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第2話「満ちる時の調べ」

My Mellow Time ~魔女ドロシとお菓子な仲間たち~ あらすじ 舞台は実在しない架空の世界。ストーリーが進むにつれて登場するいくつかの地名から、パラレル・イタリアとも言える。 物語はナポリという街で暮らす、主人公メアリード・ドロシの幼き日の回想シーンから始まる。 17歳になったら魔女として自立する。突然の両親からの将来の予告に戸惑いながらも、 持ち前の好奇心と探究心、そして情熱から17歳の誕生日当日にはバッチリ出発の準備を整えていたドロシ。 奇しくも幼き日を共に過ごした二人、ジェミ、ワジンと同じ目的地を目指し、夢であるパティシエになるべく旅立つのであった。 そしてノベル第二話で登場するシェイン青年。物語に大きく関わる副主人公的存在となる彼もまた、 17歳の誕生日を迎えガラス細工の職人になる修行の為、 ドロシと同じくオケムジーク魔法国、首都にして水の都として名高いヴェニスを目指していたのであった。 登場キャラクター数、総勢30余名。個性あふれる愉快な仲間たち。 物語の主軸となるのは、ドロシとシェインの波乱に満ちた恋愛模様。 最大のテーマは「恋」!周囲の様々な恋愛模様も絡めつつ(同性愛でもなんでも)、ストーリーは進む。 そして、劇中にて途中登場する主人公ドロシの中のもう一人の人格ルンカ。 変態で奔放な彼女が引き起こすハプニングに加え、浮かび上がる謎の存在、聖人。 そして物語はドロシとシェインを中心に、世界の変革を左右する事件に巻き込まれて行く。。。といったストーリーになっております! 誠に拙い作品ではございますが、読み手様の心に少しでも波紋を起こす事が出来れば幸いでございます。どうぞ宜しくお願い致します!

My Mellow Time

〜魔女ドロシとお菓子な仲間たち〜

第二話

「満ちる時の調べ」


劇中表記

S シェイン

J ジャガー

M ミュー

s ソレイユ

c シーマ

F フリーダ



ドロシの旅立ちから数時間後。

同じくヴェニスへと旅立つ一人の青年がいた。



S「僕も魔女みたいに空を飛べたらなあ。きっと素敵な気分になれるだろうな」


僕の名前はシェイン。今日で17歳になった。

一ヶ月前の一人旅がきっかけで、修業先を芸術の都ヴェニスに決めた。

ガラス職人の仕事に興味があるんだ。

「ヴェニーチェ・グラス」っていう代物さ。それはそれは美しいんだ。

体験工房で制作した僕の処女作、ちょっといびつな形だけど結構気に入ってる。

ある体験から得たインスピレーションを表現してみたんだ。

その体験っていうのは・・・実は、なんていうか気になる女の子がいてさ。

一瞬見かけただけだけど、忘れられないんだ。

あんなに毛が逆立つような感覚、生まれて初めてだ。

僕の全細胞が彼女に惹かれたんだよ。まあ、単なる勘違いかもしれないけど。

ま、そんなこんなであの街に決めたって訳さ!

動機が不純かい?いやいや、恋だって十分に有意義な動機さ。

今はヴェニスへ向かう旅路の途中。

間抜けなことに、連絡船のチケットを無くしちゃって海の上を走ってる。

そうそう、アクア・ステップはさっき編み出したばかりなんだ。

一番驚いてるのは僕だよ。まさか出来るとは思わなかったからね。

まだ慣れないから神経を使うよ。気を抜いたら、ドボンだ。

普通の地面を蹴る1/10の力加減に加えて、真逆の10倍量のステップを要求される。

仮にスタミナ切れした場所が海上だったら面倒だから、

途中出くわした島で休むようにしてるんだ。

ところで、さっきから気になってるんだけど、上空に現れたあの紳士は誰なんだ?

僕の進行方向からやってきて、行き違うかと思ったらずっと付けてくる。

ほうきも無しで空に浮かぶ男。何者だろう?

