─2─
「──アヴァイン!? アヴァインが現れたの?」
ケイリングはガストンからその名を聞くと同時にその場で立ち上がり、来賓席の者達が後方へと逃げてゆく中、逆に前の方へと懸命に向かい、身を乗り出してその屋根の上を見渡した。でもその姿は既に無く……今は衛兵達が屋根という屋根に上り、探し回っているばかりである。
「ケイリング様、危険です! 早くお逃げ下さい!!」
追いかけて来たファーにそう言われるが、ケイリングはその場から動かなかった。
「近くにアヴァインが居る! ファー、探して来て!!」
「えっ!? アヴァインが?」
瞬間その名に驚いたが、直ぐに状況を把握し、気持ちを切り替えた。
「そうかも知れませんが、あまり無茶を言わないで下さい。こんな状況です。今は、探し出しても捕らえるしかありませんよ。メルキメデス家の衛兵隊長としての立場というものがあるんです」
「……」
今はキルバレス中の衛兵が、アヴァインを捕らえる為に総動員されているに等しい筈だ。下手な動きをすれば、メルキメデス家がこの件に関わっているなどと疑われ兼ねない。それを考えれば、ファーが言っていることは正しい。でも、
「それでも……お願い…」
「……わかりました。何とかしてみます」
ファーはケイリングの頼みを仕方なく聞き入れ、その場を離れた。
◇ ◇ ◇