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では、最後に一度だけチャンスをあげますね  作者: 井藤 美樹


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9/13

行動開始です



 護送車がキーテル王国の王都に到着してから、ユニは何かと忙しそうだ。アルお兄様のお手伝いもしているのか、一緒に出掛けることも多かった。


 因みに、私達は王宮には泊まってはいないよ。招待されたけど断ったの。絶対、あの手この手で懐柔しに来ると予想出来たからね。なので、警備の面も考えて、観覧に使った高級宿を丸ごと貸し切ったの。従業員はボーナス付きで休暇を与えてね。だから今、この宿屋はグリリアス王国の騎士達で護られてるわ。


 王族二人が滞留してるのだから、そこまでするのは特別おかしな話ではないのかもしれない。だけ正直、まだ私には実感があまりないの。


(だって、ギャップがあり過ぎるから……底辺から最高位に急上昇だもの)


 それでも考えないといけないと思う。逃げていいものじゃないからね。幸いにも、一人になれる時間があるから、考える時間は十分に取れるわ。


 アルお兄様とユニがいない間は、私はお留守番。本を読んだり、身体を休めたりしているの。半安静状態かな。勿論、これから先のことも色々考えてはいるよ。


 ユニとアルお兄様が仕事から帰って来ると、何故か二人共石鹸の匂いがするの。たぶん、護送された屑達の尋問に立ち会ってるからだと思う。


(う〜ん、このままここにいると、グリリアス王国の第一王女としての生活が待ってるんだよね……)


 素直に喜べない。


 腹黒だけど、アルお兄様はとても優しくて、痛みが分かる、温かい人だわ。彼の妹として、王族の一員として生きて行くのも悪くないと思う。


 王族の暮らしが、どういうものか想像出来ないけど、窮屈なのは容易に想像出来るし、沢山勉強しないといけないことくらいは理解している。相当な努力をしないと駄目なことも理解してるよ。とっても厳しい世界なのも、覚悟はしているわ。


 それはいいの。私が頑張ればいいことだから。


 でもね……グリリアス王国に行けば、今のように、ユニが傍にいてくれるのは難しいと思う。というか、恐らく護衛に付いてくれても、姿を見せてくれない気がするの。


 恐らくだけど、ユニは兵士や騎士じゃない。勿論、見習いでもない。情報を整理した上での想像だけど、ユニは黒い部分に(たずさ)わる仕事をしている。高位貴族の息子なのにね。庶子かもしれない。


 庶子か実子かなんて、そんなものどっちでもいい。


 私にはね、クレクレ妹のような物欲はないけど、どうしても欲しい物があるの。それを手に入れるためなら、私は何でもするわ。


 王国を脅してでもね――


(取り敢えず、グリリアス王国に行く前に、ある程度の筋道を立てておかないとね。護衛騎士以外に一緒にいてもおかしくないのは……)


 一つしかないわね。そうと決まれば、行動開始。


 真夜中、ユニの部屋に忍び込むくらい平気だよ。


「誰だ!!」


 忍び込んだ途端、ユニの険しい怒号が部屋に響いてもね。同時に、首筋に冷たく固いものが当たる感触がしたよ。さすがに、ヒヤッとしたわ。


「……私」


「えっ!? アイナ!?」


 侵入者が私だと気付いて、ユニはとっても焦っている。首筋の冷たい感触もなくなった。ユニは明かりを点ける。


「お疲れ様、ユニ。今日も遅くまで仕事だったね」


「あぁ、それで、こんな夜中に何の用だ? 眠れないのか?」


 悪夢を見たと勘違いしているみたい。私は軽く首を左右に振った。


「違う……前にした、私との約束覚えてる?」


「…………すまない、守れそうにない」


 悲痛な声で告げるユニの前まで移動すると、私は固く握り込んだ彼の両拳を、小さな手で持ち上げ包みこんだ。


「うん、分かってる。旅は無理かもしれない。でもね、もう一つの約束まで無理って言わないで」


「…………」


 無言がユニの答えだった。


(そうだよね。自分のことだもの、誰よりも現状を理解してるよね)


 だから、私から言うわ。


「ユニ、私と婚約して」


 そう、これが、私が導き出した答え。これなら、ユニは私の隣に居続けられる。


「……はぁ!? な、何言ってる!! 意味分かって言ってるのか!?」


 焦るユニが逃げ出さないように、掴んでいる手に力を込めた。無理に解けなくて、ユニはおかしなまでにアタフタしだした。


「別に、おかしな話じゃないでしょ。ユニはあの高位貴族の息子でしょ。庶子だったとしても、そうでなかったとしても、息子には変わらないわ。王族とはいえ、罪人の血を引く私からしたら、ユニは勿体ないくらいだけど……他に、気になる人や婚約者がいるなら諦める」


 最後の方は声が小さくなった。


 私はユニが好き。大好き。


 でも、その好きがどういう意味か分からない。というか、好きに種類があること自体よく分からないの。「愛してるの?」と訊かれたら、迷わず「愛してる」って答えるよ。


 その辺はユニの方が詳しいのかな、歳上だし。もし婚約出来たら、訊いてみるのもいいかもしれないわね。


「……本当に、俺と婚約していいのか?」


(したいのか、と訊かない所がユニらしいわね)


「何言ってるの? 婚約を申し込んだのは私よ」


「だが……」


 煮え切らなくて、少しイラッとした。


「はっきり言って!! 嫌なの? それとも、婚約するの?」


 とことん強気で詰め寄り、答えを促す。


「分かった、婚約する」


(よし!! 言質(げんち)取ったわ)


 はしたないけど、思わずガッツポーズをしてしまったよ。その姿をユニに見られて、途端に恥ずかしくなる。取り敢えず、言質は取れたので、私はユニのベッドに潜り込んだ。


 焦るユニが色々叫んでいるけど、私は完全無視して眠った。心配事が一つなくなると、寝付きも良いね。


 でも、これだけじゃ安心出来ない。言質(げんち)だけでは心許(こころもと)ないからね、外堀は埋めておかないと。こういうのを、既成事実って言うんだよね。王国を認めさせる方法はいくらでもあるわ。だって、私は聖眼持ちだもの。




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