走り続ける僕に、紳士が近寄ってきた。

直立のまま、僕と同じスピードで海上を飛んでいく。


J「・・・」


S 何も語らない。そして、顔が近すぎる・・・。おかしな人だなあ。


S「・・・あの!僕になにか用ですか!?」


J「!」


S 僕の問いかけに、彼は驚き目を丸くした。


J「なぜ我が輩の存在に気づいたのかね!」


S「何故って・・・今も目の前にいるじゃないですか」


J「!・・・むう。我が輩、上空から君を観察しておったはずだが・・・

 いつのまにやら至近距離まで来てしまっていたようだ」


S「はは!僕が珍しかったですか?」


J「左様。海を駆ける少年など見たことがないのである」


S「僕はシェイン。あなたは?」


J「我が輩の名はジャガー。突然の非礼を詫びる。驚かせてすまない」


S ジャガー・・・?はて、聞いたことあるような・・・ないような。


J「これからどちらへ行くのかね」


S「ヴェニスです。ジャガーさんは?」


J「我が輩、散歩の途中であるが、このままヴェニスに戻ることにした。

 ・・・もし良ければ、一緒に散歩しながらヴェニスへ参らぬか?」


S「散歩ですか?是非お受けしたいんですが!僕はこれ以上スピードを落とせないんです!」


J「宜しい。このペースでは、ヴェニスへの到着が真夜中になってしまうのでな。

 我が輩に任せるが良い。君に翼を授けよう」


S「・・・翼?」


J「左様。さあ、その背中に翼があるつもりで羽ばたいてみるのである」


S 背中に翼だって?

 あれ?ジャガーさんと目が合ったまま逸らせない!

 でも不思議と今なら飛べる気がしてる!・・・・・・こうかな?


S「うわわ!と、飛んでる!?ジャガーさん、これは・・・!」


J「シェイン君、決して疑うことなかれ。全てはイマジネーションだ。

 空を飛ぶイメージ。・・・そうそうその調子だ。

 さあ、スピードを上げようではないか。

 そしておしゃべりを楽しもうぞ」


S「えっ?えっ?こっ、こうですか!?うわわわ!」


 世界が猛スピードで飛び去る!


J「やはりスジが宜しい。この我が輩を追い抜くとは!」


S「す、少し分かってきました!でもこれって、催眠魔法の一種ですよね!僕の意識に・・・」


J「いかん!飛ぶことに集中するのである!」


S「あれっ?海面が猛スピードで迫ってくる!! 

 これって、落ちてる?!・・・ぶへっ!!!」


J「・・・ふむ。これはどうやら、我が輩の裁量不足で間違いないのである」





 オケムジーク魔法国

 首都ヴェニス 王宮庭園


J「おお、ミュー様。早速ですが、お願い致しますぞ」


M「ジャガー、その少年は?」


J「説明は後ほど。少年は首の骨が折れております」


M「やれやれ、仕方のない男よ・・・。これ、少年。

 このミューの撫声なでごえに耳を傾けておくれ」



 絹のように滑らかな声が、ミューのくちびるからこぼれる。

 夕闇の中でその声は、星の瞬きのように煌めきながらシェインを包み込んだ。



S「・・・うっ! 僕は・・・?あれ・・・ここは?」


M「お目覚めかい?私の名前はミュー。そして、ここはヴェニス。

 オケムジーク王宮の庭園さ。他に質問はあるかい?」


S「ミュー!?あ、あの大魔女ミュー!?」


J「左様。こちらにおわすのが、オケムジーク魔法国女王、大魔女ミュー様である」


S「!」


M「・・・さて、ジャガー。説明をなさい」


J「は。実は・・・」


S ジャガーさんは、僕との出会いからの一部始終を女王に話した。


J「面目ありません」


M「そなたはこの国の大魔導であろう?要職に就く者としての自覚が足りぬ。

 このような若い命を危険に晒すとは」


J「仰せの通りにございます」


S 思い出した!

 女王ミューと並ぶ、ヴェニス双頭のリーダーにして生き字引きの大魔導ジャガー!


J「シェイン君。この度は申し訳ないことをした、すまぬ。穴があったら入りたいのである」


S「いえいえ。こうして無事なんですから気にしないで下さい!

それにしてもなんだか僕、すごい人たちと話してるなあ」


M「シェイン。お詫びといってはなんですが今夜の晩餐、是非そなたを招きたい」


S「本当ですか!?嬉しいなあ!・・・じゃあ、お言葉に甘えて!」


M「宜しい、では後ほど。それまでのんびりとくつろぐがよい」


 僕とジャガーさんを残して、ミュー様は席を外した。


J「シェイン君、改めて謝罪をさせてもらいたい。本当にすまなかったのである」


S「ジャガーさん・・・僕はもう大丈夫ですから!

