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有能な怠惰の魔女はのんびりと暮らしたい  作者: うさうさ
第一章 メイド姿をした魔女
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第30話 ミ、ミジャリちゃんと説明して

 その日の夜。ミリネはへとへとになっていた。


「マジで死ぬかと思った」


 テラムとの打ち合わせの途中、ロギアが飛び出してしまったため、あとはミリネがなんとかするしかなかった。幸いにテラムがすぐ席を立って出てくれたおかげで、ミリネが何かする必要はなかった。けど疲れるのは仕方なかった。


「それにしても、帝国の奴らがなぜここに」


 ミリネはテラムと一緒にいたマントの人たちが気になっていた。カブリス帝国の使者のように見えたけど、怪しいところが一つや二つではなかった。

 ランディル王国にとってカブリス帝国はあの戦争で敵国だった。それならランディる王国と同盟国だったクレノス王国にとってもカブリス帝国は敵国に違いなかった。戦争が終わってからまだ二十年しか経ってない。戦争の余波でランディル王国とカブリス帝国は仲が悪い。なのに、クレノス王国には今カブリス帝国の使者が来ていた。


 しかも王子に精神操作魔法をかけた。


 これは宣戦布告に等しい行為だった。


 そこまでして欲しいものはなんだ。


 わからなかった。できれば彼らを捕まって直接聞きたいけど、メイドという制約がかかっていて自由に動けなかった。


「ああぁもー頭痛い」


 ミリネは頭を抱えた。


「そう、私はここに呪いを解きにきただけ。余計なことまで気にするな」


 ミリネは気を取り直した。ここに派遣されたのも呪いのせいだから、自分は呪いだけ集中すればよかった。


「でも、呪いの手がかりはないんだよね」


 ここに来てからほぼ三週間になったのに、いまだに手がかりはなかった。怪しい魔力の気配も、呪いの主体に見えるものも、何もなかった。この屋敷の全部屋を回ってみたけど、何も見つからなかった。


「まだ地下室が残ってるけど・・・」


 ヒシルが直接管理するため、自然に入る機会がなかった。


「あそこに何かある気があるけど、どうすれば自然に入れるかな」


 ミリネはふむと息を漏らし、じっと考え込んだ。そんな中、廊下の向こうから金髪の毛を靡かせながらこっちに向かって走ってくるミジャリの姿が目に入った。


「ミリネ! 探してた」

「ん? どうして」


 ミリネは少し顔を傾げた。


「ちょっと時間をもらってもいい?」

「まあいいけど、どうして」

「頼みたいことが一つある」


 ミジャリは真剣な顔で言った。


「前に約束したこと覚えてるよね?」

「約束なら、いつかあんたの願いことを一つ聞いてあげるってこと?」

「そう。今日がそのいつかなの」


 ミジャリの声と顔は真剣で、ミリネの知ってるミジャリではないように見えた。


「約束守ってくれるよね?」

「まあ約束は約束だから」


 ミリネは軽く頷いた。


「って頼みたいことってなに」

「それはあるきながら話すね」


 ミジャリは廊下の向こうを指さして言った。一体何を頼もうとするのか、少し不安になったミリネだったが一旦ミジャリの言う通りに従うしかなかった。


「ではこっちだよ」


 ミジャリは先頭に立って歩き出した。ミリネもその後を追って歩き出した。


「ミリネも知ってると思うけど・・・・・・」


 ミジャリは歩きながら口を開いた。


「今日テラム代理が来たでしょ。そこで私聞いちゃった。ロギアが王にならない理由。私のせいだった」


 ミジャリの声が少し落ち込んでいた。


「私がロギアの足を引っ張ってた。私がいるからロギアは王にならない」

「・・・・・・」

「実は昔から薄々わかってたよ。私という存在はロギアにとって足手まといに過ぎないんだと」


 ミリネはこういう時どんな言葉で慰めばいいかわからなかった。だから黙って話を聞いていた。

 廊下を歩き階段を下りた。そしてまた廊下を歩いた。しばらくしてミジャリは立ち止まった。


「それで私決めたの。もうロギアの足を引っ張ることはしないって」


 ミジャリおもむろに振り向いた。


「ミリネは強い魔女だよね?」

「ん? あ、一応そう」


 正直に言うわけにはいかなくて仕方なく適当に答えるしかなかった。そしてミリネの返事を聞いたミジャリはわずかな笑みを浮かべた。


「それはよかった。じゃ入ろっか」

「え、本当にここ入っていいの?」


 ミリネは少し驚いたように聞いた。だって今ミジャリが入ろうとするところは他でもなく地下室だったからだ。


「ここはヒシルの管理で、勝手に入っちゃ」

「私はいいよ。・・・私は」


 そう言ってミジャリは地下室に足を運んだ。ドアを開けてミリネに言った。


「じゃあ入って。ここであんたにやって欲しいことがある」


 そう言ってミジャリは地下室の中に入った。ミリネは闇しか見えない地下室をじっと見つめた。光が当たらなくて凄く暗かった。


 本当に入ってもいい? これ。


 地下室の探索できるいい機会なのは確かだけど、なんか忌まわしかった。なぜか体がゾッとした。


「でも入ってみるしか」


 そう心を決めたミリネは深く息をして闇の中に足を運んだ。

 ドアの向こうには階段があった。転ばないように壁に手をついてゆっくりと下りていった。階段の端に見えるところから微かな光が漏れていた。ミリネはその光を道標にした。そうしてしばらくして、ミリネは階段を下り光が漏れる部屋を目の前にした。


 ここ思ったより暗いね。


 階段ほど暗くはないけど、予想より暗かった。ミリネはキョロキョロしながら中に入った。中には先に入っていたミジャリが部屋の真ん中に立っていた。地下室の中には特に何もなかった。家具や生活用品、しかもランタンもなかった。


 ちょっと、ランタンがないなら一体光はどこで。


 可笑しかった。ここに光が入るようなものはないのに、部屋の中はあまり暗くなかった。ミリネは光が強い方に目を向けた。そして光の根源を目にしたミリネは、顔を傾げた。


「あそこに人が」


 地下室の真ん中に壇が一つあった。その上に金髪の少女が目を瞑って寝ていた。その壇の下には大きいな魔術式が微かに青い光を放っていた。ミリネはもっと近くでみるために、壇に近寄った。


「誰だろう・・・・・・こっ、この顔は」


 見慣れた顔だった。いや、見慣れた程度ではなかった。毎日会って、毎日顔を見て、毎日一緒に話す人の顔だった。

 ミリネの両肩が小刻み震えていた。ミリネは自分の目を疑って何度も見直したけど、彼女の目には異常がなかった。それでも信じられなかった。


「ミ、ミジャリちゃんと説明して。なんで、一体なんであんたが二人いるんだ」


 あまりにも理解できない状況に、ミリネは大声を上げた。ミジャリは自分と同じ顔をした人をじっと見つめていた。


「説明してよ。何よ、この人。なんであんたと同じ顔をしてるんだ」

「・・・あれが本当のミジャリ。本当の私だよ」


 ミジャリは静かに言った。

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