第5話 鉄港の攻防
第5話です。
港を巡る攻防戦に入ります。
白嶺島北岸――鉱山港。
黒い煙が空を覆っていた。
焼けた倉庫。
倒れたクレーン。
砕けた石畳。
港はまだ半分が敵の手にあった。
沖合にはオルドゥの輸送船団。
あの船がある限り、敵は補給できる。
つまり――港を落とせば終わる。
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「黒筒隊は倉庫街を確保。
輸送路を遮断せよ」
中隊長の命令が下る。
大和は地図を広げた。
港へ続く道は三本。
そのうち二本は瓦礫で通れない。
残る一本に荷車が集中している。
(ここを断つ)
「分隊を二つに分ける」
「戦力が減るぞ!」
「補給を止めれば戦力は半減する」
半数を倉庫の屋根へ。
残りを路地裏に配置。
交差射撃の形を作る。
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やがて荷車の列が現れた。
護衛は軽騎兵と魔導士一名。
魔導士が障壁を展開する。
「距離百」
障壁が光る。
大和は冷静に言った。
「三列同時射撃」
障壁には展開の間がある。
そこを撃ち抜く。
「撃て」
爆音が重なる。
障壁が砕けた。
魔導士が倒れる。
荷車が炎上する。
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敵が散開する。
だが路地は狭い。
騎兵は機動できない。
屋根の射撃班が上から撃つ。
逃げ場はない。
補給部隊は壊滅した。
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その頃、港の桟橋では海軍の小型艇が出撃していた。
夜陰に紛れて輸送船へ接近する。
火矢と爆薬を投げ込む。
船が燃え上がる。
補給線が海上でも断たれた。
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翌朝。
オルドゥ軍の動きが止まっていた。
食料が尽き、魔獣が衰弱している。
騎兵の突撃もない。
「包囲する」
中隊長が命じる。
正面からではない。
港を囲み、時間を使う。
敵は退路を海に求めるしかない。
だが船は燃えている。
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昼過ぎ、白旗が上がった。
オルドゥ上陸軍、降伏。
かつて世界を制した騎馬帝国が、
島国の歩兵に敗れた瞬間だった。
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報告書にはこう記された。
――人火銃部隊、港湾補給線を遮断。
敵軍戦闘能力を喪失させる。
大和の名もそこにあった。
分隊長、東雲大和。
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教官が言う。
「お前は敵を撃ったのではない」
「補給を撃ちました」
教官は笑った。
「それが戦だ」
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だが勝利の余韻は短かった。
司令部から新たな報が届く。
「ヴァルケン魔導帝国、
人火銃の情報を確認」
遠い大陸の覇権国家が、
ジパングを認識したのだ。
戦争は終わっていない。
むしろ、ここから始まる。
第5話を読んでいただきありがとうございます。
オルドゥ上陸軍との戦いが一段落しました。
次章から列強との緊張が描かれます。
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