 あ、そんなことよりさっきから気になっていたんですが、

 そこここに飾られているガラス製の調度品、とても素敵ですね」


J「うむ。この王宮にあるベニーチェ・グラスは、

 全てわが国御用達の工房にて特注したものばかりである」


S「へえ、そうなんですか。どれも見事な作品ですね」


J「うむ、じっくりと見るがよい。

 むっ、いかん!我が輩、まだ仕事をちと残しておるのであった。

 すまぬが失礼させてもらおう。時間になったらまた呼びに来るのである。

 それまで自由に宮殿内を見学しておるがよかろう」


S「はい。では後ほど」



晩餐会まで、しばしの自由時間を手に入れた僕は、気の向くままに宮殿内の散策を始めた。

見事な作品達の飾られた真っ赤な絨毯の廊下を、キョロキョロ目移りしきりで歩いてゆく。

…すると、なにやら進む先から人の声が聞こえてくる。

どうやら、二人の女性が口論をしているようだ。


s「 シーマッ!……今日という今日こそはァ!…あんたとはっきり白黒つけてやろうじゃあないか!ええ?!」


c「 はん、呆れた。生意気チャンバラ小娘が性懲りも無く。

 …まだこのアテクシに刃向かおうと言うの?…ふっふ、笑っちゃう」


s「 …ほざくのも大概にしな。これでも一応、王宮近衛兵団隊長という重責を担う私だ。

 いつまでも小娘だと舐めていると。貴様のそのか細い首など一瞬で落として見せるぞ?」


c 「…うぶなことを。笑止!アテクシとて仮にもこの国の特級精鋭魔導師を率いる立場ゆえ。

 野蛮なるおぬしらチャンバラ集団などにはひけをとっておられぬのよ」


s「 …御託はいい。構えろ、シーマ」


c 「…はん。…どこからでもおいでなんし」



S(えっ…!?おいおいあの人達…まさかここで戦うつもりなのか!?止めなきゃ!)



S「あっ、あのーっ!!お取り込み中すみませんがっ!!」


s 「…む。貴様、何者だ…!」


c 「あら、かわゆいコ。お姉さんに何か御用?」


S「えっ…あっ、あのっ!喧嘩はもうやめてください…!事情は分からないですけど!剣を収めてくださいっ!」


s 「ち…余計な邪魔を。…ふん、興醒めだ、改める。…命拾いしたな、シーマ」


c「 ふふっ。弱き犬ほどよく吠えるとはよく言ったものよね。笑っちゃう、ふふふ」


c「 …何?もう一度言ってみろッッッッッ!!」


S「ちょっ…やめてくださいってば!」


c 「ええ、もちろん。ふふ。アテクシ、シーマと申しますの。お名前伺っても?」


S「あ…僕はシェインといいます!」


s 「どこから入り込んだ貴様」


S「えっ…わ、わかりません…気づいたらミュー様とジャガーさんに介抱されてて…。」


c 「まあ」


s「 …ち、客人か。これはこれは大変な失礼を。どうかこの卑しい魔女の無礼をお許しください」


c「 ふふふ…ソレイユ。おぬし、今なんと…?」


S「あっ…もう…!」


s 「聞こえなかったのか?この卑しく破廉恥でふしだらな下衆魔女め!」


c 「なんですってっ!!!」


S「い…いい加減にしろぉっ!!」


s「 うっ…」


c「 はっ…」


S「ハァハァ…やめてください」


s 「…シェイン殿、では私これにて失礼いたします」


シェインに軽く会釈をし、その場を立ち去るソレイユ。


c 「ふん…まったく失礼しちゃうわ。いったいなんなのかしら!憎たらしい。。。!」


F「あっ。シーマ様。。」


その時、時空を越え突然何者かが姿を現した。


F「こぎゃんとこにおったとですか。そろそろお時間ですばい」


c「あら!いけない。アテクシも今夜はちょっと秘密のパーリーにお呼ばれしてるんですの。

 シェインさん、どうぞごゆるりと宮殿の散策をお楽しみになって」


S「あっ、はい…。。


c「ごきげんよう」


S「行っちゃった。。。あ…どうも。。」


F「...一応。警告ばしときます...」


S「…け、警告…??」


F「もしあなたに.....シーマ様ばたぶらかすつもりがあっとでしたら。...この僕が許さんですばい」


S「い、いったい何の話をして…」


F「僕の名は、フリーダちゅうて....言ったらシーマ様の片腕みたいなもんですばい。おっと、時間ばい。

 ほんじゃあ。...失礼します」


S「なっ…なんだったんだろ最後のひと...!

