第28話 私がもう少し早くきたら
それから数日後の昼過ぎ。ミリネとミアは屋敷の近くの町へ買い物に行っていた。
「必要なものメモした?」
「はい。ここに全部書いたんです」
ミアは手を差し出して小さなメモ紙をミジャリに見せた。何かびっしりに書かれていた。
「牛乳、卵・・・・・・あ、もー。ミア任せるね」
「今更ですね。今まで私に任せたんじゃないですか」
「じゃいつものように任せるよ」
ミリネの言葉に、ミアはため息をついた。ここにきてからたまに一緒に買い物に行ったことはあった。その際もミリネはついてくるだけでほとんどミア一人でやってきた。もちろん、荷物は持ってくれたけど、人と話すことや必要なものを選ぶことは全部ミア一人でやっていた。
でも師匠に全部任せる方がよりに不安だから。
ミリネに任せたらきっと何かの問題が発生するに違いなかった。そのため、一人でやる方がずっとマシだった。
「はい」
ミアは無表情のまま答えた。そして彼女たちはゆっくり歩いて町に向かった。そうして数分後、町の付近まで到着した頃、突然ミリネは足を止めた。
「どうしたんですか、お師匠」
「あっち見て」
ミリネは町の方に指さした。ミアはミリネの指先を追って目を向けた。
「あれは・・・火事?」
町の方から暗い煙が上がってくるのが見えた。それと同時に何かが燃える匂いがした。
「お師匠あれは」
「早く行ってみる」
急にミリネは町に向かって駆け出した。ミアも師匠に続いて駆け出した。
走り出してからそう時間もかからず、彼女たちは町に辿り着いた。
「こ、これは一体」
町の風景を目にした瞬間、ミリネの目が丸くなった。表情変化の少ないミアも同じだった。
家は終えていて、倒壊していた。たくさんの人は傷だらけで道端に座っていて、しかも白い布で覆われた死体が道端に並んでいた。死体の腐る臭いと燃える匂いが混じって思わず顔をしかめてしまった。
ミリネの瞳は戸惑いで揺れていた。前に来た時は平和で賑やかな町だった。なのに今は人たちは目の光が消えていた。
「一体何があった」
ミリネは周囲を見渡した。その中、怪我をした人を面倒を見ているいる見慣れたおばさんが目に入った。よく利用した店のおばさんだった。ミリネとミアは事情を聞くためにおばさんの方に歩いていった。
「あら、君たちいつ来たの。ここは危ないから早く帰って」
「いいや、私たちは大丈夫。それより一体何が起こったんだ」
「それがね、魔物の襲撃があったの」
「魔物だって!?」
予想せぬ言葉にミリネは目を見開いた。おばさんは深いため息で言葉を継いだ。
「今朝、突然魔物が襲ってきたの。私たちは反撃もできずなすすべもなくやられた」
「領主が助けてくれなかった?」
「領主」という単語におばさんは鼻で笑った。
「今領主は私たちに興味ないの。あいつらは今権力争いに目がくらんで私たちみたいな平民がどうなっても全く興味ないの」
「じゃ、王国の軍隊は? 軍隊に助けを乞ったらちょっと手遅れでもここまでやられないと思うけど」
「王国の軍隊は動かない」
おばさんは断固として言った。
「王国の軍隊は王の命令なしで絶対動かないから」
その一言にミリネは頷けた。ロギアが王位を継がない現在、この国には王がいない。
「全部あの王子のせいだ。あの王子が王位を継いでれば被害はここまで酷くならなかったはずだ」
おばさんの声が荒々しくなった。「あの王子のせいで権力争いが始まった。全部あの王子が王位を継がなかったせいだ」とおばさんは王子を責めていたけど、ミリネは他の人を責めていた。
私がもう少し早くきたら。今朝ぐずぐずしなかったら。もう少し早く出発してたら。
ミリネなら魔物の襲撃など手軽く処理できた。この町の人全員を救えたはずだった。全員は無理でも、今亡くなった者の中の何人かは、救えたかもしれない。
私がまた怠けたせいで。
ミリネは自分の怠惰さを責めていた。ミリネは怪我をした人たちに目を向けた。人たちは血まみれの包帯を巻いていた。体のあちこちにはまだ血が流れていた。の怪我なら治療魔法で治せた。しかし
私は治療魔法を・・・使えない。
ミリネは何かの理由で治療魔法を使えなかった。そしてそれはミアも同じだった。自分に使えない魔法を教えることは不可能だから。
結局ミリネは彼らから目を背けた。ミリネは拳をギュッと握って静かに言った。
「ミア、帰ろ」
「はい? ・・・はい」
ここにいても自分たちにできることはないと悟ったミアは、力なく頷いた。そして彼女たちは町から背にして屋敷に帰った。
帰る途中、彼女たちの間には何の会話も交わされなかった。誰一人言い出す人なく、静かに歩いていた。
しばらくしてミリネとミアは屋敷に到着した。広い庭を歩いていた時、扉の前にヒシルが立っているのが目に入った。
あのジジなんであそこにいるんやろう。
とミリネは思いつつ扉の方に歩いていった。
彼女たちを目にした途端、ヒシルは慌てて駆け寄った。
「きましたか。ミア嬢早くお茶を準備してください」
「ん? あんた大丈夫? 急にどうした」
「今屋敷にお客が来てます。ですから急いでください」
いつもと違ってヒシルは慌ただしかった。そんな彼を見てミリネは顔を傾げた。
「お客、だって?」
お客が来るのはここに来てから初めてだった。だからこそ気になった。
「お客って誰?」
「テラム代理です! 今こうしてる場合じゃありません。急いで動いてください」
ヒシルはミリネとミアを催促させた。ミリネとミアは訳もわからず動いた。
お読みいただきありがとうございます。
面白かったらブックマと評価お願いします。




