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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二部 第11章 【権力と財力】
117/170

─7─

 ケイリング・メルキメデスはファーからの報告を受け、アクト=ファリアナに僅か数日滞在後、パレス=フォレストへと向かった。アヴァインがそこへ来ると、聞かされたからだ。でも、それは嘘である。こうでも言わなければケイリングが此処から動かないと、ファーが感じたからだ。


 それに遅れての二週間後……ハインハイルは各地の拠点を巡りながら、ギルド本部があるアクト=ファリアナを目指すことにした。一定の成果が首都キルバレスで達成出来たのと、アヴァインの件で今は滞在することに危険を感じたからである。直接、戴冠式の件に関与こそしてはいないが、ただ顔見知りというだけでも捕らわれ兼ねない雰囲気があったのだ。


 一方、アヴァインは首都内が穏やかでない中、1ヶ月程潜伏し、大道芸人の一座に紛れ込んで首都を抜け出した。そしてカナンサリファへと辿り着き、州都アルデバルを目指す。今はその途中にある鉱山都市カルタゴのロゼリアばあさんの家へ、事後報告にやって来ていた。


 事件から既に、三ヶ月が経っている。


「そうか、撃ち漏らしたか」

「それは誠、惜しいことをした」

「全くだ」

 ロゼリアばあさんの家に居るパウロ、ポルトス、バリエルに首都キルバレスでの事を話すと、三人はそう返してきたのだ。更に、


「奴は、キルバレスに巣食う癌だからな。早目に除去するのが肝心じゃろうて」

「癌はちと言い過ぎだ。寄生虫くらいにしとこうかい」

「全くだ」

 散々な言い様である。でも言ってる本人達に、悪びれは無い様子だ。


「なあ、アヴァイン。この爺さん達、大丈夫か?」

「こう見えても元は、科学者会の元老員だよ」

「そうなのかッ!?」

 ファーは心底驚いていた。

 あれから一度はケイリングをパレス=フォレストまで送り届けていたファーだったが、その後直ぐに首都まで戻り、アヴァインと合流していた。心配で仕方がなかったのと、ケイリングからの指示でもあった。


「それで、聖霊兵器はどうしたんじゃい?」

「すみません。途中で落としてしまいました」

「ふむ……。まあ、それで足がつくことはあるまい。大事ない」

「いや。残念じゃが、ワシが記念で銃身にポルトスと名前を彫っておいた。大事はあるの。ファッフアッ♪」

「なんじゃとッ!? それは大事じゃっ!!」

「心配するな。それならワシが消しておいたわ。安心しろ、大事ないぞ」

「なら、安心だわい」

 まるで冗談のような会話である。


「それで、これからどうするね?」

「取り敢えず州都アルデバルへと戻り、様子を窺いながら力を溜めるつもりです」

「力とは、財力のことかの?」

「まあ、彼は商人だからね。そうなるじゃろ」

「ええ、そうなります」

「それで、力を貯めてどうなされる?」

「わざわざ溜めてまでするのじゃから、金の力で相手に言うことを聞かせるのじゃろ?」

「金の力で、あのディステランテを追い出すか?」

「これは滑稽じゃな、ファッフアッ♪」

「え、あの……?」

 アヴァインにはパウロ、ポルトス、バリエルの三人が何を言いたいのかがよく分からなかった。


「言いたいことが、よく分からないのですが……」


「権力の力で、周りを黙らせ、従わせるディステランテ」

「金の力で、周りの者達を誘惑し、従わせるお前さん」

「結局やっていることは、どちらも大して変わらん気がしてね」

 息のあった三人のその返答に、アヴァインは息を飲んだ。


「別に、お前さんをそれで責めるつもりはない」

「そうじゃ、気にするでない」

「ファッフアッ♪」

 気にするなと言われても、気になってしまう。ディステランテと自分が同じだなんて、考えられないことだ。


「実際、ワシらもお前さんの金の力に誘惑され従わされた。ホレ」

 そう言って、ポルトスはアヴァインの前に小さな小瓶を置いた。中には、青白く輝く不思議な液体が入っている。


「これは……?」

「前回貰った金で作った秘薬じゃよ。どんな傷でも忽ち治す魔法の薬となる」

「ホントかよ!?」

 ファーが驚いている。


「ホントじゃ。お前さんも疑い深い男じゃのぉ~」

「まあ、それも若さじゃろうて。ファッフアッ♪」

「……」

 凄い。これが本当にそんな薬だとすれば、凄いことだ。


「権力も力、金も力じゃ。取り扱い方を間違えれば、どちらも人を傷つける暴力と成りうるし、薬にも成りうる、ということじゃよ」

「どちらにも人を惑わせ従わせる、魔法のような力があるからの。コレのように」

「ファッフアッ♪ 夢ゆめ、その力に溺れることがないよう努めることじゃ。また、与える相手も間違わぬようにの。その点、お前さんは運が良い」

「ワシらのような賢人へ、与える機会に恵まれたのじゃからな」


 パウロはそう言ってニヤリとし、手のひらを返し、チョイチョイと手招きしていた。

 それを見てアヴァインは苦笑いつつも、バックの中から銀貨5000枚ほど入った袋を取り出し、手渡す。


「今はこれだけしかありませんが、足りますか?」

「ああ、十分じゃ。またええもん何か作っといてやろう」

「ファッフアッ♪」

「ついでにホレ!」


 ポルトスが置いてあった筒状の何かを軽く放り投げ渡して来た。

「聖霊兵器じゃ。三丁ほど持っていくがよい。何かの役には立つじゃろ」

「あとコレも持って行きな」

 次に、バリエルが箱の中を指差す。

「弾じゃよ。たんまりと作っておいた。コレが無くちゃ話にならんでな。ファッフアッ♪」

 見ると、箱一杯に小瓶が詰まっていた。至れり尽くせりだ。


 アヴァインとファーはロゼリアばあさん達にお礼を言って、鉱山都市カルタゴへと戻り。翌日、早朝から州都アルデバルを目指し出発することにした。


第十一章 ─権力と財力─ 終


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