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「明日の戴冠式の準備は、予定通りに進んでいるのであろうな」
「はい、ディステランテ様」
パレスハレスの見える議員宿舎の二階の窓辺に立ち、ディステランテ・スワートはワインを片手にニヤリと笑み口を開いた。
「実に長い道のりであった。これで、目障りな科学者会や貴族員共を黙らせることが出来よう。
だな、沿海属州国アナハイトのスカンク貴族員殿」
「はい、左様にて御座います。
此方と致しましても、早くキルバレスより派兵して貰わねば困りまするので……。いつ、フォスター5万の軍勢が我がアナハイトへ攻めて来るかと、国民は日々怯えながら暮らしております」
「分かっておる」
フォスター謀反の知らせを受けた共和制キルバレスは、その対応を議会にて話し合い、二万の軍勢を派兵することで決めた。
が、結果は敗走となり、更なる対応が必要となった。
同じ頃、まるでタイミングを見計らったかのように北部のガルメシアにて反乱が起き、その対応にも議会は追われることとなる。が、なかなか話はまとまらず……議会政治の弱点が、此処で露わになった。
国民の政治家に対する苛立ちも高まり始め、危機に対する力強いリーダーシップ……対応力が求められるようになる。皇帝任命制度が議題に上がったのは、その頃からであった。そして、その初代皇帝として選任されたのがディステランテ・スワートである。あくまでも議会制民主主義のルールに則った決定であった。
「私が皇帝となった暁には、討伐軍を直ぐにでも派遣させよう。北部ガルメシアも、年内には滅ぼしてくれるわ」
「頼もしい限りです」
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