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有能な怠惰の魔女はのんびりと暮らしたい  作者: うさうさ
第一章 メイド姿をした魔女
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第23話 確認する必要がある

 ロギアとミジャリが友達になった日から、いつの間にか三年が過ぎた。その間、ロギアとミジャリはほとんど毎日のように会った。王城で会ったりミジャリの家で会ったが、ほとんどロギアが食べ物を持って家まで訪ねていくのが普通だった。


「どうだ。美味しいのか」

「うん。美味しい」


 チビどもは明るい笑顔で頷いた。ロギアはその笑顔に満足げに微笑んだ。そんな中、ミリはロギアの肩を軽く叩いて振り向かせた。


「お兄ちゃん、前から聞きたかったけどお兄ちゃはミジャリ姉ちゃんのこと好きなの?」

「い、いきなりなにを。す、好きなんて、そんなわけ」

「でもいつもこんなに美味しいものを持ってくるじゃん。王城からここまで結構遠いのに」

「それは友達だから」

「友達だからって普通そんなことまでしないと思うけど」


 ミリは顎を触りながらロギアを歌がしげに見つめた。ロギアは少し顔を赤めそっと顔を逸らした。そういう彼の反応に、ミリは微かに頬んで彼の耳に囁いた。


「私は賛成だよ。お兄ちゃんがミジャリ姉ちゃんの恋人になるの」

「そ、そなた一体なにを」


 ロギアは慌てて片手で耳を覆った。顔が真っ赤になっていた。どこか変なロギアの様子に向かいに座っていたミジャリは言った。


「ちょっと、そっちの二人。なんか私の話をしてるみたいだけど、なんの話し中だった」

「そ、それが」

「内緒だよ」


 ミリはにっこり笑って言った。ミジャリはなにも言わずにじっとミリを睨んだ。ミリは平然と笑みを浮かべ、視線を逸さなかった。ミリの堂々とした態度に、ミジャリはついにため息をつき、問い詰めるのをやめた。それに気づいたミリは、またロギアの耳に口を寄せた。


「あと、お兄ちゃ、実はうちの姉ちゃんダンスがめっちゃ上手だよ。いつか見せてもらいなよ」


 ミリの囁きに、ロギアはなにも言わずに静かに頷いた。ロギガの両頬が少し赤くなっていた。

ミリはそれを見てニヤリと笑った。


 ミジャリ姉ちゃんのダンスを目にした男子は全部惚れちゃったから、お兄ちゃんもきっと。そしてお兄ちゃんとミジャリ姉ちゃんと結婚することになったら、これからも美味しいものをたくさん食べられる。


 ミリは拳をぎゅっと握って必ずこの二人を結婚させようと、心の底で固く決意した。


 まあでも多分要らないと思うけど。


 ミリはロギアの顔をチラリと窺った。ロギアの両頬は少し赤めていた。



 そしてまた翌日。ミジャリは伸びをしながら外に出た。


「そろそろ来る頃だけど、いつ来るんだろう」


 ミジャリはあくびをして集落の入り口に向かってゆっくりと歩いていった。


「今日も何かを持ってくるのかな」


 ロギアと友達になった時から、ロギアは料理以外にも服や生活に必要なものをたくさん持ってきた。そのため、ミジャリたちの生活は豊かになった。あと、いつ頃から王城にもあまり行かなくなってチビどもと一緒にいられる時間が増えた。


「全部ロギアのおかげだ。この恩をどう返せば」

「おい、そこのテメー」


 突然背後から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。ミジャリは反射的に振り返った。


「あんたたちは」


 筋肉質の大柄な男子二人がそこに立っていた。知っている顔だった。集落の一員で名前まではわからないけど、行き来の途中で時折遭遇して顔は覚えていた。


「急になんですか」

「最近テメーの家にお金持ちに見える奴が入るのを見たぞ。手に食べ物をたくさん持ってるのも」

「最近ではないけど。四年前からずっと訪ねてきたんです」

「そんなのはどうでもいいんだ!」


 自分より二倍以上の巨体の男が突然大声をあげて、ミジャリは一瞬体が固まった。


「テメーあいつに食べ物をもらってるだろ。今日から三分の二は俺たちのもんだ」

「そんな無茶なことを」

「酷い目に遭いたくないなら素直に渡せ。わかったか」


 男たちは威圧的にミジャリにゆっくりと近づいてきた。男たちの影に覆われるほどの体格差に、ミジャリは体が固まってしまい、逃げることすらできなかった。


「わかったなら頷け」

「・・・・・・」


 ミジャリは頷かずに男たちをじっと見上げた。


「テメーなんだその態度は。俺たちの言うことに逆らうってことか」

「そ、そりゃ当たり前でしょ。いきなり三分の二を渡せなんて無茶なこと言うな」


 ミジャリの両肩が小刻みに震えていた。それでもミジャリは一歩も引かなかった。昔だったら余りが出て渡せても問題なかった。けど、今は成長期に入ったチビどもが食べる量が増えてしまったため、他人に配る余裕がなかった。


 なによりロギアが私たちのために用意したものをこんな奴らと分けたくない。


「テメー今なんて」

「聞こえなかった? あなたたちと分け合うつもりはないよ」

「こ、このやろぉが!」


 男はミジャリの腕を強く掴んで動けないように押し付けた。そして他の男は拳を振り上げた。ミジャリの顔より大きな拳が凄まじい勢いで拳を振り下ろされた。ミジャリはまもなく襲いかかってくる痛みに備えて目をぎゅっと瞑った。男の拳がミジャリの顔に当たろうとした瞬間、