 それにしてもなんだか、3人ともすごいオーラを持ってたなぁ…。怖かったぁ…!」


S(…じゃあ気を取り直して。散策を再開だ!)



 夢中で数々の傑作を見て回ると、あっという間に小一時間が過ぎた。



J「待たせたのである。では参ろう」


S ジャガーさんに案内されたのは、世にも美しい大食堂だった。

 目の前に広がる、極上の光景。

 見た事も、食べた事もない美食の数々に、僕のトキメキは最高潮!

 自然と饒舌になる!


S「そうそう、頭のなかにふわあっと響いたんです!

 あんな心地の良い声に包まれたら、もう!・・・あれが噂の撫声かあ」


M「フフ、そなた死にかけたのですよ。もう体調は良いのですか?」


S「ええ、この通り!それよりジャガーさんとの散歩、

 最高にエキサイティングしました!ほんの一瞬だったけれど!」


J「ふむ。我が輩もである。・・・は!失言であーる」


S「ジャガー、そなたを上回るスピードで飛ぶ事が出来たというのは誠か?」


J「は。我が輩も驚いたのである。あの時、我が輩は君に強い催眠をかけた。

 思い込みの持つ力に働きかけたのである。

 すると君は我が輩の言葉を即座に受け入れ、実行した。

 そして直後に訪れた安心から催眠の分析を始め、心にブレーキをかけてしまった。

 疑念が失墜を招くことを、真っ先に説明しておくべきであったな。

 しかし離陸時から上昇にかけての速度たるや、本気飛行の我が輩を抜きさるほどであった!」

 

S ジャガーさんが、あご髭に手をあてながら僕を見た。


M「たいした素質よ。末恐ろしい少年だこと」


S「光栄です。なんだか照れちゃうなあ。あ、そうだ。

 ・・・実は僕、ヴェニスにガラス細工を修行しに来たんです」


J「なんと。そうであったか。もしよければ知り合いの工房を紹介してもよいが」


S「えっ!!ほんとですか?」


J「キャズの工房ですな?我が国、御用達の工房である」


S「なんか・・・敷居高すぎませんか?・・・僕なんかが入門できるかな」


M「フフッ、なんとかなるであろう?そなたの見込んだ少年だ、ジャガー」


S ミュー様のお茶目な視線がジャガーさんに向けられた。


J「無論である。よいか、シェイン君。

 為せば成る、為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり、である」


S「???」


M「そなたその言葉、いったい何人に語れば気が済むんだい。

 ・・・宜しい。後で紹介状をしたためておく。

 それを持って工房の扉を叩くがよい。先に申しておくが、

 非常に人嫌いな性格の人物ゆえ、めげないように。そなたの熱意が届くことを祈る」


S「ごく・・・生粋の職人肌ってわけだ。一筋縄ではいかないな、こりゃ」



S 今、すごくワクワクしてる。この先の未来に、何が待っているんだろう。

 どうにもこうにも、僕の物語の歯車は回り始めた気がする!





読了いただきましてありがとうございました。

こちらの原作が現在、こえ部にて声優様方によりまるごと音声化されたものとして発表されております。

もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひそちらへも足を運んでやってくださいませ。


http://koebu.com/user/tacci/playlist?title=MMTボイスアニメryボニメ%20★第1話★「未来は僕らの手の中に」


http://koebu.com/user/tacci/playlist?title=MMTボイスアニメryボニメ%20★第2話★「満ちる時の調べ」




読了いただきましてありがとうございました。

こちらの原作が現在、こえ部にて声優様方によりまるごと音声化されたものとして発表されております。

もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひそちらへも足を運んでやってくださいませ。


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