れたら、いつ迎えに来てくれる?」

「……それは分からない」

「だったら嫌」

「ローズリー……頼むよ」

 アヴァインの困り顔を見つめ、ローズリーはその頬にキスをする。アヴァインは驚いた顔を見せた。

「アヴァインの頼みじゃ仕方ないな。分かったわ」

「あ……ありがとう」

「可能な限り、そうするようにする!」

「えっ、ちょっと!?」

 ローズリーは笑いながら部屋を出てゆき、誘うように逃げていった。アヴァインは困り顔のあと、それを追いかけながら笑む。



  ◇ ◇ ◇


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