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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二部 第12章 【心友倒れる】
122/170

─5─

「此処か」

 リシウス憲兵長はそう判断するや否や、部下十人を建物の周囲に走らせ、五名づつを出入口に配置させた。各人、剣を抜き構えている。


「まあ、これで賊徒も一網打尽だろうな」

「ファー……これはどういうこと?」

 騎乗したまま近くに来たファーにそう話し掛けると、ファーは肩を竦めた。

「どうもこうも、城へ行ったらリシウス憲兵長と出会って、事情を話したら、この有様さ」


 結局、部下を呼ぶ暇も無かったらしい。


「まあバレ無ければ、なんてことないさ」

「簡単に言うよな……」

 ファーとそんな話をしていると、誰かが近づいてきた。

「貴様がアーザイン殿か。商人にして、大成しているそうだな」

 リシウス憲兵長だ。

「恐れ入ります……」

 よりにもよって、今一番会いたくない人物に会ってしまった。ここは何とか、身元がバレないようにやり過ごすしかない。もしもバレて、オルブライト様との関わりを疑われでもしたら、オルブライト様に迷惑を掛けることになる。それだけは避けたい。


 幸い、今のところ気づいた様子もなく、偽物を捕らえることに集中しているようだった。


「かかれ!!」

 リシウス憲兵長の指示を受け、憲兵隊が宿屋の中へと一斉に突入を開始した。


 中で複数人が暴れ家具や机などが倒れたり、投げつけられたりする音が聞こえてくる。そんな中、窓を突き破り、一人の男が飛び出す。素早い動きで憲兵長の脇を通り抜け、自分の前を走り過ぎようとした。


「逃がすか!」

 アヴァインは咄嗟に偽物の胴体辺りを捕まえ、ゴロゴロと倒れ込む。

「離しやがれ、この野郎!!」

「離すか!」

 数度、頭や顔を仮面ごと殴られたが、同じくらい殴り返してやった。

「ちきしょ!」

 そう言って男は細く鋭い物を振り回してきた。この時、うっかり腕を切ってしまう……。男から距離を取り、仕方なくこちらも剣を抜き構えた。が、間もなくリシウス憲兵長が男の後ろから剣の腹で殴り倒していた。見事だ。


「御苦労! 城へ帰る」

 偽物の一味は憲兵隊に捕まり、縛られ引きづられ、城へと連れて行かれた。

 アヴァインは、ホッとして痛む腕も押さえながらその場を離れることにする。


「アーザイン殿」

「──!?」

 去ろうとした所へ、リシウス憲兵長が声を掛けてきた。

「貴殿も城へ。手当を致しましょう」

 痛む腕を指差し、そう言ってきた。

「いえ、お気遣いなく。大したことはありませんので」

「とてもそうは見えないが……」

 腕辺りの服が、血で真っ赤に染まっていた。思っている以上に、傷が深いのかもしれない。

「遠慮は無用だ。我々憲兵隊には、救急対応の部隊が居る。腕は確かだ。兎に角、功を弄した者の怪我一つ見ないでは、我が憲兵隊の名折れだ。すまないが来てくれ」

「……」

 ここまで言われて断るのは、返って怪しまれ兼ねない。アヴァインはそれを受け入れ、城へ行くことにした。



  ◇ ◇ ◇

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