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では、最後に一度だけチャンスをあげますね  作者: 井藤 美樹


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生まれ変わった私は、大切な人達と一緒に未来を生きる



「……大丈夫か?」


 馬車が出発して直ぐに、隣に座っていたユニが、私の肩を抱き寄せ(いたわ)り、慰めてくれた。肩から伝わる彼の体温が、私の冷え切った心を温めてくれる。


「意外と大丈夫だったわ。なんというのかな……再確認しておきたかったの。ケジメというか、新しい未来の一歩を踏み出すために」


「…………」


 ユニは納得出来てないみたいね。


 今更そんな事をしなくても、内心そう思ってそう。ユニは私が傷付くのを、物凄く嫌うから。それが私自身でもね。


「今思えば、あの屑兄達に出会ったのも、突撃されたのも、必要だったと思うの。……これで、ちゃんと過去を消化出来るわ。これから先の未来に、過去が影をさすことはないと思う。もう、暗闇で一人、部屋の隅で泣いている子供はいないわ」


 私とエレナール元伯爵家の屑達との縁は、とっくの昔に切れていた。その事はどうでもいいの。却って、せいせいしてるわ。私から縁を繋ごうなんて考えてもいないしね。


(ただね……なんていうのかな、モヤモヤとしたものがね、ずっと消化されずに胸の奥に残っていたの)


 そのモヤモヤの中心にいるのは、幼い頃の私。


 家族に愛される事を望み続け、必死で振り向いてもらうと頑張っていた頃の私が、まだそこに居続けている。


 ある程度成長して、自分の気持ちに折り合いを付けれるようになって、全てを諦め背を向け、屑達の望みを叶えたくない一心で生きる事を選んだ。


 そして、ユニと出会い、彼と手を取り光の世界へと向かう道を選んだ。


 新しい兄も出来た。


 グリリアス王国に行けば、新しい両親と、三人の兄が私の家族になる予定だし、隣には、まだ正式に決まってはいないけど、婚約者のユニもいる。


 全く予想しなかった生活が、未来が待っている。


 それは私にとって、生まれ変わる事に等しい事なの。


 だから、生まれ変わる前に、未だに暗闇の中で(うずくま)り泣いている私を救いたかった。一人、置いていく事が出来なかった。


 でも……手を差し伸べる方法が思い浮かばなかった。思い浮かばないまま、ここまで来たの。


 その時に、屑兄達が突撃して来た。


 正直、チャンスだと思ったわ。泣いている子供に現実を教えるいい機会だって。これを逃したら、もう来ない。


 悪い子だから名前を呼ばないんじゃない。家族でも知り合いでもないから、名前を知らない。知らないから呼べないの――とね。


 泣いていた子供は顔を上げ、迎えに来た私を見上げる。そして、迎えに来た私の手を握った瞬間、暗闇が一気に晴れた。


「……そうか」


 詳しい心境を話したりはしないけど、ユニは私の変化に気付いてくれた。優しい笑みに、私は安心する。


 ほんわかした空気で、馬車内は包まれた。


 馬車はゆっくりと、グリリアス王国に向かって進む。


「ねぇ、ユニ。もし、何処かでセリナに出会ったら、屑兄達にした質問してみようかな。答えられると思う?」


 悪戯を仕掛ける子供のように笑いながら、私は言った。


 双子の妹の学費のために、変態キモ男に売られそうになった時は、目の前が真っ暗になったけど、ユニと一緒に逃げ出したら、明るい未来が待っていた。


 あっでも、毒親の酒太りの醜い脂肪が詰まった腹を踏み付けられなかったのは、ちょっと心残りかな。




 数多くある小説の中から、選んで頂きありがとうございます。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。

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