第4話 騎馬魔獣
第4話です。
人火銃と騎馬魔獣の初戦闘に入ります。
白嶺島北岸の平野は、灰色の霧に包まれていた。
朝靄の向こうから、低い地鳴りが響く。
ドン、ドン、ドン。
地面が震える。
「あれが……騎馬魔獣か」
新兵の声が震えていた。
霧の中から現れたのは、馬よりも一回り大きい獣だった。
黒い毛皮。
湾曲した角。
背には軽装の騎兵。
数は三十。
黒筒隊は十人。
普通なら逃げるしかない戦力差だった。
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「分隊長、どうする」
部下が叫ぶ。
大和は地形を見た。
左は低い石垣。
右は浅い溝。
後方は倉庫街。
(突撃は直線。横には広がれない)
「石垣の後ろに散開」
「突撃してくるぞ!」
「だから止まらない」
距離を測る。
百五十。
百三十。
百。
「構え」
魔獣の咆哮が近づく。
地面が揺れる。
「撃て!」
乾いた爆音が連続する。
一頭が崩れ落ちた。
だが残りは止まらない。
「再装填!」
八秒。
長すぎる。
魔獣が五十まで迫る。
「二列目、前へ!」
火線が途切れないように前進させる。
再び撃つ。
二頭目が倒れる。
騎兵が弓を放つ。
矢が石垣に突き刺さる。
「伏せろ!」
三列目が射撃。
魔獣の足が折れ、前の個体に衝突する。
隊列が乱れた。
⸻
突撃が止まった。
それは歴史的瞬間だった。
騎馬魔獣の突撃が、歩兵の火線で止まったのだ。
残った騎兵が距離を取る。
近接戦に持ち込めば勝てる。
だが距離を詰める前に倒れる。
それが理解された。
騎兵が後退を始める。
「追撃はするな」
大和が制止する。
「弾薬を温存する」
数で勝ったのではない。
距離と火線で勝った。
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戦闘が終わると、誰も声を出さなかった。
倒れた魔獣の巨体。
焼けた毛皮。
煙を上げる銃口。
「……本当に止めたのか」
部下が呟く。
教官が近づいてくる。
「報告する。騎馬魔獣突撃を撃退」
その言葉はすぐに上級司令部へ送られた。
魔導士ではなく、十人の新兵が。
⸻
その夜、命令が下る。
「黒筒隊は前線に編入。
人火銃の有効性を確認した」
正式に戦力として認められたのだ。
そして大和には追加の命令が届く。
「分隊を倍員する。二十名を指揮せよ」
昇格だった。
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遠くの丘で、オルドゥ軍の角笛が鳴る。
敵も学び始めている。
次は数で押してくる。
だがそれでも、大和は計算していた。
(火線密度を上げれば止められる)
戦場は数式になる。
人の火が、草原の覇者を押し返し始めていた。
第4話を読んでいただきありがとうございます。
人火銃が騎馬魔獣を止める初戦闘でした。
次話ではオルドゥ本隊との戦いに入ります。
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