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『パラド=スフィア物語』 -カルロス-(オリジナル)  作者: みゃも
第二部 第10章 【キルバレスの女神】
103/170

─2─

 その頃、アヴァイン達一行は首都キルバレスに丁度到着していた。北の警戒厳重な門を潜り抜け南へ暫く行くと、一際目立つ絢爛豪華な建物が見え始めた。


「すごい! アーザイン様っ、あの大きな建物はなんなんですかぁー!?」

「最高評議会議事堂パレスハレスだよ。この国の政治全てが、この建物の中で決められているんだ」

「へぇ~っ」

「これがですか!! 噂には聞いたことありますっ!」

「ひゃ~っ。ホント、ばっかデカいなあーっ」


 八人乗りの大きな荷馬車にアヴァイン、ハインハイル、ミカエル、コージ、それからハウスメイドのロムニー、コーゼ、クラインが乗り込んでいた。三人のメイドが乗っているのは、ハインハイルによる独身アヴァインへの気遣いらしいが……本当のところは分かったもんじゃない。実際、ハインハイルのイヤらしい目線が三人のメイドへとちょいちょい注がれていた。


 そんなハインハイルをアヴァインとミカエル、それからコージは困り顔に見つめている。そうした視線を感じつつ、頬を赤らめたハインハイルはわざとらしい咳払いをひとつして演説を始めた。


「あ~、オホン! いよいよ、ハインハイル交易ギルドとして初の首都キルバレス入りとなった訳だが。その目的は勿論、新たな拠点を此処に作ることにある。

まあ拠点といってもだ。オレ達が幾ら、ギルドは行商人にとって必要不可欠なものだ、と訴えたところで。この国が国営ギルド以外を非合法である、としているからには初めは闇市という形で始めるしかないんじゃないかとオレは思う……。全く納得は出来ないことだがね。

そこでだ。理解ある役人や政治家を事前に見つけ出しておき、その者達とのパイプを持ち、時に力を借りれるようにして置いて損は無いと思う。

困った時は、お互い様!ってわけだ」


 アヴァインもミカエルもそれには納得して頷いた。


「この役を……ミカエルさんに是非ともお願いしたい」

「わかりました。やってみます」

「ありがたい!

そして次に大事なのが、地元商人の我がハインハイル交易ギルドへの加入斡旋だ。

これは、アーザインにお願いしたい。人たらしの腕の見せどころに期待ってやつだな」

「人たらしって……まあ期待に沿うよう努力はしてみますよ」

「ハハ! いや、すまんすまん。

わたしはその間に、この首都での我らが拠点となる建物を探してまわることにするよ。まあ期待しておいてくれ」


「ハインハイルさん、その間にわたし達は何をしていたら良いのですか?」

 メイド三人のそんな問いに、ハインハイルは満面の笑みでこう答えた。


「物件が見つかるまでは何もやる事は無い。宿屋でゆっくりと休んでな!」

「「「やった!」」」

 瞬間、馬車が大揺れし活気立った。



 その日は、首都中心部から外れた郊外に近い宿屋に、馬車を停めた。このくらいの大きな荷物と馬車を停められる宿屋となると、どうしても限られてしまうのだ。アヴァインとしてはこの方が都合が良かった。仮面で誤魔化しているとはいえ、自分は手配者なのだから……。


「ケイリングは今、この首都に居るのだろうか……」


 ぶどうの搾り汁を片手にアヴァインは窓辺に立ち、ふとそう思い零す。

 宿屋の二階から眺める首都中心部からの光は、とても遠く感じられた──……。


◇ ◇ ◇


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