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「なに? アヴァインが、アクト=ファリアナに!?」
「ハッ。夜な夜な現れては、金品を強奪。更には、女子供に手を掛けているとの情報です」
電信官のその報告にディステランテは違和感を抱いたが、そのまま受け止め直ぐに下がるよう命じた。電信官はそれで下がり、代わりにスカンク貴族員が皇帝執務室へと入ってくる。
「やれやれ、アヴァインとやらにも困ったものですな」
ニヤニヤ顔でそういうスカンク貴族員をディステランテは見つめ、瞬時に悟った。
「白々しいことを言うものだ、スカンク貴族員……どうせこれも、お前の差し金だろう」
「ほほぉ、バレましたか」
策がバレたのに寧ろ喜んでいる男を、頬杖着いてディステランテは遠目に見つめた。
「これも、メルキメデス家を貶める策のひとつという訳か?」
「御意に」
「……怖い男だな、お前は」
「恐れ入ります」
まるで恐れ入った様子の無いスカンク貴族員を見つめ、ふっと笑み、表の者を呼び出し命じた。
「憲兵長リシウスを呼べ! 直ぐに、アクト=ファリアナに向かわせるのだ」
◇ ◇ ◇