「その手離せぇ!」


 幼い声が響き渡った。その声に、男の拳はミジャリのすぐ目の前にぴたりと止まった。ミジャリはそっと目を開けて声がした方を見やった。チビどもの中唯一に男の子のトリがこちらへ走ってきていた。トリは男たちを指さして大声を上げた。


「うちの姉さんに手出すな。姉さんから離れろ!」

「なんだこのガキは。どうやら教育が必要そうだな」


 男は手をポキッと鳴らしつつ、トリへと歩み寄った。


「ま、待ってぇ」


 ミジャリは男に向かって叫んだ。けど、彼はまるでミジャリの声が聞こえないかのように微動だにしなかった。


「このガキめ二度と邪魔できないように、教育してやる」

「や、やめて。いっそ私を」

「テメーは黙れ」


 ミリネは必死にもがいたが、がっしりした男の力に抗うには力不足だった。今ミジャリにできることは、ただ無力にトリが殴られる姿を見守ることのみだった。


「本当にやめてえ。食糧が欲しいならいくらでも分けてあげるから」

「今更遅いんだ」


 男の拳が、トリの頭上めがけて恐ろしい勢いで振り下ろされた。ミジャリの口から悲鳴に近い声が出た。


「ダメええぇ」


 しかしミジャリの絶叫にも拳は止まらなかった。もう終わったと思った瞬間、


「そこまでだ」


 聞き慣れた声が聞こえると同時に、まるで何かに阻まれたように拳が空中で止まってしまった。


「一体なにが」


 ミジャリは落ち着いて目を凝らして見た。そしてミジャリは驚いて目を見開いた。


「ロ、ロギア!」


 ロギアがトリの前に立ち手を上げて拳を受け止めていた。ロギアは自分より大きい男を睨んだ。あんな怖い顔をしたロギアをミジャリは今まで見たことなかった。


「この辺にしけ。これ以上やったらそなたたちの命はない」


 ロギアの警告に、男はむしろ鼻で笑った。


「命がないっつって? テメーなんかが俺たちに適える思うのか

「・・・・・」

「テメーなんかすぐでもッ」


 いきなり男の様子がおかしくなった。ついさっきまで威勢よくしていた男は、まるで何かに怯えたように体を小刻みに震わせていた。仲間の異変に戸惑った男は、つい腕を離して仲間の元にに近寄った。


「お前急にどうッ」


 男が仲間の肩を掴んだ瞬間、彼も仲間と同じく体を小刻みに震わせ始めた。ロギアは彼らを睨んで一言放った。


「さっさと消えろ」


 その一言に男たちは慌てふためいて逃げ出した。間も置かず、彼らの姿が完全に見えなくなった。ロギアはすぐにミジャリの元へ走ってきた。


「そなた大丈夫か。怪我は、怪我はないか」

「大丈夫よ。私よりトリが」


 ミジャリはトリに目を向けた。ロギアもトリに目を向けた。


「そなたも大丈夫か」

「うん。兄さんありがとう」


 どういうわけかトリは元気なかった。さっきの出来事で怯えたのか、正確な理由はわからなかった。とにかくトリの状態を確認したロギアは、悔しさをにじませながら言った。


「まさかこんなことが起こるなんて。今回の件は王国に知られて厳罰を」

「やめて」

「やめてってなぜだ」


 ミジャリの声に、ロギアは理解できないように問い返した。


「王国に知られたらここから追い出されるかもしれないから」

「そ、それはどう言うことだ」

「治安を乱されたと、ここから追い出されてしまうよ」

「ちゃんと調査すれば」

「私たちみたいな孤児の話なんて誰も聞いてくれない。それより被害者と加害者、どっちも追い出せば楽だから」

「でも俺がちゃんと話せばきっと」

「いいのよ。怪我した人もないから、この件は頭から消そう」


 ミジャリはニッと笑い埃を払いながら立ち上がった。


「それより早く帰ってご飯食べよう」


 そう言ってミジャリは家に向かって歩き出した。トリも彼女について歩き出した。ロギアは呆然としてミジャリの背中を見つめた。もう三年も知り合いだったからわかった。今のミジャリの笑いは偽りだと。声も不自然に明るかった。無理矢理明るく振る舞うようだった。


「俺のせいだ」


 ロギアは独り言を呟いた。


「俺が変えねばばならぬ」


 と言いロギアは彼女について歩き出した。

 ロギアがその場から完全に離れると、路地から一人の白髪の老人が出てきた。老人の片手には剣が携え、右頬に大きな傷跡が一つあった。


「危うく大変なことになるところだった。ロギア様を戦わせるわけにはいかないから」


 老人は殺気を収めた。そして顎に手を当てた。


「ふむ、それにしてもあの少女がロギア様の友達か」


 老人はロギアが歩いていった方面を見て呟いた。


「最近ロギア様が変わったのはあの少女のせいか。確かに名前がミジャリと・・・。ふむ、果たしてロギア様に似合うやつか、確認する必要がある」


 これで目的は果たしたかのように、老人は振り返ってそのままおもむろに歩み去った。


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