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次の日の昼頃、戴冠式となるこの日。ケイリング・メルキメデスはシャリルとメルを伴って、貴族員などが座る来賓席にやって来た。
先ずはケイリングが席に座り、シャリルとメルはその後ろに控え立つ。
「見てよ、あの子。フォスター将軍の……」
間もなく、シャリルを見る人達の間からそんな噂話が聞こえて来た。
「噂には聞いていたけど、まさか本当に……」
「メルキメデス家の庇護を受けていたとは、恐れ入ったわね」
「こうなると、メルキメデス家も分からないわ。フォスター将軍と裏で手を繋いでいるのではないかしら……?」
そういったある事ないことが聴こえて来る中、ケイリングとメルは同時に振り返り、後ろの婦人共を厳しい表情で見つめた。それを受け、婦人共は忽ち怯え黙り込む。それからシャリルをそっと見つめ、「気にすることないから!」「気にすることないわよ!」と同時に言った。
それを受け、シャリルは涙を流し感謝をし。メルは、そんなシャリルを優しく抱きしめ慰めた。
その後、戴冠式は厳かに始まった。
初めに聖歌が歌われ、大司教が現れ、大勢の衛兵隊員が素早く両側に並び立ち、それに続く形でディステランテ・スワートがニンマリ顔で姿を悠々と現す。
そして、そのまま戴冠式様に設けられた高台にまるで当然であるかのように歩み進み、大司教より祝祭の言葉を受け、皇帝冠をその頭に載せられる。
それから、立ち上がって間もなくのことだった。
青白い光が、ディステランテが被るその皇帝冠へ目掛け当たり、それを貫いていた!?
ディステランテは驚き後ろに倒れ、激しく破壊された真っ赤に熱く溶けゆく皇帝冠を見つめる中。その無惨な皇帝冠の近くに、再び青白い光が当たり、激しく焼き尽くす! それを見てディステランテは更に驚き怯え、後ろに這いつくばって逃げ出した。
すると再び、その目の前に青白い光が当たる!
「お守りしろ!」
衛兵隊長ガストン・オルレオールの言葉を受け、衛兵隊員がその周りを囲み、ディステランテはパレスハレス建屋内へと情けなくも逃げ込んでゆくのだった──。
◇ ◇ ◇